主人公のクラウドを中心に、様々なキャラクターたちの心情が折り重なり、壮大なドラマを描き上げた『ファイナルファンタジー7』。その名作を現在に蘇らせるリメイクシリーズの2作目『ファイナルファンタジー7 リバース』(以下、FF7 リバース)が、先日発売されました。

前作の『ファイナルファンタジー7 リメイク』でも顕著でしたが、各キャラクターの人となりが原作よりも更に深く描かれているため、その魅力をふんだんに味わったり、原作では気づかなかった新たな一面を知ったプレイヤーも多いことでしょう。

分家アバランチのリーダーを務め、星の命を守らんとする「バレット」も、そんなキャラクターのひとり。感情が豊かで怒りに駆られることも少なくありませんが、それだけではない彼の人柄が『FF7 リバース』でも随所に顔を出しています。そんな彼の魅力の一部を、たっぷりとお届けします。

なお、メインストーリーには触れませんが、シチュエーションのネタバレがある程度含まれるのでご注意ください。また、今回はジュノンまでの活躍に絞ってお届けします。

■神羅への怒りは揺るがず、しかし節度はわきまえる
バレットの意外な人柄は、『FF7 リバース』の冒頭でもさっそくお目にかかれます。クラウドが語るニブルヘイムの事件が一区切りすると、その事情を知った面々がそれぞれ感想を口にします。

その中で、神羅が流したニュースについて「やつら やりたい放題だからな」「信じるほうがどうかしてる!」と、バレットが静かな怒りを垣間見せました。

しかしエアリスは、「わたし 信じてましたけど」と率直な意見を述べます。ニュースを信じない者もいれば、信じる者もいる。これも、ごく普通の反応と言えるでしょう。

この発言を受けたバレットは、自分の意見を押し通す……かと思いきや、真っ向から反対はせず、「とにかく神羅がぜんぶ悪いってこった」と収めます。

鵜呑みにするのは神羅の思うつぼだ、といった反論くらい容易く出てくるでしょうが、悪いのは騙される側ではなく騙す側。持論こそ曲げませんが、エアリスのような立ち位置の人々を頭から否定しないのは自制心の表れと言えるでしょう。

■仲間に無理を強いず、自らソファを選ぶ潔さ
また、この時の話が締めくくられた時、バレットの人柄が分かる場面がもうひとつ訪れました。いち早く動いたレッドXIIが、近くにあったベッドをいち早く占拠します。

この部屋にはベッドが2つしかなく、しかし男性陣はクラウド・バレット・レッドXIIIの3人。当然ひとりあぶれる形になりますが、その危険をいち早く察知したのか、レッドXIIIが真っ先にベッドを確保しました。

レッドXIIIの行動を見たバレットは「おいおいおいおいおい〜」と声をかけるものの、静止の声もむなしく占有されるベッド。これで空いてるベッドは、あとひとつだけ。クラウドとのベッド争いが熾烈なものとなりそうです。

ここから先はシーンが変わり、具体的にどんな展開を辿ったのかは描写されていません。しかし、夜中にティファがクラウドを呼びに来た際、残ったひとつのベッドに寝ていたのはクラウドでした。バレットはといえば、ソファに腰かけて爆睡です。

単にクラウドとのベッド争いに負けた結果かもしれませんが、実はレッドXIIIにベッドを取られた後、ソファに座るバレットの姿が確認できます。もしかしたら、残ったベッドをクラウドに譲り、ソファでそのまま眠ったのかもしれません。

確かなことは分かりませんが、クラウドの性格からして、ベッドで寝ると強く主張したとは考えにくいところ。その性格を見抜いた上で、自らソファで眠るという貧乏くじを引いたとすれば、そのさりげない思いやりに頭が下がります。




■カームで垣間見せる、決意の証とリーダーな気質
ミッドガルを脱出し、カームで夜を明かした一行は、ひとまず自由行動の時間を設けました。プレイヤーの分身であるクラウドの場合、カームの街を散策したり、装備を整えたり、カードゲームに興じたりと、その使い道は様々です。

その頃バレットは、酒場に腰を据えていました。その姿を目撃したクラウドから、「朝から飲んでるのか」と問われますが、「酒じゃねえよ」と切り返し。

この答えだけなら、実は飲んでいたが気まずさからの誤魔化し、という可能性もありますが、「祝杯は セブンスヘブンを再建してからだ」と続けます。アバランチのアジトであり、マリンとの思い出の場所でもあるセブンスヘブン。その再建に取りかかるには、今の旅が終わった後──すなわち、セフィロスとの決着が着いてからの話になるでしょう。

星を守るまで酒を断つ。ささやかながら、そうした決心を見せるバレットに、男の意志が感じられます。

そうした態度は、仲間たちに向ける視線にも時折混じります。カームで騒動が起きた後、合流が遅れたクラウドとエアリスに対して、「ふたりでなにしてやがったんだ」とボヤくシーンもそのひとつ。

ちなみにこの時のエアリスは、クラウドの腕をとり「デート みたいな?」と返します。その発言に驚いたのか、ティファが最も大きく反応します。そして、彼女の顔を見て固まるクラウド。なんとも言えない空気が流れます……!

その空気を一変させたのは、バレットが放った「そういうのは しばらくおあずけだ」の一言でした。さらに、「いいな!」と念を押すと、無言で頷くクラウドら3人。ちなみに、この一件に関係ないはずのレッドXIIIまで頷いており、微笑ましい締めくくりを迎えます。

仲間たちの喝を入れたという一面も大きいと思いますが、思わぬエアリスの一言と、それで固まってしまったティファとクラウドを助けるための発言だったのかもしれません。仮にそうだとすれば、なかなかの気遣い&苦労人です。




■ティファを気遣い、パーティの空気も読む気配り
カームを旅立った一行は、グラスランドエリアを抜け、ミスリルマインに辿り着きます。彼らが追い続ける黒マントたちは、危険な洞窟にも躊躇せず入り込みます。しかし、足場が崩れ、黒マントのひとりが落下してしまいました。

その様子を見ていたティファは「無事だといいな」と身を案じますが、クラウドは「ああ」「でも 深入りしないほうがいい」と促します。その発言にも一理あるため、ティファも「うん……」と頷きました。

ふたりのやりとりは、それ以上ありません。しかしバレットは、「だよな 気になるよな」と口にします。それぞれの台詞だけを通して見ると、バレットの発言は唐突かもしれません。ですがこのバレットの一言は、ティファが言葉にはしなかった心情を汲み取った上での発言でしょう。

そしてティファに寄り添っただけでなく、「よし オレが行く!」と言葉を続けるバレット。口先だけでない行動も伴う姿勢は、実に男気に溢れています。

しかも、「うん 私も行くね」と応えるティファに対して、「いや こういう場所の歩き方にはちょっとしたコツがいる」「素人は 悪いが足手まといだ」と切り返します。バレットはこうした場所で働いていた経験があるので、説得力のある発言です。

ですが、そうした理由だけでなく、この流れでクラウドとティファを別行動させるのは良くない、というバレットの判断もあったのかもしれません。

深入りしない方がいいというクラウドの発言に一度は頷いたティファが、それを覆して黒マントを追いかけてしまうのは、集団行動を乱すゆがみになりかねず、この場では表面化せずとも後々影響するかもしれません。かといって、ティファが心残りを抱えたまま先に進むのも、禍根となる可能性があります。

会話に参加していなかった自分(バレット)が追いかけるのならあまり角は立ちませんし、黒マントを見捨てなかったことでティファの心残りも格段に落ち着くはず。そうした判断の上での行動だとすれば、バレットの立ち回りは見事というほかありません。

これは憶測も混じるので、実はここまで考えていなかったかもしれませんが、思考の有無に関わらず、バレットの行動でティファが幾分救われたのは確か。レッドXIIIが同行を申し出たのも、彼の判断を支持したがゆえでしょう。

■時に見せる戸惑い、そして離れした勇ましさ
ミスリルマインでは、バレットの活躍を至るところで見られます。クラウドたちがタークスと対峙した際は、その危機に駆けつけ、ルードとイリーナの動きを封じました。

また再び別行動になった後も、クラウドたちの立ち往生に出くわすと、「2000な 2000!」「報酬 忘れんなよ」と冗談めかしながら彼らを救います。

その直後、今度は自分が先に進めなくなり、仲間の手助けを受けた際に「2000 だね」とエアリスに返された際は、「おっ おう……」と珍しく反応に困る姿を見せることも。ちょっと可愛らしい場面だったので、覚えている人も多いはず。

ですがもちろん、いつもは頼れるナイスガイです。レッドXIIIとふたりでボスに立ち向かう時、「(敵を)起こしてしまったようだな」と状況を分析するレッドXIIIの言葉に合わせ、「寝かしつけるのは 父ちゃんにまかせな」といった軽口で応じるなど、大人の余裕を欠かしません。

ボスとの大一番をこなしながらも、クラウドたちより遅れて合流地点に辿り着いた時は「でっけえミスリル見つけて目がくらんじまってよ」と、苦労を微塵も見せず言い訳もなし。ボス戦はすでに終わったことなので、軽口でさらっと済ませるあたりも男前です。




■親としてはまだまだ? 赤裸々な告白に嘘偽りなし
ここまで、バレットのカッコよさが感じられる点を述べてきましたが、彼も決して完璧な人間ではありません。特に父親としての自分は、本人も悩みの連続。マリンにたっぷり愛情を注ぐ一方で、今現在は彼女の元を離れる決断を(やむを得ないとはいえ)下していますし、将来についての不安を口にする場面もありました。

ジュノンエリアにて、懸賞金の一部が入った荷物を家出をした息子に渡す仕事を村長から受けると、その道すがらでクラウドたちは雑談に花を咲かせます。最初は、バレットの質問にクラウドが答える形で、家を出る前に母親が2,000ギルをくれたこと、軍に直行だったから必要ないと断ったことなどを明かしました。

その話題に一区切りをつけたバレットは、次に「子供の独り立ちに対する親側」の話を切り出します。そして、まだ早いだの甘いだのと言い、独り立ちを邪魔する親もいると話した後、「でもオレは そうはならねえって心に決めてるんだ」「マリンの独立心を尊重してやりてぇ」と、こうあるべきという親の心がけを語ります。

しかし、その台詞を聞いたクラウドは、軽く笑ってしまいます。その様子を見てバレットは「オレには無理だとか思ってんだろ」と続けますが……それは、クラウドの態度への反発や反抗心から来るものではありませんでした。

「そうなんだよ 心に決めてはみたものの ぜんぜん できる気がしねえ」「マリ〜ン マリ〜ンって しがみついて邪魔する気がする」「はあ マリン……」と、赤裸々にもほどがあるほど、率直な気持ちを吐露するバレット。

かなりみっともない発言ではありますが、クラウドの指摘をちゃんと認め、見栄を張らずに明かす姿は、ある意味立派です。父親として不出来な一面かもしれませんが、己を偽る虚栄心がないことだけは確かでしょう。

そんな姿に、クラウドも「落ち着けバレット マリンが家を出るにしても まだずっと先だ」と助け舟を出します。バレットの早すぎる喪失感を目の当たりにし、フォローせずにはいられなかったのでしょう。

■押し付けない優しさに、懐の深さを滲ませる
そんな珍道中も、家出した息子「ディラン」の元へ辿り着き、後は渡すだけとなりましたが、「母からの荷物は受け取れません 俺 家出中なんで」と彼から断られてしまいます。

依頼を受けた以上、渡すまでが仕事です。しかしディランも頑なで、話は平行線を辿っていましたが、そこに彼の妻「クレア」が身重な身体で現れると、バレットからの説得が少し形を変えました。

「これは あんたに預ける」と、クレアに渡すバレット。そして、「どうしてもって言うなら 返してもいい」「でも 赤ん坊が生まれるまで待て」と、考える時間を置くように促します。最後に「親になれば気持ちが変わる たぶんな」の一言を添えて。

バレットは、決して器用なタイプではありませんし、言葉が足りない時もあります。しかし不器用だからこそ、そこに駆け引きがないのも明白です。この時の言葉も、依頼を終わらせるための方便ではなく、まだ未熟ながらも「父親」の先輩として、これから親になるディランたちへのエールを、心から贈ったのでしょう。

その言葉が響いたのか、ディランたちは荷物を突き返すことなく、いったん受け取りました。今後その荷物をどうするのかはまだ分かりませんが、少なくともバレットの言葉は、ふたりに届いたようです。

感情的になることもありますが、その怒りや憎しみは正しく神羅に向けられており、仲間への気遣いや思いやりは欠かさない。熱い想いはあれど、それを一方的に押し付けたりはせず、時に目先を変え、時に穏やかな想いと共に伝えるバレットは、35歳という人生の重みと、父親としてはまだまだ新米な面を併せ持つ、実に味わい深い人物です。

ちなみに戦闘におけるバレットは、基本攻撃が遠距離という特徴を備えており、近接攻撃では届きにくい飛行系モンスターに対して大きな強みとなります。日頃パーティには加えていないという人も、困った時にはぜひ彼に助けを求めてください。過酷なバトルでも、頼りになる存在です。

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CHARACTER DESIGN: TETSUYA NOMURA / ROBERTO FERRARI
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