既報の通り、ソニーがスマートフォンXperiaのハイエンドモデル「Xperia 1 VI(マーク6)」を発表した。

 SIMロックフリーモデル「XQ-EC44」はメモリとストレージが12GB/256GB、12GB/512GBのモデルが6月21日、16GB/512GBのモデルが8月23日に発売予定だ。市場想定価格(税込み、以下同)は容量によって異なるが、Xperia 1 Vはメモリとストレージが最も低いモデルで19万5000円前後となっていたところ、Xperia 1 VIは19万円前後と5000円安くなったことになる。

・メモリ12GB/ストレージ256GB:19万円前後

・メモリ12GB/ストレージ512GB:20万5000円前後

・メモリ16GB/ストレージ512GB:21万9000円前後

 国内キャリアではNTTドコモ、KDDI、ソフトバンクが取り扱い、6月上旬以降の発売を予定している。

 Xperia 1 VI(開発中)の実機に触れる機会を得たので、外観を中心に何が進化したのかをチェックした。

 Xperia 1 VIはXperia 1 Vの流れをくむ最新モデルで、語尾のローマ数字を見ても分かるように、1シリーズの6世代目に相当する。この1シリーズはいわば最新の機能やハイスペックを求める人に向けたハイエンドモデルだ。ハイエンドモデルとしては1ランク下の「Xperia 5」シリーズがあるが、性能も価格も1シリーズの方が高く、ソニーの推すクリエイティビティー(創造性)を十分に発揮できる。

●光学7倍ズームに対応 被写体に寄らなくても高画質を担保

 まず大きな進化を遂げたのはアウトカメラだ。アウトカメラは超広角(16mm/1200万画素/F2.2)、広角(24mm/4800万画素/F1.9)、光学ズーム対応の望遠(85-170mm/1200万画素/F2.3-3.5)の3眼構成で、一見すると従来通りの並びだが、光学ズーム域が先代のXperia 1 Vから増えている。

 Xperia 1 Vは85-125mmの間が光学ズーム域で最大5.2倍の光学ズームが可能だった。Xperia 1 VIでは85-170mmの間が光学ズーム域となり、最大で7倍の光学ズームが可能になっている。先代よりも画質劣化を抑制しつつ、より遠くの被写体を撮影できるようになった。

 中央にある広角カメラのイメージセンサーは2層トランジスタ画素積層型CMOSイメージセンサー「Exmor T for mobile sensor」となる。フォトダイオードとトランジスタを2層に分離したことで、光を多く取り込めることに加え、暗所でのノイズを低減できる。他のカメラは「Exmor RS for mobile sensor」を採用している。この部分は先代のXperia 1 Vと同じだ。

 最大7倍の光学ズームを生かし、「テレマクロ」という撮影機能を新たに搭載。テレマクロでの撮影時には最大約2倍となるものの、ひずみをなくして豊かなボケ感を表現できるという。接写では被写体に寄って撮影するのが一般的だが、テレマクロ撮影機能を利用すれば、被写体から4cm〜数十cm離れたところからでもきれいに撮影できる。被写体に近づくことによる人やスマートフォンの影の写り込みをなくす。

 ソニー製デジタル一眼カメラ「α9 III」に搭載された「姿勢推定」という技術がXperia 1 VIにも搭載された。例えば、人物が後ろを向いてしまった場合、先代のXperia 1 Vでは瞳AF(オートフォーカス)の効果を発揮できず、人の瞳にフォーカスを合わせ続けることはできないが、骨格を学習させた姿勢推定技術により、Xperia 1 VIではフォーカスが外れずに被写体を追い続けるという。

 また、バラバラに分かれていたカメラアプリは1つになる。「Photo Pro」「Video Pro」「Cinema Pro」の複数のカメラアプリは1つのカメラアプリに集約され、静止画/動画に分かれていた機能が1つのカメラアプリで利用可能になった。各撮影モードはカメラアプリからスワイプで切り替えれるようになり、UI(ユーザーインタフェース)も簡易になっている。

●ディスプレイはこだわりの21:9廃止 横幅は少し増す

 ディスプレイに関しては、大きく2つの変更点がある。1つはアスペクト比だ。ソニーは2019年のXperia 1から一貫して21:9のアスペクト比にこだわっていたが、Xperia 1 VIではアスペクト比を21:9から19.5:9に変更した。横幅は少し増してスリムな見た目ではなくなった。

 そもそもXperia 1が21:9だった理由は、モバイルで映画館さながらの映像を撮影し視聴できる点、2つのアプリを1画面に大きく表示できる点が大きい。映像配信サービスでは「Netflix」、ゲームでは「FORTNITE」「ASPHALT9」などが21:9で楽しめる、というのが売りになっており、世代が進んでもそのこだわりは変わらなかった。

 一方で、ターゲットユーザーの意見やスマートフォンの使い方を踏まえ、19.5:9に変更せざるを得なくなったという。背景にあるのはSNSの普及だ。例えば、Instagramでは1:1の正方形、縦長の投稿には4:5の比率、横長の投稿には1.91:1が使われており、21:9をフルに生かせない。

 もう1つの変更点は解像度。バッテリー持ちの改善を図るため、これまでの4KからフルHD+に下げた。X(旧Twitter)では「スマートフォンに4K解像度のディスプレイは必要ないのではないか」という意見が多く上がっていた。まさしく4K解像度で視聴できるコンテンツはフルHDに比べて少ないため、宝の持ち腐れとなっていた。

 解像度が4Kだと消費電力量が多くバッテリーの持続時間に大きく影響するため、フルHD+という解像度は現実的な落としどころだといえる。

 なお、パネルは液晶ではなく、引き続き有機ELを採用している。ディスプレイの大きさは約6.5型で変わっていないが、輝度はXperia 1 V比で50%明るくなったという。Xperia 1 Vにはなかった「サンライトビジョン」という新機能が追加され、直射日光下でもディスプレイの輝度を保ち、視認性を確保できるという。

 画質についても進化している。Xperia 1 VIではソニー独自のAI画質調整技術で、高精度に「BRAVIA」の色彩、質感、立体感を再現している。

 BRAVIAとXperiaそれぞれの画面色を測定し、そのカラーデータを比較。10億色のカラーテーブルを用いながら画質エンジニアが味付けした。生成したパラメータをXperiaに持たせることで、精緻にBRAVIAの色彩、質感、立体感を再現できる他、静止画と動画でパラメータを分け、コンテンツによって最適な画質を実現する。さらに、工場で出荷前に1台ずつホワイトポイントを調整しており、個体差が出ないようにしているという。

●ハイレゾ対応に3.5mmイヤフォンジャックの継続搭載も

 オーディオについてもチェックしたい。Xperia 1 VIは従来同様、他社製スマートフォンとは異なり、LとRのどちらもユーザーに向く、フルステージステレオスピーカーを採用している。ステレオ感が増すだけでなく、より音場を再現しやすい。公式サイトでは「臨場感のある」と表現されることが多い。

 ただ、実際の聴き比べはできていないため、Xperia 1 Vよりどのような音が聞こえやすくなったのかなど、詳細なレポートはここでは避けたいが、「一層力強いサウンドとなっている」とのことなので、Xperia 1 VIとXperia 1 Vの実機を試す機会があれば比較したい。

 2022年、「Xperia 1 IV」の登場に合わせてクリエイター向けに用意された録音アプリ「Music Pro(プロレベルの録音は月額580円)」や、3.5mmイヤフォンジャックの搭載、ソニー独自AI技術で高音域の表現力などが向上する「DSEE Ultimate」、ストリーミングサービスなどの音源を立体的なサウンドに変換する「360 Upmix」への対応は先代から継承している。

 ゲームに最適な超低遅延などを実現する次世代Bluetoothオーディオ「LE Audio」、スマートフォンからハイレゾを含む音源をイヤフォンにワイヤレス(Bluetooth)で伝送する際、音質の劣化を抑えるソニー独自開発のコーデック「LDAC」にも対応している。

●Snapdragon 8 Gen 3を搭載、最大1.5TBのmicroSDXCを利用可能

 最後にその他のスペックを比較したい。

 ネットワークについては、5Gで使用されるミリ波帯とSub-6帯を利用できる。プロセッサはXperia 1 Vが「Snapdragon 8 Gen 2」だったのに対し、Xperia 1 VIは「Snapdragon 8 Gen 3」となる。外部ストレージについて、Xperia 1 Vは最大1TBのmicroSDXCをサポートしていたが、Xperia 1 VIでは最大1.5TBのmicroSDXCを搭載できる。

 バッテリーの容量は5000mAhでXperia 1 Vと変わらない。数年後に確保できるバッテリーの最大容量も同じだが、Xperia 1 Vでは3年後の最大容量が80%とうたっていたのに対し、Xperia 1 VIでは4年後で80%と長期的な利用を見込めるという。30Wの急速充電対応アダプター「XQZ-UC1(ソニーストア価格は5480円)」を使用すると、30分で50%までの充電が可能。ワイヤレス充電や他のデバイスへの給電機能は継承している。

 プリインストールOSはXperia 1 VがAndroid 13だったが、Xperia 1 VIではAndroid 14となっている。OSのアップデートは最大3回、セキュリティの更新は4年間行われる予定だ。Xperia 1 Vと比べると、OSアップデートが1回増え、セキュリティアップデートの期間が1年延長された。

 サイズと重量はXperia 1 Vが約71(幅)×165(高さ)×8.3(奥行き)mm/187gだったのに対し、Xperia 1 VIでは約74(幅)×162(高さ)×8.2(奥行き)mmで、重量は192gとなった。サイズは横幅が3mm増して、高さが3mm低くなり、奥行きが1mm減ったことになる。重量は5g重くなった。

 このため、冷却構造や3.5mmオーディオジャック、HDMI出力ポート(1080p/120Hz出力に対応)、LANポートなどを併せ持つゲーミングギア「Xperia Stream for Xperia 1 IV」は流用できなくなった。