Amazonのタブレット「Fire」シリーズの一部のモデルには、型番の後に「Plus」が付いた上位バージョンが存在する。これらはワイヤレス充電機能を搭載しており、対応デバイスに載せるだけで充電が行えることが、通常バージョンのFireとは異なる特徴だ。

 このワイヤレス充電に対応するスタンドは、以前は「Made for Amazon」認定を取得した製品(以下Amazon認定スタンド)が販売されていたが、現在では出荷停止になっている。理由は定かではないが、10型対応モデルに関しては不具合が原因と見られる出荷停止も起こっており、設計上の何らかの欠陥を抱えていた可能性がある。

 いずれにせよ、Amazon認定品のワイヤレス充電スタンドは、8型/10型ともに後継もなく、空席となってしまっているのが現状だ(2024年5月7日現在)。

 今回紹介するFFZZKJのワイヤレス充電スタンドは、その空席を埋める製品だ。対応するFireシリーズは、「Fire HD 8 Plus」と「Fire HD 10 Plus」、つまり8型と10型の両方に対応する汎用(はんよう)性の高さも特徴だ。セール期間中は実売価格3千円台で販売されることもあり、Plusバージョンの「Fire」を所有するユーザーにとって、魅力的な製品となっている。

 今回はこの実機を購入したので、対応とされるFireシリーズの3製品と組み合わせて、使い勝手について検証していく。

●8型と10型に両対応 スタンドは折りたたみが可能

 まずは外観からチェックしていこう。本製品はスタンドという名の通り、FireタブレットのPlusバージョンを立てかけて充電を行う仕様になっている。ワイヤレス充電の規格はQi(チー)で、製品ページを見る限りでは、本体の中央部に、縦置きと横置きの両方の状態にフィットするよう、2つの充電用コイルを内蔵しているようだ。

 Amazon認定スタンドにない利点として、背面のスタンドが折り畳めることが挙げられる。Amazon認定スタンドは角度が固定なため、片付けや持ち歩きに適さなかったが、本製品はそうしたこともない。ただし、立てた状態での角度は実質固定で、見やすいよう角度を調節することは不可能だ。

 またFireのPlusバージョンだけでなく、一般的なQi対応スマホも充電できる。コイルの位置がきちんと合うことが必須だが、こうした汎用性の高さは、Amazon認定スタンドよりもはるかに上だ。

 充電器はUSB PDに対応しており、最大20Wでの充電に対応。製品ページおよび取説では最大18Wとされているが、「9V/2.22A」「12V/1.67A」という本体の記載を見る限り、最大20Wが正しいようだ。

 ワイヤレス充電は最大15Wまで対応する。実際の測定結果は、この後に取り上げる。ちなみに添付のケーブルについても調べてみたが、こちらは3A対応で、USB 2.0対応品となっている。

●10型モデルは有線以上のスピードで充電可能

 さて、Fireのワイヤレス充電器として利用するにあたって、チェックすべきポイントは2つある。1つは充電速度であり、もう1つは、Fireをスマートディスプレイとして使うShowモードに対応するかどうかだ。

 まず充電速度について、Fireのバッテリー残量を30%台まで減らした状態で測定してみたところ、Fire HD 10 Plusは15W前後、Fire HD 8 Plusは6〜7Wで充電されることを確認した。有線での充電だといずれの製品も7W前後なので、本製品を使うことにより、Fire HD 10 Plusは2倍以上高速に充電できることになる。

 Fireはもともと急速充電に対応していないため、充電器を急速充電対応のモデルに交換しても高速化は望めないが、Fire HD 10 Plusについては、本製品を使えばQiの規格上の最高速度である15Wに迫るスピードで充電が行えるので、結果的に有線より高速に充電できることになる。有線かワイヤレスかを問わず、とにかく速く充電したい人にも魅力だろう。

 Fire HD 8 Plusについては、ここまで露骨な差はないものの、充電速度が有線とそれほど変わらないという事実だけでも十分だ。今回は満充電になるまで検証したわけではないので、充電が進むにつれ速度が遅くなる可能性はあるが、少なくとも、速度の遅さを理由に敬遠する必要はなさそうだ。

 では、スマホを載せた場合はどうだろうか。iPhone 15 Pro MaxおよびPixel 8 Proで試したところ、前者は8W前後、後者は15W前後という結果だった。

 この両製品はUSB PDによる急速充電に対応しており、有線だと最大27W程度で充電できるので、今回の結果はQiの充電速度がボトルネックになっていると見られる。充電に使えなくはないが速度は期待できない、という結論になるだろう。

 一方、スタンドの幅が広いからといって2台並べて充電できるわけではなく、Fireのためならともかく、スマホを充電するためにわざわざ購入する必要はなさそうだ。

●Showモードへの切り替えも問題なく対応

 もう1つ、Showモードへの自動切り替えについても試してみたが、こちらも問題なく対応している。Fire本体側でAlexaを有効化し、Showモードの設定で「充電スタンドに横置きしたら自動的にShowモードに切り替える」をオンにしておけば、Amazon認定スタンドと同様、Fireをスタンドに置くだけで自動的にShowモードへと切り替わり、持ち上げると元のタブレットとしてのモードへと切り替わる。

 本製品に対応するFireシリーズの3モデルそれぞれで試したところ、いずれもこれらの挙動に問題ないことを確認した。実際に試すまでは、Made for Amazon認定を取得していないことからまず無理だろうと思っていたがが、いい意味で裏切られた格好だ。製品の特徴としてもっとアピールしてもおかしくないが、製品ページでは言及されていないのが不思議なくらいである。

●お買い得だが将来性には要注意

 以上ざっと見てきたが、Amazon認定スタンドでできる機能を一通り網羅しつつ、セール時には3千円台(原稿執筆時の通常価格は税込み4580円だった)で販売されるなどリーズナブルで、しかも不要な時は折りたたんで片付けられるなど、Amazon認定スタンドにない特徴もあり、十分に合格点を付けられる製品だ。

 見た目が完全にノーブランド品であり、保証という点では気になるが、少なくとも付属のUSB充電器は国内でPSEマークをきちんと取得しているので、最低限の信頼性は担保できているように思う。

 気をつけたいのは、保護ケースを装着したまま充電できるとされている割には、意外とシビアなことだ。今回スマホの充電を試すにあたり、TPU製の保護ケースを付けたまま載せてみたのだが認識されず、充電を開始できなかった。製品ページには厚さ5mm以内、説明書には4mm以内のカバーやケースは付けたまま充電可能と書かれているが、実際にはそこまで余裕はないようだ。

 一方で、将来性については要注意だ。Fireの10型モデルについては、2023年発売された第13世代で既にPlusバージョンが消滅しており、近いうちにモデルチェンジが予想される8型モデルについても、このPlusバージョンがどうなるかは分からない。Amazon認定スタンドの後継が発売されないのは、そうした事情が関係している可能性もある。

 そのため、現在既に本製品対応のFireタブレットを所有しており、今後数年は使うことを予定しているユーザにはお勧めできるが、次のモデルチェンジでFire自体を買い替える可能性があるユーザーは、あわてて購入せず、もう少し様子見するというのもありだろう。

 本製品はFireに限らず、他のスマホでも利用できるので、買ってしまってもつぶしは利くが、今スマホのワイヤレス充電はQiからQi2へのリプレースが始まろうとしており、本製品も1〜2年というスパンで見れば、性能面が物足りなくなる可能性はある。これから購入するのであれば、そういった点については把握しておきたいところだ。