キーエンスの離職率は3〜5%台を推移している。厚生労働省が発表した産業界全体の離職率15%(2022年度)に比べてかなり低い。理由の1つは、日々の業務を数値化することで不要なストレスやプレッシャーが排除できるからだと同社出身の岩田圭弘氏はいう。非人間的と思われがちな“行動の数値化”は、むしろ仕事に人間味をもたらす。本連載では、『数値化の魔力 “最強企業”で学んだ「仕事ができる人」になる自己成長メソッド』(岩田圭弘著/SBクリエイティブ)から内容の一部を抜粋・再編集し、仕事の成果を高める“キーエンスの数値化”を紹介する。

 第2回は、「自分の行動」を見える化する3つのステップについて解説する。

<連載ラインアップ>
■第1回 毎日の業務を数値化すると、なぜ“10倍速の成長”が可能になるのか
■第2回 “会社から与えられた目標”をゴールに設定すると、なぜ未達に終わるのか(本稿)
■第3回 仕事の成果が低い時、「能力不足かも」と悩む前にすぐやるべきこととは?
■第4回 「行動の量」を増やすことが、“根性論”にならない理由とは?
■第5回 「行動の量」を増やしても、残業が増えない発想とは?
■第6回 なぜ、「数値目標が設定しにくい業務」の数値化が重要なのか?(6月10日公開)
■第7回 部下を“茹でガエル”にするマネジャーの、典型的なチームの状態の捉え方とは(6月17日公開)
■第8回 数値化が苦手なマネジャーは、なぜ感情的に部下を叱るのか?(6月24日公開)

※公開予定日は変更になる可能性がございます。この機会にフォロー機能をご利用ください。

<著者フォロー機能のご案内>
●無料会員に登録すれば、本記事の下部にある著者プロフィール欄から著者フォローできます。
●フォローした著者の記事は、マイページから簡単に確認できるようになります。
●会員登録(無料)はこちらから

■STEP1――ゴールを定量化する

 まずは、目標(ゴール)を定量化します。

 ダイエットで言えば「目標の体重」です。

 特にビジネスシーンでは、これは「KGI(Key Goal Indicator)」と呼ばれます。

 KGIとは目標が達成されたかどうかを評価するための指標で、営業であれば目標とする売上や利益、受注件数、人事で言えば目標とする「採用人数」などだったりします。

 ゴールを定量化するのは、会社から求められている役割をまっとうするために目指す指標が必要なためです。

 会社から仮に今月の目標として「売上300万円」を与えられているのであれば、「KGI=1カ月で売上300万円」となります。

 このKGIの設定内容によって、各プロセス(行動)で必要となる「行動量(どれだけの『行動の量』が必要か)」や「転換率(どれだけの『行動の質』が必要か)」が変わってきますので、KGIはこの後のすべてのステップの原点となる数字です。

 KGIを設定するときのコツは、会社から与えられた目標よりも高い目標を持つことです。

 なぜなら、人は基本的に目標値を下回る結果を出しがちだからです。

 大体、8〜9割の達成率になることが多いです。

 そこを織り込んで3割増しくらいのKGIを設定するのがコツです。

 たとえば、会社から与えられた今月の目標が売上300万円であれば、3割増しの390万円をKGIに設定します。

 私がキーエンスにいたとき、最初は会社から与えられた売上目標額をそのままKGIにしていました。

 ところが入社2年目の頃に、あと1件を残してKGIを未達にしてしまったことがあったのです。

 まさに自分が目指していた値の95%ほどになってしまったわけです。

 このことがあってからは、KGIを会社から与えられた数値よりも高くしました。

 これにより、仮に設定したKGIを達成できなかったとしても、会社から与えられた目標は達成できるので、きちんと「結果」を評価してもらえます。

 トップレベルを目指している人であれば、会社から与えられた目標の2倍の目標を設定するのも、いいでしょう。

 たとえば、会社から与えられた今月の目標が売上300万円であれば、2倍の600万円をKGIに設定するのです。

 8〜9割の達成率で終わってしまったとしても、480万円以上の結果にはなりますので、かなり高い評価を得ることができます。

 実際、私がキーエンスで営業成績1位を達成していた頃には、KGIを会社の目標額の2倍に設定していました。

 もし、会社から具体的な数値を与えられない場合は、自分の過去の実績を常に上回るようなKGIを設定すればいいでしょう。