扶養家族・扶養親族とは?扶養に入れる条件や手続きをわかりやすく解説

*記事の内容は2024年4月8日時点の制度に基づき作成しています。各種制度内容は今後変更となる可能性があります

1.扶養家族とは

扶養家族(ふようかぞく)とは、家族の収入によって養われている人(家族)のことをいいます。扶養には「助け養うこと」「生活できるように世話すること」という意味があり、一般的には経済的に自立していない親族を援助するときに使われます。例えば、家庭内で夫だけが働き、妻と子どもを養っている場合を例にとると、妻と子どもは夫の扶養家族にあたります。

税金や社会保険制度では、扶養家族になると扶養する側・される側にとって税額や社会保険料の負担が軽減されるなどのメリットがあります。家族を扶養するには、後述の「3.家族を扶養に入れる手続き」で紹介する手順を踏む必要があります。

なお、扶養される家族を指す言葉は制度によって異なり、税制上では「扶養親族」、社会保険上では「被扶養者」と呼びます。ただし日常的にはあまり厳密な使い分けはされていません。

tips|そもそも社会保険とは?

社会保険とは、けがや病気、休業、失業、障害、老齢、死亡などのリスクを社会全体で支え合う仕組みで、要件を満たす人は必ず加入しなければならない強制保険です。

社会保険には健康保険介護保険厚生年金の3つ(狭義の社会保険)と、労災保険雇用保険の2つの労働保険があり、扶養制度があるのは健康保険と厚生年金のみです。

社会保険とは

2.扶養家族の範囲と条件

先に述べたように扶養家族には「社会保険」「税制」2つの制度上の定義があり、扶養家族にできる範囲や条件が決まっています。

社会保険上の扶養家族

社会保険上の扶養家族(被扶養者)は、保険料を支払っている扶養者の社会保険(健康保険、国民年金)に加入している家族のことをいいます。つまり扶養者一人分の保険料のみで、そのほかの扶養家族の保険料負担がないということです。

・健康保険の扶養家族

健康保険(公的医療保険)は健康保険(健保)と国民健康保険(国保)の2種類に大別されます。会社員や公務員などの勤め人の多くは健保に、個人事業主や従業員5人以下の小規模事業所などで働いている人は国保へ加入するのが一般的です。

ただし、家族を扶養に入れられるのは、健康保険(健保)に加入している家族のみです。国民健康保険(国保)には扶養認定がないため、人数分の保険料がかかります。

健康保険の扶養家族の範囲

健康保険の対象条件

  1. 扶養者(被保険者)の父母、祖父母、曾祖父母、配偶者(事実婚を含む)、子、孫、兄弟姉妹で、主として扶養者に生計を維持されている人(同居の必要はない)
  2. 扶養者と同一世帯で主として扶養者の収入により生計を維持されている以下の人(同居が必要)
    1. 扶養者の三親等以内の親族(1に該当する人を除く)
    2. 扶養者の配偶者で、事実婚と同様の人の父母および子(*)
    3. *の配偶者が亡くなったあとにおける父母および子
  3. 被扶養者の収入が以下の条件を満たしていること
    1. 年間収入が130万円未満(60歳以上および障がい者は180万円未満)
    2. 同居の場合、収入が扶養者の収入の2分の1未満
    3. 別居の場合、収入が扶養者からの援助による収入額未満

・国民年金の扶養家族

年金制度の対象者と年齢要件

日本では20歳から59歳までのすべての国民が「国民年金」に加入する義務があります。自営業者や学生などの未就業者は、第1号被保険者として自身で保険料を支払います。会社員や公務員など社会保険の適用事業所で働く人は第2号被保険者に該当し、国民年金に加えて「厚生年金」にも加入することで将来受け取れる年金額も多くなります。

第2号被保険者(厚生年金加入者)は、年収130万円未満の配偶者を扶養に入れることができます。扶養される配偶者は第3号被保険者として国民年金に加入することになり、保険料の自己負担が不要になります。

税制上の扶養家族

先に説明した社会保険上の扶養家族は、扶養される家族分の保険料がかかりません。一方、税制上の扶養家族(扶養親族)がいると、扶養する人(納税者)にかかる税金(所得税、住民税)が軽減される仕組みとなっています。扶養家族がいる場合に、所得から一定額を差し引くことを扶養控除(ふようこうじょ)といいます。

扶養控除とは

扶養控除の対象となる扶養家族の条件は以下のとおりです。いずれか一つではなく、これらの条件すべてを満たす必要があります。扶養対象者は16歳以上で、年齢によって控除額が異なります。

税制上の扶養家族(扶養控除)の対象条件

  1. 配偶者以外の親族(6親等内の血族、3親等内の姻族)、または里子、養護を委託された老人
  2. 扶養者(納税者)と同一生計である
  3. 年間の合計所得金額が所得税で48万円(年収103万円)以下、住民税で43万円(年収100万円)*以下
  4. 青色申告の事業専従者としてその年一度も給与の支払いを受けていない、または白色申告者の事業専従者でない

住民税は前年度の収入や家族の扶養状況、居住地の税率によっても金額が異なる

こちらの記事で詳しく解説
>扶養控除とは? 配偶者控除や児童手当との関係まで完全解説 

扶養控除は配偶者である妻や夫は対象となりません。その代わりにあるのが、次に紹介する「配偶者控除」「配偶者特別控除」です。

配偶者控除・配偶者特別控除

配偶者控除とは、収入が一定以下の配偶者がいる場合に、夫婦のもう一方(納税者)にかかる税金が軽減される制度です。扶養控除の配偶者版と捉えるとわかりやすいでしょう。

配偶者控除と配偶者特別控除は、配偶者の年収額に違いがあります。配偶者控除は年収103万円まで、配偶者特別控除は年収103万円超から201万円まで適用されます。世間でよく聞く「103万円の壁」「201万円の壁」はこれに由来しているのですね。

なお、配偶者控除・配偶者特別控除には扶養者の収入に上限が設けられており、合計所得金額が1,000万円(給与収入のみなら年収1,195万円)を超えると適用されません。

3.家族を扶養に入れる手続き

ここからは、実際に家族を扶養に入れるために必要な手続きを紹介します。

社会保険上の手続き

家族を社会保険(健康保険、国民年金)の被扶養者にするには、「被扶養者(異動)届」に記入し、被保険者(扶養者)の勤務先に提出します。勤務先を通じて加入先の保険組合に提出され、被扶養者の認定を受けます。

加入している保険組合によっては被扶養者との続柄、収入、仕送り額などを証明する書類の提出を求められる場合もありますので、一度勤務先の担当部門に確認すると良いでしょう。

なお、社会保険の手続きは結婚や出産などにより加入する家族が増えた場合、5日以内に必要書類を提出する必要があります(扶養から抜ける場合も同様)。期間が短いので注意してください。

税制上の手続き

税制上の扶養親族にする手続きは、会社員(給与所得者)か個人事業主かによって異なります。

・会社員の場合

結婚や就職などによって扶養する家族に変更があった際には、その都度勤務先を通じて「給与所得者の扶養控除等の(異動)申告書」を提出する必要があります。また、年末調整でも同書類を提出することで、最終的に支払う税金の額が決定します。会社によっては、各種手続きを書類ではなくシステム上でおこなうこともあります。

・個人事業主の場合

年末調整がない個人事業主などは、確定申告で手続きをおこないます。確定申告書内にある「配偶者や親族に関する事項」欄に、扶養に入れる家族の名前や続柄などを記入して申告します。

4.よくある質問

Q.扶養家族に入れるのは年収いくらまでですか?

A.扶養家族に入れる年収の上限額は、税制または社会保険などの制度や各種条件によって異なりますが、一般的な目安は次のとおりです。

  • 住民税…100万円まで
  • 所得税…103万円まで
  • 配偶者控除…103万円まで
  • 配偶者特別控除…201万円まで
  • 社会保険…130万円まで

Q.共働きの場合、子どもは夫婦どちらの扶養に入れると得ですか?

A.共働き家庭の子どもを扶養に入れる場合、一般的に収入の多いほうの扶養に入ると得になりやすいといわれています。

社会保険上では、収入の多い納税者の扶養に入れることが原則です。ただし夫婦の収入差が1割以内の場合はどちらの扶養に入れるかを選択できます。

税制上は、扶養控除の対象となる16歳以上の子どもを夫婦どちらの扶養に入れるかは自由に選択できます。所得税は所得が増えるほど税率が高くなるため、収入の多い人の扶養に入れたほうが控除額が大きくなり節税効果も高くなりやすいです。ただし税制上の扶養は夫婦の収入や子どもの人数、住んでいる自治体の税率によっても変わります。

Q.扶養家族手当はいくら支給されますか?

A.扶養手当や家族手当は公的な制度ではなく、会社が独自に設ける福利厚生の一種です。支給額や支給条件などは職場によって異なりますので、勤め先の就業規則などで確認しましょう。

Q.履歴書内に書く扶養家族数とは何ですか?

A.履歴書には「扶養家族数」の記入欄が設けられていることがあります。会社は従業員の家族構成を踏まえて給与の所得税の計算や健康保険の手続きをおこなうため、事前に確認する目的があります。

履歴書の扶養家族数では、社会保険上の扶養家族の人数を記載するのが一般的です。社会保険上の扶養家族には配偶者を含みますが、履歴書に「扶養家族数(配偶者を除く)」と書かれている場合は、配偶者を除いた人数を記載しましょう。