映画監督の古新舜(こにい・しゅん)さんが、2月26日放送のラジオ番組にゲスト出演。最新作『いまダンスをするのは誰だ』に込めた思いなどを明かしました。

 岩手県釜石市出身の古新さんは、大学時代は物理と心理学を専攻し、卒業後は大手予備校で物理の講師を10年間にわたって務めていたという、異色の経歴の持ち主。映画監督になってからの20〜30代では短編映画などで受賞歴を持ちますが、2011年の東日本大震災の際、地元の釜石や福島・南相馬で行ったボランティア活動を契機に、社会派の長編作品に挑むようになったそうです。

「人がいなくて動物たちが野垂れ死んでいる姿を見て、こういう取り残されちゃう命を描くことが、自分の映画監督としての使命じゃないかなと思った」(古新さん)。長編初作品は、犬猫の殺処分問題の現状と命の大切さを描いた『ノー・ヴォイス』(2014)。

 また、番組内では、幼少期からは周りと上手くなじめず、「ネガティブな締め付けを学校や家庭で受けていた過去があって、さらに大学受験の時に第一志望校に落ちて、自分はダメ人間だと自死すら考えた時期もあった」過去も吐露。それでも、「受験勉強は人を追いこんでしまう残酷なものだと18歳のときに思ったのをきっかけに、『これからは死ぬくらいなら自分の人生を生きようと思った』」と古新さん。「今は自由に脚本や小説を書いているので、ようやく小さい頃からやりたかったことをできている」と、前を向いています。そして、この番組出演時にも全身をオレンジでコーデするなど、明るいキャラクターも発揮していました。

 その古新さんが手掛けた最新作『いまダンスをするのは誰だ?』は、パーキンソン病患者を題材に、この難病がどのような症状で、どうすれば病気と一緒に人生を歩めるかを描いた作品です。

 主演を務めるのは、これが映画初出演、初主演となるシンガーソングライターの樋口了一さん。自身がパーキンソン病患者でもあります。

 当初は主題歌だけをオファーしたという古新さんですが、「今回描きたいのはリアルな生きざまや、その人の内からにじみ出る思い。当事者でないとダメだ」と思ったことから、樋口さんに「演技初挑戦になるけどお願いします」と、出演を直談判したそうです。

 独立系の映画作品ということもあり、限られた日数と予算での制作となった同作。この映画を通して伝えたいメッセージについて、古新さんは次のように語ります。

「人って、病気や事故が起きると、『なぜ自分が』と考えるものですが、そういう逆境があったときに、自分をどう捉えるかで、人生が分かれていく。病気にかかったことで自分が今まで気づかなかった視点、人の大切さ、自分が生かされているということなど、自分自身が謙虚になれたり感謝できるような、そういうところを描けているのかなと思う」

 さらに古新さんは、「なにか逆境があったとき、弱さを見せられなくなるのはつらいこと。だから『弱さを見せることが強さになる』というのも1つのテーマとしている。特に病気は自分がかかるまでは他人事。病気になってから『何が悪かったのか』と考えると思うが、かかる前にいろいろ見つめ直すのも大事かなと考えている」と話していました。

 2023年10月から東京を皮切りに各地で公開されている映画『いまダンスをするのは誰だ』。3月2日(土)から3月8日(金)まで、神戸の元町映画館で上映されます。

※ラジオ関西『としちゃん・大貴のええやんカー!やってみよう!!』2024年2月26日放送回より