優しいと思って付き合い始めた彼が実はモラハラ気質だった…そんなことが世の中にはままあるようです。

今回は、そんなモラハラ彼氏に振り回されてしまった女性のエピソードをご紹介しましょう。

付き合ったら変わった彼

 画像はイメージ(以下、同じ)笠原涼子さん(仮名・28歳/会社員)は、1年半お付き合いした政樹さん(仮名・31歳/メーカー勤務)と別れたばかりです。

「出会った当初は紳士的で優しくて、しかもあっちからアプローチしてきて交際に至ったのに…。だんだんと些細(ささい)なことをグチグチと指摘してくるようになり、勝手に作った俺様ルールを押し付けられるようになったんです」

そして意見が食い違うと、涼子さんを全否定して突き放すようになり、最初は「政樹みたいな頭の回転がはやくて自分の意見を持っている人がそう言うのなら、私が間違っているのかもしれない」と、自己肯定感の低い涼子さんはつい彼の言いなりになってしまったんだそう。

「ですがある日、ふと鏡を見たらそんな生活に疲れてやつれきった自分が映っていて。不幸オーラが半端なくて引いてしまいました。その時に『私、いったい何やっているんだろう?ひとりでいた時の方が何倍も毎日楽しかったじゃん』と我に返り、別れ話を切り出したんですよ」

別れることはできたものの…

モラハラ政樹さんに「お前みたいなルックスが中の下の鈍臭(どんくさ)い女と付き合ってやっていたのに、恩をアダで返すなんて最低だな。もう話すだけ時間の無駄だから2度と俺に関わらないで」と罵倒されましたが、すぐに別れることができて、涼子さんはホッとしました。

「もっと酷いののしり文句が日常茶飯事だったので、こんなのはカラスがカアカア鳴いている位にしか感じませんでした。むしろ、こんなんで済んでラッキー!という感じでしたね」

そして、政樹さんと別れて1ヶ月後に涼子さんはあることを思い出したそう。

「おばあちゃんの形見である、大切な指輪を政樹の部屋に置いてきてしまったことに気がついたんです。あまりのことに頭を抱えてしまって」

政樹さんと半同棲していた涼子さんは、別れ際にサッと自分の荷物をかき集めて「あとの細々したものは全部捨ててください」と言って出てきてしまいました。

「大事な指輪だったのでずっと自宅で保管していたのですが、ネックレスにリフォームしようと思いつき政樹の部屋に一旦持っていってしまったんですよ」

そんな自分の行動をすっかり忘れていた涼子さんは、激しく後悔したそう。

「もう政樹に連絡して取りに行かせてとお願いをするのは嫌だし、でも捨てられてしまったら悲しいし…どうしようかと本当に悩みましたが、やっぱりまた政樹に偉そうにされるのが耐えられないので諦めようとしたんです」



どうしても諦めきれずに取った行動とは?

指輪ですがどうしても指輪に心残りがある涼子さんはつい、政樹さんと半同棲していた部屋の周りをウロウロしてしまいました。

「もう鍵も返してしまったし、不法侵入する訳にもいかないのでどうしようもないのですが…。あ、でもやっぱり政樹に会いたくないので、彼がいない時間を狙って行きましたよ」

すると、そのマンションの前を涼子さんが通り過ぎようとした瞬間に、偶然、政樹さんの部屋の玄関が開いたそう。

「うわ、ヤバい!と思いとっさに隠れたのですが、出てきたのはモデルさんみたいにキレイな女性でした。そして政樹お気に入りのロンTを着ていたので、きっと新しい彼女だろうと思ったんです」

涼子さんはその瞬間「ここは恥も外聞もかなぐり捨てて、この女性に指輪を取ってきてもらうしかない!」と思い、勇気を出して彼女に話しかけてみました。

「もちろん最初は不審がられましたが、私が部屋の中を細部まで知っていることと、その後ここに私宛の荷物が届いたことがあったらしく、彼女がその宛名を見て私の名前を覚えていてくれたので、信用してもらうことに成功したんですよ」

元彼に電話をするように言われ…

そして無事に大事な指輪を回収することができた涼子さん。

「ですが彼女が『今から私と一緒に、政樹さんに電話してもらってもいいですか?ここは私の部屋ではないので念のため』とスマホを取り出したんですよ。

そりゃそうか、当たり前だよねと思いつつ『もう政樹とは関わり合いたくないので、この指輪は諦めます』と帰ろうとしたら、その落胆ぶりが彼女に伝わったのか『訳を聞かせてもらえますか?』と引き留められたので、つい堰を切ったように今まで政樹から受けたモラハラの数々をぶちまけてしまったんです」

彼女は政樹さんがモラハラ男なことは全く知らず、驚きながら話を聞いていました。

「すると彼女は『心配しなくていいから、これは持って帰ってください』と指輪を渡してくれて…。本当にありがたくて何度もお礼を言って帰りました」



今の彼女との格差

インスタその帰り道、何となく久しぶりに政樹さんのインスタをチェックしてみたそう。

「そしたらあのキレイな彼女の写真がたくさんアップされていて驚きました。アイコンまで仲の良さそうなツーショット写真になっているし、政樹の本気度の高さを感じましたね」

ちなみに涼子さんと付き合っている時は、一度も写真をアップしてくれたことなどありませんでした。

「確かにあんな美人で性格もいい彼女ができたら自慢したくなるよね、と別に嫉妬心も湧きませんでしたが」

新しい彼女からの電話

するとその数日後、なんと例の彼女からLINE電話がかかってきたそう。

実は、涼子さんの置いて行った指輪の存在を政樹さんは知らないため、黙っていれば彼女に害が及ぶことはないと思いましたが…万が一の時のことを考えて2人はLINEの交換をしていました。

「彼女も政樹にモラハラの片鱗を感じることがあり、政樹の間違いを指摘してみたところ、間違いを認めるどころか逆ギレされたので、その場で振ってやったって言うんですよ。それでもしつこく駅まで追いかけられて『ごめんなさい!もう絶対にしないから』と謝られたけど、私の話を聞いていたのでそんなの信じられないと思ったそうなんです」

そして「涼子さんのお陰で容赦なく別れることができました」とお礼を言われたそう。

「正直、彼女が政樹から酷い目に遭わされる前に別れてくれてホッとしてしまいました。まぁ、もしかしたら彼女には本気だったので深刻に態度を改めたいと思っていたのかもしれませんが」



傷心の元彼

そして再び政樹さんのインスタをチェックしてみると…。

「彼女の写真が全部消されていて、アイコンは真っ白になっていました。あ、これは相当応えているなとちょっとニヤニヤしてしまいましたね」

その後、無事に取り戻した指輪は可愛らしいネックレスに生まれ変わり、もう無くさないよう肌身離さずつけているそうです。

<文/鈴木詩子>

【鈴木詩子】
漫画家。『アックス』や奥様向け実話漫画誌を中心に活動中。好きなプロレスラーは棚橋弘至。著書『女ヒエラルキー底辺少女』(青林工藝舎)が映画化。Twitter:@skippop