マイホームを建てる。一世一代の買い物で、夢もふくらみます。総額数千万円にものぼるマイホーム作りでは失敗をしたくないものの、のちに、数十年と続くローンの支払いに嫌気が差すケースもあるとか……。

 ※イメージです(以下、同じ) 何が理由なのか。工務店の営業マンとしてスタートした住宅業界でのキャリアは18年以上。マイホーム情報管理アプリ「マイホム」、プリフィックス注文住宅「PlusMe(プラスミー)」などを手がける、株式会社マイホムの代表取締役・乃村一政さんに聞きました。

外観がみすぼらしくて住宅ローンに絶望

 株式会社マイホムの代表取締役CEO・乃村一政さん マイホームを建てた経験がない人でも、数十年と返済が続く住宅ローンの支払いは長い道のりだと想像が付くはず。しかし実際は、志半ばであきらめかけてしまう人もいます。かつて工務店の営業マンとして、住宅に夢を描く多くの家主を相手にしてきた乃村さんは、「住宅ローンの“払い甲斐”がある家にするには、外観にお金をかけるべき」と主張します。

「前提として、希望していた予算内で理想のエリアにマイホームを作れる人はまれです。多くの人は、完成後に何かしらの後悔を残すもので、次第に、住宅ローンの支払いに絶望を感じる人たちも少なくありません。原因は実は『外観』にお金をかけていないから、というのがあるのです。

 外観は、ある意味ではお客さんの『見栄』の象徴で、毎日の仕事から帰ってきて、自宅を見て『ああ、こんな家のために働き続けなきゃいけないのか……』と打ちひしがれる方も多いんです。過去に営業マンとして、数百軒もの注文住宅を手がけてきましたが、お客さんが外観に納得が行かず、工務店への満足度がどんどん下がっていくケースもたくさん見てきました」

自宅に招き入れる知り合いはごく一部

 家づくりをするなら、家自体の性能はもちろん重要なのですが、外観にもお金をかけてこだわる。住宅ローン返済のモチベーション維持の他にも、理由はあると乃村さんは言います。

「ご近所付き合いのためにも、やはり、外観には力を入れておくべきですね。賃貸であっても戸建てであっても、自宅に招き入れる知り合いはごく一部だと思います。

 実際、ほとんどの知り合いが住宅の良し悪しを判断するのは外観。部屋ごとの動線がしっかりしている、性能や設備が整っているかなどは、そこに住む人が満足できるかどうかの基準にしかならないのです」



ママ友カーストにかかわることも…

ママ友 戸建ての場合、購入者は「25〜35歳」がボリュームゾーンで、周囲との社会的地位を「比較されやすい年代」とも指摘する乃村さん。外観は複雑怪奇な“ママ友カースト”にも、響くそうです。

「戸建てを検討する世代は、バリバリの働き盛りです。ライフステージの変化も激しく、結婚してお子さんが1人、2人と生まれる中で、住まいを検討される方がほとんどです。子どもが成長して保育園や幼稚園に通いはじめると『ママ友カースト』の問題が、待ちかまえています。子どもたちが仲よくなると「◯◯ママちゃんの家に遊びに行く」という付き合いが生まれ、初めて『あの人は賃貸』『あの人は持ち家』と、世帯ごとの格差を意識するようになるんです。

 そこでも、住宅の外観が重要になります。外観が地味でイマイチだと評価されず、自然とカーストの下位に位置づけられることも……。外観が個性的で、おしゃれなデザイナーズ住宅風だとご近所さんから「素敵! どこの建築家に頼んだの?」なんて一目置かれることも。工務店の満足度に直結しますし、外観がデザイナーズ風でも実はお手頃な価格で建ててくれる工務店もあるので、お金の使い方を工夫しながら外観に力をそそぐべきです」

 人は見た目が9割という話もありますが、住宅もじつは同じ。家族、周囲との人間関係にも影響を与える外観は、家づくりで欠かせない要素だといえそうです。

【乃村一政】

(株)マイホム代表取締役CEO。1976年、奈良県生まれ。高校卒業後、吉本総合芸能学院(NSC)へ14期生として入学。約6年間の芸人活動を経て、訪問販売の営業マンに転身。2006年より住宅業界へ移り、2010年に奈良県でSOUSEIを設立。2021年にマイホムを設立。

<取材・文/カネコシュウヘイ>