大河ドラマ『光る君へ』(C)NHK(以下、同じ)大河ドラマ『光る君へ』がひとつの大きな山場を迎えようとしている。

公卿のトップとなった道長(柄本佑)。

道長の出世とともに、彼と青春時代を過ごし、切磋琢磨する藤原公任(町田啓太)、藤原行成(渡辺大知)、藤原斉信(金田哲)の状況も変化していく。

そんな斉信を演じる金田哲さん、大河への出演が決まった時の気持ちを聞くと「小さいころからの憧れだった」と言う。

「毎回のように、大河ドラマに出ているんだな、と実感する」

NHK『光る君へ』藤原斉信役、金田哲さんこの世界に入ったときの目標の1つが「大河ドラマに出演することだった」ときっぱりと言う金田さんは、周囲の芸人にも知られているほどの歴史好き。

「コロナ前に、吉本の企画で歴史好き芸人と行く歴史好きバスツアーがあったんですけど、当時は『真田丸』をやっていたのかな。上田城の神社の絵馬に“いつか大河ドラマに出ます”と書きました。その願いが叶ったわけですから、嬉しいなんていう言葉だけでは表現できない感情でした。選んでいただけただけで光栄でしたし、震えました」

そもそも、歴史が好きになったのは大河ドラマがきっかけだ。

好きな大河ドラマの作品について問うと「『新選組!』はDVD-BOXを買いましたし、『独眼竜政宗』は何度も見直した。僕にとって最初にハマった大河ドラマは、竹中直人さんの『秀吉』。ふんどし一丁で大根くわえている姿は忘れられないです」と表情を輝かせ、語り出す。

そんな大好きだった場所、大河ドラマに出演している金田さんは「毎回(の撮影)で、大河ドラマに出ているんだなと嬉しく思う」と話してくれた。

「セットも素晴らしいし、衣装のこだわりだとかも……。あと、大河ドラマの撮影では、スタジオを出入りするときに、自分でマイクのオン・オフを足で踏むんです。このマイクを足で踏んでスタジオに入るときは、毎回緊張します。

そして錚々たる俳優さんがいるんですから……。でも、ロバートの秋山さんがいるのは、ちょっとホッとしますけどね」と笑って話した。

俳優としても活躍する芸人たち

NHK『光る君へ』藤原斉信役、金田哲さん大河ドラマにはロバートの秋山竜次、そして隣のスタジオで撮影をしている朝の連続テレビ小説『虎に翼』には塚地武雅がいるように、今や芸人のドラマ出演は珍しいことではない。

しかし、金田さんにとって俳優という仕事はどういった存在なのかは、聞きたくなってしまう。

問うと、金田さんは「これについても、すごく考えていて……」と口を開いた。

「イギリスでは二枚目俳優は男前で、一枚目はコメディアンなんですよね。塚地さんが昔、自虐で“芸人崩れで俳優気どりですみません”ってある俳優さんに言ったところ、“もともと映画はコメディアンのものですから、別に不思議なことじゃないですよ”って返されたそうで、そこで知ったんですけど。

コントをやっていたら、俳優はその延長線上にあるって聞いて、なるほどと思いました。よしもとの養成所・NSCでは、チャップリンやバスター・キートンを観る授業があるんですけど、それを思い出して、我々コメディアンが映像の世界で演じるのは、いたって普通のことなんだと気がつきました」とのこと。

そして「俳優をやるなら芸のことをもっと考えろ、みたいなある種、凝り固まった考えがいつの間にかなくなった」と話してくれました。



芸人としてスベってる強みが生きている

NHK『光る君へ』藤原斉信役、金田哲さん俳優として活躍する芸人たちの根っこの部分は、やはりこれまでのお笑いの経験が生きている。

「ネタを作って、演じて、演出も自分でやるのがコントです。それでお客さんの前に出て、すってんてんにスベることもある。あれは防衛本能で考えないと、自分の心が壊れるぐらい、メンタルがやられますよ(笑)。

でも、そのスベってることがここに来て強みとして出ているのかな、って思うことも多くて。

日頃から、同じネタをやる際にも“なんでこんなにウケないんだ”とか“今の間(ま)がなんで違うんだ”とかって当たり前のように気にしている。そういう細かいところに気を配るのが演技に行きているのかなって。もちろん人それぞれだとは思いますけど」

令和の喜劇王を目指して

NHK『光る君へ』藤原斉信役、金田哲さん芸歴20年。“大河ドラマ出演”という、1つの目標を達成した金田さんの次なる目標を聞いてみると「これまでに平安、戦国、幕末の時代を生きたので、また違う時代にも行ってみたい」としつつ、「喜劇王」と答えてくれた。

「以前、千鳥さんの番組内で『令和の喜劇王決定戦』という企画に出させてもらいました。そのときに、ただの酔っ払いをやったら“向いてるぞ?金田、喜劇の道に行っていいんじゃないか?”って言っていただけたんです。

そんなことも後押しとなって、30代後半で芸人と俳優をやらしていただいたその先、40代では喜劇王を目指す。やりたいことと向いていることがひとつに繋がってきたのかな、と思っています」

ただ言っているだけではない。「喜劇王」になるために在すべきことについても思案済みの金田さん。

「舞台とかネタ、バラエティーは“おもしろかったよ”で終わるんですよ。でも、映像作品となると、ファンの方は何度も観てくれる。その作品に対する思い入れや熱さが伴うから。

もちろん、これからもバラエティ番組には出させていただきたいんですけど、コメディの作品を作っていかなきゃな、とは思っています。

それこそロバートの秋山さんがNetflixで『クリエイターズ・ファイル』をやっているように、喜劇的なジャパニーズコメディを演者としてやっていくことで喜劇王に近づくのかなって。ジャパニーズ喜劇王といったらやっぱり志村けんさん。それに次ぐ、というか違う形の喜劇王を目指して、模索していきます」

<取材・文/ふくだりょうこ>

【ふくだりょうこ】
大阪府出身。大学卒業後、ゲームシナリオの執筆を中心にフリーのライターとして活動。たれ耳のうさぎと暮らしている。好きなものはお酒と読書とライブ