2024年のインディカー・シリーズはバーバー・モータースポーツパークでの第3戦を目前に控えているが、3月にセントピーターズバークで行なわれた開幕戦のウイナー、ジョセフ・ニューガーデン(チーム・ペンスキー)の優勝が剥奪された。

 ニューガーデン、そして彼のチームメイトで3位に入っていたスコット・マクログリンは、プッシュ・トゥ・パスを本来使用が禁止されているリスタート時に使ったとして、リザルトから抹消、つまり失格となった。なおペンスキーの3台目、ウィル・パワーも10ポイントの減算ペナルティを受けたが、彼はリスタート時にプッシュ・トゥ・パスを使用していなかったため、リザルトから抹消されることはなかった。

 その結果、レースが開催されてから1ヵ月半経ったタイミングで勝者が変わった。繰り上がりでの優勝となったのはアロー・マクラーレンのパトリシオ・オワードで、パワーが2位、コルトン・ハータ(アンドレッティ)が3位となった。

 インディカーからの声明には、次のように記されている。

「セントピーターズバークの市街地で行なわれたレースのデータを広範囲に精査した結果、チーム・ペンスキーはオーバーテイクシステムを操作することで、2号車(ニューガーデン)、3号車(マクログリン)、そして12号車(パワー)がスタート時、リスタート時にプッシュ・トゥ・パスが使えるようになっていた」

「インディカーのルールブックによると、チャンピオンシップレースにおいて、マシンが代替スタート/フィニッシュラインに到達するまではオーバーテイク(プッシュ・トゥ・パス)を使用することはできない」

「2号車(ニューガーデン)と3号車(マクログリン)はリスタート時にプッシュ・トゥ・パスを使って競技上のアドバンテージを得たと判断されたが、一方で12号車(パワー)は使用しなかったと判断された」

 この違反が発覚したのは、先日ロングビーチで開催された第2戦のウォームアップ・セッション中だったようだ。ペンスキーは以下のルールに違反していた。

規則14.19.15.
プッシュ・トゥ・パスを可能にするインジケーターは、マシンに搭載された計時・採点ビーコンからチームのデータロガーにCAN通信で送信される。この信号は、ロードコースおよびストリートコースの全イベント中、変更されることなく中断されることなくECUに渡らなければならない。

規則14.19.16.
レーススタート、そして(最終ラップを示す)ホワイトフラッグが振られる前の周までか、もしくはタイムレースの残り3分を切るまでに行なわれたレースリスタートでは、プッシュ・トゥ・パス・システムが無効となり、各車両が代替スタート/フィニッシュラインに到達した時点で有効となる。

 ルールブックに則ると、これらの違反はレース手順ペナルティにあたり、違反車両があった場合にはリザルトを訂正し書き換えることが可能となる。ペンスキーの3台にはそれぞれ25000ドル(約388万円)の罰金が科され、セントピーターズバーグ戦における賞金は全て没収される。

 インディカーのジェイ・フライ社長はこの件について「インディカーシリーズの誠実さや正確性は、我々にとって極めて重要だ」として次のように述べた。

「セントピーターズバーグでは違反が発見されなかったが、インディーカーはロングビーチでの日曜日のウォームアップ中に(オーバーテイクシステムの)操作を発見し、ロングビーチでのアキュラ・グランプリでは全てのマシンがルールに準拠するよう直ちに対処した」

「今週のバーバー・モータースポーツパークでのレースから、この違反を抑止するための新しい技術検査手順が導入されることになる」

 またインディカーの声明を受けて、チーム・ペンスキーのティム・シンドリック社長も声明を発表。プッシュ・トゥ・パス・システムのソフトウェアが適切に削除されていなかったと説明した。

「残念ながら、先日行なわれたチーム・ペンスキーのインディカーハイブリッドテストの後、削除されるべきプッシュ・トゥ・パス・システムのソフトウェアが削除されていなかった」

「このソフトウェアは、セントピーターズバーグ戦のリスタートでプッシュ・トゥ・パスを使うことを可能にした。2号車に乗るジョセフ・ニューガーデンと3号車に乗るスコット・マクログリンがリスタート時にプッシュ・トゥ・パスを使ったが、これはインディカーのルールに反していた。チーム・ペンスキーはインディカーによって科されたペナルティを受け入れる」

 今回の失格裁定により、ニューガーデンとマクログリンはポイントランキングで大きく後退。現在のポイントリーダーはチップ・ガナッシのスコット・ディクソンとなっている。