2024年から新たに発足したROTAX製エンジンを使用するEXGEL MAX CHAMPシリーズの3カテゴリーのうち、最も低い年齢を対象としたミニの第3・第4ラウンドが5月4日〜5日、岐阜県のフェスティカサーキット瑞浪で開催された。

 エントリーリストにはフルグリッドに迫る32名のドライバーが名を連ね、海外からの参戦も。4カ国13名と、EXGEL MAX CHAMPシリーズの中で最も外国人ドライバーの比率が高いカテゴリーとなった。

 開幕ラウンドと第2ラウンドではともに中国人ドライバーが優勝を果たしており、人数の面だけでなくレースのクオリティにおいても、外国人ドライバーがシリーズに欠かせない存在となりつつある。

 日本国内カートレースの国際化を通じてカートの活性化を目指すEXGEL MAX CHAMPシリーズにとって、現在このミニが象徴的なカテゴリーといえる。

 全5ラウンドで開催される今シーズンにおいて、注目されるアメリカROTAXシリーズとの交換留学への選抜は、日程の兼ね合いで第4ラウンドまでのポイントが適用され、成績優秀者1名にアメリカへの参戦権が与えられる。誰がそのチャンスを獲得するのか、注目を集める週末となった。

■第3ラウンド

 Qualifying Practiceで総合トップタイムをマークしたのは、開幕ラウンドを制した中国人ドライバーHan John。2番手に林樹生、3番手には柴崎尊が続いた。

 瑞浪で開催されるROTAX MAXレースの魅力のひとつが、海外のレースと同様に総当たり方式が採用された予選ヒートである。Qualifying Practiceの上位順にABCの3グループに振り分けが行なわれ、予選ヒートが進行していった。

 予選各ヒートで強さを見せたのが、Qualifying Practiceで8番手につけていた藤原迪永だった。藤原は2ヒートともトップで予選を終え、予選総合で首位に立ち決勝のポールポジションを獲得した。

 ポイントランキングをリードするHan Johnも順当に予選ヒートを消化し予選総合2番手。Qualifying Practice 10番手の飯田一仁が両ヒートともポジションを大きく上げ、予選総合3番手に浮上してきた。

 迎えた第3ラウンド決勝。オープニングラップでポールスタートの藤原と3番手スタートの飯田が激しくトップを奪い合う後方で、ポイントリーダーのHan Johnが他車と接触し大きく後退。5番手スタートの柴崎も接触からスピンを喫するなど、波乱の幕開けとなった。

 藤原はオープンニングラップの混乱を尻目に、1周目を終えた段階で大きなギャップを築いてレースをリード。その後方ではHan Yu Chen、下山隼人、飯田、北中一季、林らによる2番手争いが激化、その間に藤原は独走状態を築くことに成功した。

 レース中盤には林が2番手集団から一歩抜け出すも藤原との差を詰められず、単独走行となった藤原がトップチェッカー。2位に林、3位には韓国から参戦のHan Yu Chenという着順となった。

 序盤ほぼ最後尾まで順位を下げたHan Johnは猛烈な追い上げを見せ、5位までポジションを回復して第3ラウンドを終えた。

 この第3ラウンドの結果を反映した段階でのポイントランキングでは、引き続きHan Johnがリード。僅か1ポイント差の2番手に林が続き、ポイントの面ではこの2名が有利な状況だが、第3ラウンドで優勝した藤原も逆転可能な3番手につけた。

 翌日に開催される第4ラウンドの展開から目が話せない状況となった。

■第4ラウンド

 「アメリカ」という言葉が各所で飛び交う日曜日の朝。第4ラウンドのQualifying Practiceでやはり速さを見せたのはHan Johnだった。第3ラウンドに続き総合トップに立つことに成功。2番手に飯田、3番手に下山隼人、前日の勝者である藤原も6番手と好位置につけた。

 一方、Han Johnと1ポイント差でシリーズ2位につける林はメカトラブルからノータイムに終わり、なんとQualifying Practice最下位と絶望的なポジションから第4ラウンドを戦わざるを得なくなった。

 波乱の展開は予選ヒートでも続いた。藤原が2ヒートともトップチェッカーで決勝のポールポジションを獲得する一方、Qualifying PracticeトップのHan Johnは1ヒート目が3番手、2ヒート目は接触リタイアの上失格となり、予選総合30番手とほぼ最後尾からの決勝スタートとなった。

 Qualifying Practiceで最下位に沈んだ林は、予選両ヒートで驚異的なポジションアップを果たし決勝8番グリットを手に入れた。

 これにより、パドックでの最大の関心事となったアメリカ行きの権利獲得は、藤原が最も有利なポジションに立ち、第4ラウンド決勝をスタートすることとなった。

 スターティンググリッドはポールポジションに藤原、セカンドグリッドには下山。2列目にはJin Yuxianと石川大翔が並んだ。

 オープニングラップでトップ集団に大きな混乱はなかったものの、1周目を終え早くも藤原が2番手以下を引き離す展開に。6番手スタートの飯田が大きくポジションを上げ2番手集団をリードし、Jin Yuxian、石川らがパックを形成していった。

 レース序盤から中盤にかけ、2番手の飯田がトップ藤原に猛チャージ。一旦は飯田がトップに立つものの、藤原が落ち着いてポジションを奪い返した。この攻防の間に林もトップ集団に追いつき、藤原、飯田、Jin Yuxian、下山、林の5台がトップ争いを展開していった。

 中盤アグレッシブに攻め続けるJin Yuxianのチャージを藤原は落ち着いて抑え込みトップを堅守。その背後では着実にポジションを上げてきた林が迫り、終盤にはトップの藤原と2番手の林による一騎打ちの様相となった。

 最終ラップまで目の離せない好バトルを制したのは藤原。第3ラウンドに続く連勝を達成した。2位には林、3位に飯田が入り激戦の第4ラウンドが終了した。

 この結果、4戦終了時点でのポイントランキングでトップに立ったのは林。朝のQualifying Practiceで絶望的なポジションに沈んだ林が、見事な追い上げを見せアメリカ行きのチケットを手中に収めた。

 林がアメリカへの交換留学の権利を掴み取り、一旦クライマックスを迎えた当シリーズ。しかしさらに大きなクライマックスが、8月に開催される鈴鹿の最終ラウンドとなる。

 鈴鹿サーキットではMINI MAXクラスが初開催となることに加え、交換留学プログラムでアメリカから選抜されたドライバーの参戦が組み込まれており、大きな盛り上がりが予想される。

 EXGEL MAX CHAMPシリーズの象徴的なシリーズとなったミニから、さらに目が離せない展開となった。

■藤原迪永コメント(第3・第4ラウンド優勝)

「各国の選手が集まった今大会で第3戦、4戦と連勝することができとても嬉しいです。ただ両レースともにQualifying Practiceでは出遅れてしまい、そこが課題だと考えています。普段の練習から意識して取り組み、次戦ではタイムトライアルからトップで勝ちたいです」

■林樹生(アメリカへの交換留学に選抜)

「チームやメカニックさんのおかげで、日本代表に選ばれたことをうれしく思います。アメリカに行っても今日みたいに、後方からでもあきらめずに上位を目指して走りたいです」