かねてより噂されていた通り、先日レッドブル・レーシングはチームでチーフテクニカルオフィサー(CTO)を務めるエイドリアン・ニューウェイが2025年初頭で退団することを発表した。

 F1エンジニアリングの第一人者として“空力の鬼才”というふたつ名で呼ばれるニューウェイ。彼のレッドブルでの功績を称え、かつてチームに所属したF1ドライバーたちも称賛を送った。

 ニューウェイはウイリアムズとマクラーレンでF1タイトル獲得に貢献すると、2006年にレッドブルに加入。手腕を振るい、チームを中団グループからタイトル候補へと引き上げた。

 その後レッドブルはセバスチャン・ベッテル、マックス・フェルスタッペンと共にコンストラクターズタイトルを6回、ドライバーズタイトルを7回獲得。チーム創設20年目の2024年シーズンも両チャンピオンシップをリードしている。

 ニューウェイは今年もCTOの業務を継続し、レッドブル初の市販ハイパーカーRB17の開発プロジェクトを完了させる予定だ。

 2019年にシーズン半分をレッドブルで過ごしたピエール・ガスリー(現アルピーヌ)は、ニューウェイを“唯一無二の天才”と称え、チームでの一番の思い出はニューウェイと共に仕事をしたことだと明かした。

「唯一無二の天才と言えるだろうね。とてつもないほどの才能があり、僕らのスポーツで最も成功を収めたエンジニアだ」とガスリーは語った。

「とても独特のアプローチを採るんだ。ミルトンキーンズ(レッドブルのファクトリー)に行った時、彼が(製図)ボードに色々なモノを描いていたのを今でも覚えている。最近のF1マシンはこうやって描かれているのか? と思ったよ」

「ただただ印象的だったし、レッドブルで一番の思い出は、そのような特別な人と一緒に働けたことだ」

「エイドリアンとはとても良い関係だった。とても謙虚で実直な人だった」

 ガスリーと入れ替わりで2019年シーズン途中からレッドブルに加わり、2020年末までチームでドライブしたアレクサンダー・アルボン(現ウイリアムズ)も、ニューウェイとの仕事は“刺激的”だったと語った。

 そしてアルボンは、レッドブルのレースシートを降ろされて2021年にリザーブドライバーとしてファクトリーでシミュレータ業務を担当するようになり、ニューウェイとより緊密に仕事をするようになったと明かした。

「彼はとても良い人で、彼を知っている人は分かると思う。彼はとても人気があり、とても寛容だ。彼とはとても仲良くなれた」とアルボンは言う。

「彼の次の動きが気になるところだ。どのチームも彼を捕まえようと追いかけているけど、彼が引退を選ぶにせよ、レースを選ぶにせよ、僕は彼の成功を祈っている。そしてもちろん、僕らチームの扉はいつでも開いているよ!」

「彼はドライバー側と非常に繋がりを持っていた。彼はマシンがどのように感じられるのかを本当に知りたがっていた。ある意味(マシンの素性が良くとも)彼はパフォーマンスを最大限に引き出すためには、それなりのセッティングが必要だということを理解していたんだと思う」

「彼のオフィスはクリスチャン(ホーナー/チーム代表)の向かいにあって、僕はいつも彼に会いに行っていた。僕がシミュレータ担当だった2021年はエイドリアンとそういうことを話すことが増えたんだ。2020年に僕らが抱えていたいくつかの問題を解決したり、フィロソフィーや彼が集中する必要があるエリアを理解したりするためにね」

「彼が重要だと思うことがあれば、日曜日の後に必ず僕に話をしに来て、それに関して僕の意見を求めてきた。見ての通り影響力のある人物とそういった関係を築けたことは良かった」

 そして2014年から2018年までレッドブルのドライバーを務め、2023年シーズン前半はサードドライバーを担当したダニエル・リカルド(現RB)は、ニューウェイの手掛けたマシンをドライブできたことは“光栄”だったと語った。

 そしてリカルドはファクトリーでニューウェイの製図ボードを見る時に「少し緊張した」と明かしつつも、ニューウェイがいかにレース好きかであるかを語った。

「彼と仕事できたのは光栄だったし、彼のレースカーを何台もドライブできたのも光栄だった」とリカルドは言う。

「もちろん、このスポーツのファン、僕の父ですら自分がレッドブルと契約した時に『エイドリアンと仕事をするんだ』となっていた。彼にとってもワクワクすることだった」

「クールなことだし、光栄だよ。彼が何をするのか見てみよう。でももちろん、彼の成功を祈っているし、彼がどこに行くのか見てみよう」

「彼のオフィスに入ると大きな製図ボードがあって、彼が僕の分からない話を聞いてくるかもしれないから、ちょっと緊張するんだ。『あまり質問しないでくれ。僕のためを思って、かなり基本的なことにとどめておいてほしい』と願っていたよ」

「でも彼はモータースポーツのファンだった。グッドウッドであれ、そのリバイバルであれ、彼は関わろうとする。僕らと同様に彼はコアなファンのひとりなんだ」

「彼が今でもモータースポーツに深く関わり、情熱を注いでいることは明らかだ。それは彼がいかにこのスポーツを愛しているかを物語っていると思う」