ついに本領を発揮した。昨年までFIA F2で活躍したレッドブル育成の“逆輸入ルーキー”、岩佐歩夢がスーパーフォーミュラ第2戦オートポリスでポールポジションを獲得したのだ。開幕戦鈴鹿では予選の失敗が響いて9位に留まったが、2戦目にしてその遅れを取り返しにかかっている。

 しかも岩佐のポールタイムは、2番手以下に対してコンマ3秒以上の差をつける圧倒的なものであった。岩佐はどのようにしてこの結果を勝ち得たのか?

 テクニカルサーキットのオートポリスでは、セットアップの方向性に悩むような声もドライバーから口々に聞こえている。コーナーによってアンダーステア、オーバーステアと症状が異なることもしばしば。その中でどこにフォーカスしてどう対処するかは、チームによっても考え方が分かれていそうだ。ただ、岩佐を担当する小池智彦エンジニアは基本的な考え方として「(オートポリスは)やはり曲がってないと話にならないと思うので、回頭性というところ(が重要)。ただそれをフロントで出すかリヤで出すかは悩みどころです」と解説した。

 そして今回のオートポリスラウンドでのベースとなっているセットアップは、昨年岩佐と同じくレッドブルジュニアとしてTEAM MUGENの15号車に乗っていたリアム・ローソンが優勝を飾った際のもの。昨年のローソン担当でもある小池エンジニアも「個人的には(オートポリスのように)メカニカルグリップを出していくようなセットアップの方が好み」だという。

 そんな実績あるセットアップを基に週末に臨んだわけだが、昨年から今季にかけてはダンパーが共通部品となるなど、ハード面での変化もあった。そのため小池エンジニアは「去年のセットアップのベースがあるにしても、それがうまくいかなかったら結構難しいな」と思っていたというが、幸いにもフリー走行からまずまずの手応えを得ることができた。

 そこからはさすがのTEAM MUGENと岩佐。第2戦までの2ヵ月のインターバルで、セットアップ調整の選択肢など入念な準備をしてきたようだ。「そういった準備をしっかりしてきた結果、フリープラクティスから予選までのひとつひとつのステップがうまくいったんじゃないかなと思います」と岩佐は振り返る。

 かくしてポールを獲得した岩佐だが、もちろん一番重要なのは決勝レース。オートポリスは抜きどころの多いサーキットではないのだが、その一方でタイヤへの攻撃性も高いため、スタートでホールショットを奪えば優勝が約束されるというわけでもない。

 小池エンジニアは、昨年のローソンがアンダーカットを駆使して優勝したとはいえ、終盤はライバルの宮田莉朋に迫られたことを鑑みても、レース向けのセットアップという点ではやや心配な面があると語る。

「岩佐選手個人としてはレースマネジメントが上手いので、そこを生かしたクルマ作りをやらなきゃいけません。ただ去年のベースは一応あるにしても、去年と同じならちょっと厳しいかなという部分もあります」

「去年はやはり莉朋選手たちの方が速かったので、そこはもうちょっとやりようがあったかなと思っています」

 岩佐も今回のレースが「スタートで全てが決まるわけではない」と自覚している。そして気になるレースペースに向けては、F2で経験したバーレーン・インターナショナル・サーキットがオートポリスと似ている部分があり、それが参考になっているという。

「例えばバーレーンは、路面がすごく荒くて路面温度が高いというところで、(オートポリスと)すごく似ています。そういう点で自分のしてきた経験が参考になったかなと思います」と語る岩佐。それが決勝レースにも活きそうかと尋ねられると「活きると思います」と返した。