マンチェスター・ユナイテッドの元キャプテンで、引退後は感情的すぎる発言が物議をかもしつつ、ときに鋭く、シニカルな提言が人気を博すガリー・ネヴィルは独特だ。

【最優秀選手】
マルティン・ウーデゴーア
【最優秀ヤングプレーヤー】
コール・パーマー
【最も成功した移籍】
デクラン・ライス
【最優秀監督】
ショーン・ダイチ(4月24日のリヴァプール戦)
【年間最高試合】
FAカップ準決勝のユナイテッド対リヴァプール戦

『BBC』(英国公共放送)の人気番組、『マンデイナイト・フットボール』によるシーズン恒例の企画だが、最優秀監督と年間最高試合は好き嫌い丸出しである。

通常であれば、最もすぐれた監督はアーセナルのミケル・アルテタ、あるいはマンチェスター・シティを率いるジョゼップ・グアルディオラの二択だ。ところが、ネヴィルはマージーサイド・ダービーに限定し、エヴァートンのショーン・ダイチを選んでいる。

年間最高試合も4-4という壮絶な打ち合いとなった12節のチェルシー対シティ戦ではなく、古巣ユナイテッドが宿敵リヴァプールを延長のすえに破った試合を挙げている。

リヴァプールのファンはカチンとくる。だが、ユニフォームを脱いだ後もネヴィルは古巣に近いポジションを貫き、現役時代同様にリヴァプールとアーセナルにはキツい。

“らしい” といわれればそれまでであり、ジェイミー・キャラガーはリヴァプールに優しく、ポール・マーソンはアーセナル寄りだ。冨安健洋を知らなかった凡ミスもやらかしたとはいえ、マーソンはアーセナルの快進撃を心の底から喜び、今シーズンは表情も明るい。

ベスト、ワーストの選出は人それぞれだ。プレミアリーグのコメンタリーを仰せつかって30年の筆者が選ぶとすれば、最優秀ヤングプレーヤーと最も成功した移籍はネヴィルと同様で、最優秀選手はロドリ、最優秀監督はアルテタ、年間最高試合はやはりチェルシー対シティ戦だ。

日本時間では2023年11月12日午前1時30分キックオフにもかかわらず、眠気も吹っ飛ぶ激闘だった。

また、筆者の世代の歴代最高はヨハン・クライフを外せず、より経験豊かな年代の皆さんはペレだろう。リオネル・メッシ、クリスチャーノ・ロナウドで育った世代はチンプンカンプンに違いないが、フットボールにのめり込んだ時代が異なるのだから当然だ。

いずれ、メッシもC・ロナウドも引退する。彼らとは真剣勝負を演じていないパーマー、ジュード・ベリンガム、ジャマル・ムシアラ、フロリアン・ヴィルツの世代が新時代の主役を務め、魅力的な歴史を紡いでいく

6月からEURO、コパ・アメリカ、パリ・オリンピックとビッグファイトが続き、ヨーロッパ主要リーグは8月下旬に新シーズンが開幕する予定だ。フットボールは、つねに動いている。

文:粕谷秀樹