クルマのメンテナンスにおいて、足回りのケアは欠かせない要素の一つです。しかし自転車と同じ感覚で、自分で各パーツに「グリス」を使用するのはアリなのでしょうか。

「中古車」は購入後のメンテンナンスが大切!

 自転車のメンテナンスの重要項目のひとつが「油を差す」つまり、いわゆる「グリス」を各パーツへ使用することです。
 
 クルマのメンテナンスにおいても、足回りのケアは欠かせない要素の一つです。しかし、自転車のメンテナンスと同じ考え方で「グリス」を行うと、実はそれがクルマにとっては適切でない場合があります。

 自転車でグリスが必要な理由としては、部品の摩擦を減少させ、摩耗を防ぐために使用される潤滑剤です。自転車では、チェーンやベアリングなどの動作が発生する部分に、定期的に油を差すグリスアップを行うことで、スムーズな動作を保ち、さらには「錆びつき」も防ぎます。

いっぽうのクルマの場合、足回りとはタイヤ、ホイール、サスペンション、ブレーキシステムなど、車体を支え、地面と接する部分全般を指します。これらはクルマの運動性能や乗り心地、安全性に直結する重要なパーツです。

 一般的にクルマの足回りの多くの部品は、外部から守られていることや「メンテナンスフリー」を前提として設計されています。これは、部品が閉じられていて、一度組み立てられるとグリスアップの必要がない、またはできないようになっていることを意味します。

 たとえば、現代の多くのクルマで採用されているホイールベアリングはシールドされており、交換が必要になるまで潤滑剤の追加や交換は不要な設計です。

 しかし、古いモデルや特定のオフロード車などの一部の車両では、定期的にグリスアップが推奨される部品もあります。これらの部品には、サスペンションの一部やボールジョイント、ユニバーサルジョイントなどが含まれます。

「クルマに油差していいの?」自動車整備士に聞いてみた

 このように、普段の生活利用では特段の必要がない「グリス」使用ですが、自転車と同じような感覚で、あえて使っても「差し支え」は無いのでしょうか?

 自動車整備士は、次のように話します。

「自転車にグリスを使用することは一般的ですが、クルマの足回りにグリスを使用することは、自分は聞いたことがありません。

 基本的にブレーキやサスペンション部分などは、整備経験がない一般人が手を加えることは危険なので、推奨できないと考えます。

 自転車とクルマでは、駆動方法やブレーキの仕組みや複雑さなどが桁違いなので、自転車と同じ感覚で軽く自分でメンテナンスをするというのは、やめた方が良いと思います」

 このように、クルマの足回りにグリスを指すことは一般的ではなく、安易に使用するのはリスクが伴います。

 特に、シールドされた部品やメンテナンスフリーの設計をされている部品に無理やりグリスを追加すると、シールの損傷やグリスの過剰な蓄積によって「部品の機能障害」を招く可能性があります。また、不適切な種類のグリスを使用することで、部品が劣化したり、性能が低下することもあります。

 正しく足回りのメンテナンスを行う際には、まず「メーカーの推奨するメンテナンススケジュールと方法」をきちんと確認することが重要です。

 必要な場合は、専門の整備士に相談し、適切な潤滑剤を、適切な場所に、適切な量だけ使用することが大切です。繰り返しますが「安易な自己判断」は禁物です。