最近、世の中で「アウトドアブームの終焉」と聞かれます。SNSでは「リサイクルショップにアウトドアグッズが溢れている」という投稿も。その一方でクルマ業界でのアウトドアや車中泊ブームはまだまだ盛り上がりを見せているようです。
最近よく聞く「アウトドアブームの終焉」は本当? クルマ業界では逆に盛り上がっている?
昨今巷でよく聞かれるのが、「アウトドアブームの終焉」。
その主因としては、アウトドア用品市場のマイナス成長があるようです。
これと同時に、カーライフにおけるアウトドアや車中泊などのブームも終わりを迎えると言われていますが、果たしてどうなのでしょうか。
アウトドアブームは1980年代に第一次が到来し、2000年代に入ると登山を中心とした第二次。
そして2019年に第三次ブームが到来しました。
第三次ブームの背景となったのが、コロナ禍です。
コロナ禍で三密を避けるレジャーを人々が模索する中で、屋外で密にならないキャンプが休日の過ごし方として広がっていきました。
これに伴って、アウトドア用品やファッションの市場が一気に拡大し、全国にあるキャンプ場は週末ともなればどこも一杯の状態に。
このアウトドアブームを追い風に、SUVやキャンピングカーの需要も増加し、スズキ「ジムニー」やトヨタ「ランドクルーザー」といった本格オフロード四駆は長納期状態に陥ります。
その後、関連市場は右肩上がりに成長を進めますが、2022年がターニングポイントとなり、キャンプ用品市場はここからマイナス成長へと転じます。
その要因として考えられるのが、同年より様々な規制が徐々に緩和され、さらに2023年5月に緊急事態宣言が解除されたこと。
これによりレジャーの選択肢がコロナ禍前の状態に戻り、あえてキャンプを選ぶ必要がなくなったのです。
また、キャンプ用品がある程度行き渡り、新たな需要が望めなくなったことも挙げられるのではないでしょうか。
2023年上半期にはキャンプ場利用者も前年比割れの状態となり、巷ではいよいよアウトドアブームの終焉と囁かれ始めたのです。
しかし、キャピングカー市場を見てみると、2023年は過去最高の販売総額を記録しているのは興味深いところです。
日本RV協会の調べによれば、2012年以降のキャンピングカーの販売総額は増加傾向にあり、2023年には1054.5億円を記録。納車も各社2年待ちという状態になっています。
キャンプ人口は減少傾向にあるのに、なぜ車中泊をするためのキャンピングカーの需要は増えているのでしょうか。
関東圏にあるキャンピングカー販売店スタッフに聞いてみました。
「キャンピングカーの市場はここ10年以上好調な状態が続いていますが、間違いなく2020年からのコロナ禍が追い風となって一気に拡大しました。
三密にならない余暇の過ごし方として、キャンピングカーを選んだ人が多かったのですが、実はコロナ禍のピーク期を除くと、オートキャンプに使っている人はそれほど多くないんです。
多くのオーナーは、旅行をするための足と宿泊手段として考えています。
別にキャンプ場でBBQや焚火をしたいのではなく、温泉に入ったりご当地グルメなど他の部分を楽しむためにキャンピングカーを購入する人が半数以上なのです」
いまやカーライフの定番「車中泊」 新型モデルも続々登場! どんな仕様?
キャンピングカーと合わせて好調なのが、「アウトランド」「オーバーランド」「バンライフ」市場です。
SUVやワンボックス車のルーフにポップアップテントを装着したり、ワンボックス車の車内に車中泊ベッドを入れて旅するスタイルが、若年層を中心に広がっています。
面倒な設営・撤収・道具の手入れの手間がなく、出先での時間を好きに使える車中泊スタイルは、テントキャンプとは異なる余裕を感じさせるものです。
自動車メーカー各社もこのトレンドを盛り込んだ商品訴求を行なっています。
例えば、ホンダ車の純正アクセサリーを手掛けるホンダアクセスは車中泊を意識した仕様を「N-BOX」や「ステップワゴン」で展開。
さらにレクサスでは「オーバートレイル」という同ブランドならではのアウトドアライフを提案する様々な施策を行っており、実際に「GX」や「NX」の特別仕様車として展開されます。
またキャンピングカーショーなどでは軽自動車(ワゴンやバン)をベースとした「軽キャンパー」なども各社から展開されるなど、需要が高まっている様子がうかがえます。
とあるショップの担当者は「クルマ業界では移動する手段にプラスする手軽な車中泊やアウトドアといった要素の需要が高まっている印象です。そうしたこともあり、各メーカーから純正アクセサリーが出たり、カスタム業界でも様々なアフターパーツが登場しています」と話していました。
こうした中で実際の近況はどうなっているのでしょうか。
コインパーキングを運営するトラストパーク社によると、車中泊施設の利用者はコロナ禍前に比べると年々増加しており、2023年は2019年と比較すると10倍増になる見込みだと言います。
経済的にゆとりがなくなっている日本国内において、旅のスタイルが徐々に変化していることがわかるデータです。
ただ、車中泊をするクルマユーザーが増える一方で、公共施設内でのマナーの悪さによるトラブル増加も目立ってきています。
クルマユーザーの9割以上が車中泊を経験している(日本RV協会調べ)という現状において、さらなるインフラの整備が望まれます。