バブル真っ最中の「東京モーターショー」では、高性能なニューモデルや新時代のコンセプトカーが多数登場しましたが、そのなかでも日産が出展した「NEO-X」を紹介します。

30年越しに実用化された画期的装備を多数採用! 幻の最高級セダンとは

 1989年(平成元年)はバブル景気真っただ中で、まだまだこの勢いが続くと信じられていた時代。
 
 クルマとしてもトヨタ「セルシオ」やマツダ「ユーノス ロードスター」、日産「フェアレディZ(Z32型)」に「スカイラインGT-R(BNR32型)」など、新時代を感じさせ、のちに現代でも根強い人気を持つ名モデルが多く登場した年でもありました。

 そうしたバブル真っ最中の1989年に開催された第28回「東京モーターショー」では、会場を千葉市美浜区の幕張メッセに移して開催された初回のモーターショーであり、過去最大の規模と200万人に迫る入場者を記録したビッグイベントとなったのでした。

 なかでも、日産ブースに展示された「NEO-X」は、「人にやさしい知的高性能セダン」を標榜したコンセプトモデル。

 ショートノーズロングデッキの流麗なスタイルを持っていますが、鼻先には東京モーターショー直前に発売された最高級パーソナルセダン「インフィニティQ45」にも搭載された4.5リッターV型8気筒DOHCエンジン「VH45DE型」を搭載。

 トランスミッションには電子制御5速ATを採用するなど、かなり現実的なパワートレインを搭載していたと言えます。

 駆動システムは電子制御のトルクスプリット式4WDを採用し、リアには電子制御LSDも装備するなど、卓越した運動性能も持ち合わせていたことをうかがえるものとなっていました。

 足回りは快適性を兼ね備えた油圧アクティブサスペンションを用いた4輪マルチリンクサスペンションとなっており、前後アクティブステアリングも装備するなど、当時のハイテク装備を満載していた点も特徴です。

 インテリアはあえて後部座席をセパレートシートとした豪華な4人乗り仕様です。

 ガラスルーフには液晶調光サンシェードが備わり、スイッチ操作ひとつで遮光と採光を切り替えることができるという、30年後の現代の新型車にようやく搭載されるようになってきた装備も当時からいち早く導入されていました。

 また、操作系のスイッチはコンセプトカーらしくゴテゴテさせるのではなく、シンプルに集約されており、シフトノブはバイワイヤ化がなされてステアリング左にコンパクトに収納。

 インパネ中央のタッチ式ディスプレイにナビゲーションだけでなく、空気圧センサーを用いたタイヤ状態や車両状態の管理、設定ができるようになっています。

 そのほか、現代の車両では当たり前に装備されるようになった電動パーキングブレーキやヘッドアップディスプレイ、側方警報レーダー(現在のレーンディパーチャーアラートのようなもの)などもすでに搭載。「技術の日産」を感じさせる1台に仕上がっていたのでした。

 残念ながらNEO-Xは実際に販売されることはありませんでしたが、特徴的なフロントマスクは1991年に登場した9代目「ブルーバードARX」とも共通性を感じさせます。

 先進装備の多くがさらに熟成して現在の車両に採用されていることを考えると、かなり先を見据えた意義のあるコンセプトカーであったことは間違いないでしょう。