冬には人がすっぽり埋まるほど雪が積もる北海道の豪雪地域で、弁護士小柳(こやなぎ)のぞみさん(29)は、留萌市を拠点に6市町村の人々の法律相談や依頼への対応に奔走する。一県に匹敵するほどの広大な地に、弁護士は2人のみ。時に片道2〜3時間かけて町や村に足を運び、人々が安心して相談し、平等に法の助けが受けられる場所づくりに努めている。(共同通信=金子茉莉佳)

 この地域は約20年前まで、地方裁判所支部の管轄内に弁護士がゼロないし1人しかいない「ゼロワン地域」だった。4万人を超える弁護士の約3分の2が東京や大阪などの大都市に集中し、地方では弁護士が足りない。

 小柳さんが所属する「ひまわり基金法律事務所」はこうした偏在問題を解消するため、日弁連などが支援してできた公設事務所だ。全国31カ所のうち、北海道に最多の11カ所が集中している。

 北海道音更町出身の小柳さんは、法科大学院での講義をきっかけに弁護士偏在の問題に関心を持ち、道内の司法過疎地で働くことを決めた。2021年に弁護士になって札幌で2年間の経験を積むと、昨年5月、オロロンひまわり基金法律事務所(留萌市)の5代目所長になった。

 「高齢化が進む地方は、相続や後見に悩む人も多い」。近隣市町村の役場などに相談所を開いては、訪れた人々の悩みに耳を傾ける。中には法律とは全く関係ない相談もあるが「本人にとっては大きな悩み。弁護士という職業を信頼して悩みを打ち明けてくれることもある。私が聞くことで解決につながるなら」と、親身に相談に乗る。

 相談者の安心した顔を見てやりがいを感じる一方で、司法過疎地に赴任する弁護士の人材不足には課題を感じている。「一人一人への負荷はかなり大きい。結婚や出産などのライフイベントに配慮した環境が整えば、過疎地で働く人も増えるのでは」と、現場を駆け回る弁護士を後押しする体制づくりも大切だと語った。