西日本鉄道の主力路線である天神大牟田線の西鉄福岡(天神)―西鉄久留米間38.6キロが4月12日、開通100年を迎えた。福岡県を南北に結ぶ大動脈は沿線開発とともに通勤通学の足となり、輸送力を高めた。近年は少子高齢化や沿線南部の人口減少に伴う利用客の落ち込みをいかに補うかが課題となっている。(共同通信=相沢一朗)

 「地域の活性化に力を入れてきた。今後も総合力を発揮して沿線の発展に向き合っていく」。鉄道事業本部長を務める松藤悟(まつふじ・さとる)取締役常務執行役員は、100周年にちなんだ記念ラッピング電車を見送り、決意を新たにした。

 天神大牟田線は、西鉄の前身である九州鉄道が1924年に開業し、1939年に大牟田(福岡県大牟田市)まで結んだ。ただ、鉄道院(後の国鉄)が鹿児島線博多―久留米間を走らせており、並行路線に難色。初申請から開業まで14年を要し、福岡市の始発駅も当初は博多駅寄りを計画したが、天神への移動を余儀なくされた。

 西鉄は住宅開発により沿線人口を拡大させ、ピーク時の1992年度の輸送人員は1億2788万人に上った。国鉄民営化後のJR九州も同じく主力である鹿児島線の快速列車の停車駅を増やすなど対抗。両社のライバル関係が今の「博多」「天神」の都市街区の発展につながった面がある。

 西鉄は天神大牟田線でのノウハウを生かし、全国でマンションを展開し、北米や東南アジアでも宅地開発を手がけている。グループのバス保有台数は国内最大級で、福岡空港の運営にも参画。国際物流も堅調で、地域と海外の両輪で事業を多角化させている。

 2024年3月には地元住民の要望に応え、天神大牟田線に14年ぶりの新駅「桜並木駅」を開設。林田浩一(はやしだ・こういち)社長は「活性化の起爆剤にしたい」と話す。周辺区間5.2キロも高架化し、高架下の余剰空間の利活用策を自治体などと話し合う。

 ただ、輸送人員は減少傾向が続き、新型コロナウイルス禍の影響が残った2022年度は8483万人だった。観光電車を運行し観光需要の取り込みを狙うほか、小学生以下を対象にICカードの利用で運賃を実質無料にするキャンペーンを行うなど鉄道利用の定着を目指している。