推し活で双眼鏡のスペックは必要か

 カメラにレンズ、キャンプ、アウトドア用品などのさまざまな製品をレビューしている筆者。先日、双眼鏡メーカーさんに「双眼鏡の画質レビューなどをしないのですか?」と聞かれ、逆に「そんなに違うのですか?」とお聞きしたところ「驚くほど違うのですが、試してみるのがいちばん」と実機を貸してくれたのです。

 そんな経緯で、もっとも売れ筋の価格帯であるエントリークラスで1万円以下のケンコー「Classi-air 8X21DH」(実勢価格6000円前後)と2万円を超える中級機のケンコー「ウルトラビューEX コンパクト 8×32」(実勢価格2万6000円前後)が到着。実は、この2機種は「家電批評8月号」の「ライブ鑑賞向け双眼鏡No.1決定戦!!」という記事でエントリークラスのおすすめ2位とミドルクラスのおすすめ1位輝いたどちらも実力派です。

 実際に2つの双眼鏡をのぞいてみると、その画質の差は歴然。こんなにも違うのだと驚いたのはもちろん、この驚きを誰かと共有したく「SMILE-UP.」(旧ジャニーズ事務所)の推し活歴が四半世紀を超える知人を呼び出し、エントリークラスのケンコー「Classi-air 8X21DH」とケンコー「ウルトラビューEX コンパクト 8×32」の違い体感してもらいました。

いままで双眼鏡を使うと目が疲れると思っていた……

 知人の「STARTO ENTERTAINMENT(スタートエンターテイメント)」(旧ジャニーズ事務所)の推し活歴は、現役高校生のときからはじまりも四半世紀を超えたという猛者。いまでも娘といっしょにツアーに参加するという知人。彼女には双眼鏡を使わない理由があるそうです。

「うちわ、ペンライトに続いて、確かに双眼鏡を三種の神器というのは知っているけど、思ったよりも使わない。なんか双眼鏡を使うと目が疲れる気がするのよ……」

 そこで、どんな双眼鏡を使っていたかを聞くと、自分で用意したというものはかなり小型で数千円程度のいわゆるエントリー機。ほかの友人の双眼鏡も使ってみたことがあるけど、折りたたみ式で1000円程度で購入できるオペラグラスはあまり大きく見えないし、すごく目が疲れる気がして、あまり使わなくなった経緯があるそうです。

写真手前がケンコー「Classi-air 8X21DH」、奥がケンコー「ウルトラビューEX コンパクト 8×32」。大きさが結構違うのがわかります。

エントリーと中級機、双眼鏡の画質の違いに驚く

 そんな彼女に、試しにまずエントリー機のケンコー「Classi-air 8X21DH」を使ってもらうと「友達が持っていた、ちょっといいやつもこんな感じだったのですが、結構よく見えるけど、のぞいているうちに疲れちゃうのよね。小さいからのぞきづらい感じもして……」

 コンパクトな「Classi-air 8X21DH」は、これまでに経験した双眼鏡とあまり変わらない印象で、あまり好評とは言えませんでした。

 そこで中級機であるケンコー「ウルトラビューEX コンパクト 8×32」を試してみてもらったところ「いままで使ったことのある双眼鏡に比べるとちょっと大きいけど、圧倒的にのぞきやすくて見やすい。そして、なんかDVDからBlu-rayに変わったみたいにすっきりシャープに見える」とのこと。

 筆者も驚いたのは、このなんか見づらい、そして肉眼よりも画質が落ちる気がするのと、そのせいか目が疲れるような気がするという点でした。どうもこれら筆者たち、個人個人の気のせいではなく、双眼鏡の光学性能に起因するものだったようです。

 ちょっと大型の中級機に変えるだけで「無意識に双眼鏡はなんか嫌!」を思っていたストレスが劇的に軽減される結果となりました。

「ウルトラビューEX コンパクト 8×32」は推し活用として使えるか?

「ウルトラビューEX コンパクト 8×32」を実際に推し活のツアーに使ってもらおうと考えたのですが、時期が悪く、コンサートに行く予定はないとのことでしたが、娘さんの部活の試合などで使ってみたいということなので、数日間使ってもらって感じたメリットは以下の通りだそうです。

1.圧倒的な見やすさと没入感

2.解像感が上がったような臨場感

3.画像が明るいので長時間見ていても疲れない

4.ピント調整ダイヤルが滑らかで使いやすい

5.見た目よりも軽いので大きさはあまり気にならない

 筆者も双眼鏡はなぜか見づらいと思っていたのですが、対物レンズがの有効径が32mmある「ウルトラビューEX コンパクト 8×32」は双眼鏡の筒そのものが太いこともあるのでしょうが、とてものぞきやすいのに驚きました。また、顔に密着させやすく、安定感があるのもうれしいという指摘も。

 さらに、フルマルチコート、誘電体多層膜、フェイズコートといったコーティングが施されているためか、エントリーの双眼鏡でのぞいているときのなんか目が疲れるような気がするといったことも少なくなったと言います。明るさについても対物レンズの有効径やレンズやプリズムのコーティングが大きな影響を与えているのでしょう。

 双眼鏡の倍率自体は8倍なので、ほかの8倍の双眼鏡と変わらないはずですが、レンズがクリアで明るいせいか、より近くにいるように感じる臨場感が素晴らしいとのことです。

 光学的な性能以外では「すごくピントが合わせやすい」という話がありました。確かに、ピント調整ダイヤルはエントリークラスである「Classi-air 8X21DH」と比較しても動きが滑らかで使いやすい。そのため、舞台上で推しが激しく移動してもピントを合わせ続けるのがラクだと思うとのことでした。

「軽さ」について、エントリークラスの「Classi-air 8X21DH」などと比べると約375gと倍以上の重さがあります。この点は気にならないかと聞いたところ「ツアーを見に行くときはうちわ、ペンライト、双眼鏡といった三種の神器をツアー限定の大ぶりのトートバッグに入れるので、約375g程度の重さや大きさは気にならない」と言います。

「カラー」のバリエーションを増やしてほしい

 ケンコー「ウルトラビューEX コンパクト 8×32」を使ってもらった知人の感想は、見やすいし、使いやすいし、エントリークラスに比べると明るさも、解像感も、臨場感も段違いだと非常に好評でした。

 最後に中級機のなかでは比較的リーズナブルな「ウルトラビューEX コンパクト 8×32」でも2万5000円以上の価格であることをどう思うか聞いてみました。

 すると、「私たちが推し活にどれだけのお金を使っていると思います?旧ジャニーズは比較的リーズナブルですが、友人の行く韓流アイドルのツアーなんてペンライト(コンサート中の同調コントロールなどが行われるのでツアーごとに新しい物を買うのが基本)だけで6500円とかですよ。推しが身近に感じられて臨場感たっぷりに見ることができるなら、推し活の費用としては高くないと思います」とコメント。

 推し活用の三種の神器の1つ双眼鏡を買うときは、大きさと価格だけではなく光学性能の異なる中級機も実際にのぞいてみてから購入を検討してみてもよさそうです。

 最後に、知人は「高い双眼鏡ってカラーバリエーションがないから、推し色やメンバーカラーが選択できないのが残念。ストラップとかだけでもいいのでカラーリングが選択できるといいのに」と指摘します。

 日常生活にまで推し色やメンバーカラーを取り入れるのが常識という彼女たちにとっては重要なポイントなのでしょう。

(千秋)