価格の優等生“豆苗”栄養面でも優等生

 シャキシャキした食感と、ほのかな豆の甘みと香りが持ち味の「豆苗(とうみょう)」。年間を通して手に入りやすく、1パック100円前後というお手頃な価格も大きな魅力です。この記事では、“値上げの春”に備え、コスパ抜群の豆苗の栄養ポイントと効果的に栄養をいただくための調理のコツをご紹介します。

 そもそも「豆苗」は、どんな野菜なのでしょう。

 豆の苗と書く通り、豆類である「えんどう(豌豆)」の若い芽です(※1)。用途に応じて多彩な品種が栽培され、「豆苗」のほかに、サヤが若いうちに収穫してサヤごと食べる「さやえんどう」「絹さや」、サヤの中の豆が完熟する前の実を食べる「グリンピース」、完熟後の実を甘納豆やみつ豆などで食べる「青えんどう」「赤えんどう」があります。呼び名は異なりますが、みんな同じ「えんどう」の仲間です。なお、「スナップエンドウ」はグリンピースをサヤごと食べられるよう品種改良したものです。

(※1)えんどうや絹さやの若い蔓(つる)の先と茎葉を摘んだもの、水耕栽培して芽生えたスプラウト(新芽)などが豆苗として食べられています。

▲豆苗は、さやえんどう(写真)、グリンピースと同じ「えんどう」ファミリー!

豆苗のルーツは?

 豆苗のルーツは中国野菜で、ある程度まで育てたえんどうの芽を手で摘み取って食べていたため収穫量が限られ、高級食材として重宝されてきたそう。日本には1970年代に伝わり、植物工場やハウスで水耕栽培生産が行われるようになって供給量が安定し、家計に優しいコスパ優等生として定着しました。日本の農業技術って、改めて素晴らしいですね!

β-カロテン含有量の比較(可食部100gあたり)

豆苗の栄養価

 豆苗の注目点はコスパ面だけでありません。特筆すべきは、栄養価の高さです。可食部(食べられる部分)100gあたりのカロテンが600μg (マイクログラム)以上含まれた緑黄色野菜であり、えんどうファミリーに属している。つまり、緑黄色野菜と豆の栄養を“いいとこどり”できるのです。豆苗に含まれる栄養ポイントは次の通りです。

●β(ベータ)-カロテン
体内でビタミンAに変わることからプロビタミンと呼ばれ、体内のサビを防ぎ、がんや動脈硬化などを引き起こす活性酸素を除去する抗酸化成分として注目されています。同じ100gあたりの含有量を比較した場合、豆苗には、ほうれん草や小松菜などの葉物野菜に引けをとらない豊富なβ-カロテンが含まれています。

●ビタミンK
血液と骨に必要不可欠なビタミンで、出血を止めたり、骨や歯を丈夫にしたりする働きがあります。豆苗1パック分(130g)に270μg含まれ、成人(18歳以上)男女の1日の必要量(目安量)150μgを十分クリアできることになります(※2)。

●ビタミンC
コラーゲンの生成や鉄の吸収をサポートし、体内の酸化(老化)を防ぐ、アンチエイジングのお助けビタミン。豆苗1パック分(130g)に56mg含まれ、成人男女の1日の必要量(推奨量)100mgの半分以上をカバーできる計算に(※2)。

●葉酸
ビタミンB12と協力して赤血球をつくり貧血を予防したり、正常なDNAをつくる手助けしたり。特に、妊活中の女性は妊娠前から積極的に摂りたい水溶性ビタミンの一種。豆苗1パック分(130g)に160μg含まれ、妊娠していない成人女性の1日の必要量(推奨量)240μgの約2/3を補えることになります(※2)。

●たんぱく質
豆苗には、豆の栄養価の特長である植物性たんぱく質も多く含まれています。その含有量は、豆苗1パック分(130g)あたり4.9g。これはウインナーソーセージ1本分(20g)のたんぱく質含有量(2.3g)を上回る値です(※2)。

●ビタミンB群
ビタミンB群が豊富なのも豆類を仲間に持つ利点の一つ。豆苗には、ビタミンB1・B2・B6・ナイアシン・パントテン酸がバランスよく含まれ、糖質、たんぱく質、脂質の代謝を助け、皮膚や肌、髪の健康を保つサポートをしてくれます。

さらに、これだけ栄養バランスが整っているのに、豆苗1パック分(130g)あたりのエネルギー量は35kcalと低カロリー(※2)。ダイエット中の人にもうれしい野菜といえそうですね。

(※2)参照:豆苗の目安量=奥嶋佐知子監修『食品の栄養とカロリー事典 第3版』女子栄養出版部,2022、栄養価=『日本食品標準成分表(八訂)増補2023年』、各栄養素の必要量=『日本人の食事摂取基準(2020年版)』厚生労働省

サッと熱を加え、レア状態で。油ちょい足し+汁ごと食べるのがおすすめ!

豆苗のおすすめの食べ方

 クセのない豆苗は、和洋中の垣根を問わず活用できる万能野菜。わずかな加熱でやわらかくなり、かさが減って食べやすくなる点も嬉しいポイント。豆苗に含まれるカロテンやビタミンKは脂溶性なので、油と一緒に食べることで吸収率が高まります。また、たんぱく質とビタミンCを一緒に食べると体内でコラーゲンの生成が促されるため、肉などのたんぱく源と組み合わせることで相乗効果も期待できます。豆苗をベーコンや豚肉などで巻いて焼いたり、卵炒めにしたり。蒸し料理やパスタ料理の仕上げに加えてオリーブ油を回しかけるだけでも、栄養を効率よく摂取することができますよ。

 また、ビタミンC、葉酸、ビタミンB群は水溶性なので、おひたしや和えものに豆苗を使う際は、サッとゆでることが大切。お味噌汁やスープ、ラーメンなど汁系メニューのトッピングに加えれば彩りも良くなり、スープに溶け出した栄養もいただくことができます。

まとめ

 栽培技術の発展により、現在は通年食べられるようになった豆苗ですが、本来の旬は春。旬の時期に食べると、一際おいしく感じられそうです。続編では、豆苗の保存方法と2度楽しめる再生栽培のコツをご紹介したいと思います!

※参考文献:杉田浩一ほか監修『新版 日本食品大事典』医歯薬出版株式会社,2017、名取貴光監修『新・野菜の便利帳 健康編』高橋書店,2016、板木利隆監修『新・野菜の便利帳 おいしい編』高橋書店,2016、白島早奈英・板木利隆監修『もっとからだにおいしい野菜の便利帳』高橋書店,2009、村上農園 豆苗研究会『村上農園社員がためして納得!! 豆苗レシピ』あさ出版,2012

(野村ゆき)