ビジネスに必要なものだとわかってはいても、独自性の高いアイデアを思いつくのは難しいこと。そこで参考にしていただきたいのが、きょうご紹介する『速案——誰よりも速くアイデアを生む15の公式』(西島知宏 著、フォレスト2545新書)です。

著者は2003年に新卒で広告代理店に入社し、広告に関するさまざまな課題と向き合ってきた人物。在籍4年で独立を決意し、代理店時代を含めれば通算20年間にわたってクリエイティブの仕事を続けているのだといいます。困難も多かったようですが、それでも続けてこられたのは、あるきっかけがあったからだそう。

それは「自分だけの公式を生み出せたから」です。

多くの課題に取り組み、思考していく中で、優れたアイデアに共通する法則を見つけ、それを公式化しました。そして日々トライ&エラーを繰り返すことで、広告だけでなく、アイデアが必要なさまざまな場所で使える15の公式を作り出しました。

(「はじめに」より)

つまり本書では、それらを明らかにしているわけです。重要なポイントは、長い経験を経て行き着いたという著者の結論。具体的には、それを認めたうえで次のように主張しているのです。

「アイデアが必要となる現場では、時間をかけて多くのアイデアを生むことより、プロジェクトの指針やたたき台となる一案目を生み出すことのほうが重要性が高く存在価値がある」(「はじめに」より)

「15の公式」は実際に確認して試していただくとして、ここではアイデアを出せるようになるための“習慣”に着目した第5章「『速案力』をアップさせる習慣術」に焦点を当ててみたいと思います。

習慣術1:「好き」「嫌い」に理由をつける

「好きな映画をひとつ挙げてください」と質問されたとしたら、なんと答えるでしょうか? 続いて、「その映画が好きな理由を挙げてください」と聞かれたら?

著者の場合、好きな映画は『バック・トゥ・ザ・フューチャー』で、好きな理由は「鉄板モチーフ(スーパーカートタイムトリップ)が2つ揃っているから」なのだそう。しかし著者とは違い、「マイケル・J・フォックスが好きだから」「未来のテクノロジーが好きだから」などの理由を挙げる方もいらっしゃるでしょう。

ここで見逃すべきでないのは、著者が「好きな理由はなんでもいい」と述べている点。重要なのは、「好きな理由を説明できるようになること」だというのです。

好きと嫌いを“何となく”で片づけず、理由をつける習慣を身につけることは、アイデア出しのスキルを高める重要な訓練になります。

なぜなら、アイデアというのは「思いつき」のように考えられがちですが、実はロジカルなものだからです。

普段から思考の道筋をつける訓練をしたり、結果から理由を引き出す訓練をしておくことで、自分がいざアイデア出しをする際、課題からさまざまな方向に思考の道を広げていくことができます。(163〜164ページより)

だからこそ、「好き」「嫌い」「よい」「悪い」と感じるものに対しては必ず「なぜか」を掘り下げて考えるようにしてみるべきだというのです。(162 ページより)

習慣術2:自分が一番詳しいものをつくる

あらゆる能力に秀でた「オールラウンドプレイヤー」は理想型でしょうが、とはいえ、初めからオールラウンドなプレイヤーは存在しないもの。そして重要なのは、“誰にも負けないなにか”があってこそ、他のスキルが生きてくるということ。

私も、今はクリエイティブ・ディレクターとして、クリエイティブ・ディレクション、映像のプランニング、コピーライティング、コンテンツの編集など、通常の広告作業では分業して行うような作業を1人でこなしています。

でも、そのスキルの源はすべて「言葉」です。

言葉を磨いて磨いて「強い言葉を作る力」「一言で言い当てる力」を身につけたから、ほかのスキルを伸ばすことができたり、サブの力が生きている。

「言葉の力」があるから、迷ったとき、負けそうなときに一番強い言葉という武器を取り出し、事態を打開することができるのだと思っています。(167〜168ページより)

誰にも負けない武器があるからこそ、誰にも負けない力で事態を打開できるわけです。

ただし負けない武器は生まれながらにして持っている必要はなく、あとからいくらでも挽回できるものでもあるようです。そこで、「〇〇のことなら誰にも負けない」といえるような知識を身につけておくべき。それはいつか、突き抜けたアイデアを出そうというときに役立つからです。(165ページより)

習慣術3:質問に即答するクセをつける

アイデアは「量より質」だと考えられがちですが、じつは「質より量」だと著者は考えているそうです。

アイデアの正解は、誰にもわかりません。だからこそ量を出すしかないのです。考えた量が多ければ多いほど、そのなかに正解(質)が交ざっている可能性が高いのです。

そして、量を産むために必要なのが即答する力、即答力なのです。(170ページより)

ここでいう即答力とは、なにかの課題と対峙した際、その場でアイデアを出せるスキルのこと。それを鍛えれば、かかる時間を短くできるため、与えられた時間内でより多くのアイデアを生み出せるようになるわけです。

たとえばクライアントから企画の依頼を受けたときには、商品やサービスの詳細を聞いている最中から考え始める。そうすればアイデア出しのスイッチをオンにでき、次のプレゼンまでぶれずに多くのアイデア出しができるのです。(170ページより)

習慣術4:無視する能力を身につける

アイデアを発表すると、さまざまな人たちから多くの意見が出ます。著者はそんなとき、第三者的に判断をするようにしているのだそうです。

クライアントの意見が正しいと思えばそのとおりにするけれども、違うと思ったことは無視するというのです。横柄に突っぱねるという意味ではなく、いかに自分の意見がクライアントのメリットになるか、その正当性を論理的に説明して理解を得るということ。

「自分が間違っていたらどうしよう」「正直に話したら仕事から外されるのではないか」などと人の目を気にしていたのでは、よいアイデアは生まれません。

アイデアを発想する際には、「人のいうことを無視できる能力を身につける」「無視する理由を論理的に説明できる」「自分がよいと信じるものは、なにがあっても守り抜く」という3点を大切にするべきだというのです。(173ページより)

習慣術5:新しいことに貪欲でいる

たとえば男性にとって、女子高生をターゲットにした新サービスのアイデアを考えるのは簡単なことではないはず。しかもまったく違う世界に飛び込むのは、勇気がいることでもあります。けれど、まったく知らないことは、自分に「新しいアイデアの種」を提供してくれるものでもあると著者は主張しています。

新しいこと、知らないことに貪欲でいることは、アイデア出しだけに限らず、さまざまな局面でプラスの効果をもたらしてくれるものでもあるでしょう。そういう意味で、つねに貪欲に、新しいこと、知らないことにチャレンジする習慣を身につけることは大切なのです。(176ページより)


本書に示された具体的なアイデアの数々は、きっと役に立ってくれるはず。そういう意味では一般的な新書以上に実用性が高い一冊であるといえます。紹介されている公式を参考にしつつ、そこから自分だけのオリジナリティを生み出していくために、参考にしてみてはいかがでしょうか?

>>Kindle unlimited、2万冊以上が楽しめる読み放題を体験!

https://www.lifehacker.jp/regular/regular_book_to_read/ 「毎日書評」をもっと読む

https://voicy.jp/channel/2066 「毎日書評」をVoicyで聞く

Source: フォレスト2545新書