最近は、キュレーションの光る面白い企画展がたくさん開催されています。『リンネル』本誌のアート&イベント連載ページを担当しているライター赤木真弓さんおすすめの、見逃したくない注目のアート&イベントを厳選してご紹介します。
1. モダン・タイムス・イン・パリ 1925ー機械時代のアートとデザイン
■機械と人間との関係をアートやデザインを通して考える
パリをはじめとする欧米の都市が「機械時代(マシン・エイジ)」と呼ばれる、華やかでダイナミックな時代を迎えた1920年代。
当時のヨーロッパやアメリカ、日本における機械と人間との関係をめぐる様相を紹介する「モダン・タイムス・イン・パリ 1925ー機械時代のアートとデザイン」が開催中です。
第一次世界大戦からの復興によって工業化が進むと、自動車や航空機が機械時代の象徴に。 芸術家やデザイナーも機械の進化が理想的な時代をもたらすと信じ、機械をモチーフにした作品を制作しました。
特に1925年には、パリ現代産業装飾芸術国際博覧会(アール・デコ博)が開催され、価値観の分岐点に。工業生産品と調和する、幾何学的な装飾スタイル「アール・デコ」の流行が絶頂を迎え、ガラス工芸作家のルネ・ラリックやグラフィックデザイナーのアドルフ・ムーロン・カッサンドルなどをはじめ、未来を感じさせるデザインは建築や家具、服飾の分野にまで広がりました。
本展ではフェルナン・レジェやコンスタティン・ブランクーシなど、機械をデザインに取り入れたアーティストから、逆に近代化に抵抗する芸術運動「シュルレアリスム」を代表するデ・キリコやマン・レイ、そして現代において機械文明やロボット、デジタル時代の視覚性をテーマに制作を行うアーティストまで、約170点の作品を紹介。
1920〜1930年代のパリを中心に、機械に対する賛美と反発が同時に現れた100年前の文化の様相を振り返ることで、現代における、機械と人間とのさまざまな関係性を考えさせられます。
『モダン・タイムス・イン・パリ 1925ー機械時代のアートとデザイン』
開催中〜5月19日(日)/ポーラ美術館 展示室1、2/9:00〜17:00 ※入館は閉館30分前まで/会期中無休/一般¥1,800/https://www.polamuseum.or.jp
2. 小金沢健人×佐野繁次郎 ドローイング/シネマ
■二人の作家の作品を、ドローイングの視点から読む
絵画から映像、立体まで多様な展開を見せ、国際的に活躍する小金沢健人さんと、独特の手描き文字による装幀や挿画の仕事が、油彩画と並んで愛されている佐野繁次郎さんの仕事を紹介。
線を引いてイメージを描き出すドローイングは、カット/イラストレーションとどう異なるのか? イメージの連なりがもたらす動きの感覚とは?
小金沢さんが美術館所蔵の佐野繁次郎の作品に目を通し、自ら数百点をセレクト。佐野さんのカット原画をもとに、時間と空間、平面と立体へと展開する、新作のインスタレーションを作り出します。
美術家の手と目が生み出す、色や線、動きに着目し、平面表現の境界を探求します。
『小金沢健人×佐野繁次郎 ドローイング/シネマ』
開催中〜5月6日(月)/神奈川県立近代美術館 鎌倉別館/9:30〜17:00 ※入館は閉館30分前まで/月曜休館(ただし4月29日〈月・祝〉、5月6日〈月・休〉をのぞく)/一般¥700/http://www.moma.pref.kanagawa.jp/annex
3. ここは未来のアーティストたちが眠る部屋となりえてきたか?──国立西洋美術館65年目の自問|現代美術家たちへの問いかけ
■美術館だからこそできる、アートの力を問い直す
国内外で活躍する21組の現代アーティストたちの作品が集結する、国立西洋美術館史上初の現代美術の展覧会。
20世紀半ばまでの西洋美術作品を所蔵、公開してきた国立西洋美術館。モネやセザンヌ、ポロックなどのコレクションから、アーティストたちが独自の視点で選んだ作品約70点も展示します。
美術館の役割が大きく見直され、さまざまな世界の問題に直面する今、美術館ができることとは?
国立西洋美術館の所蔵作品にインスピレーションを得た新作や、美術館という場所の意義を問い直す作品など、現代、そして未来のアートの様相を知るうえでも必見の、見応えのある展覧会です。
『ここは未来のアーティストたちが眠る部屋となりえてきたか?──国立西洋美術館65年目の自問|現代美術家たちへの問いかけ』
開催中〜5月12日(日)/国立西洋美術館 企画展示室/9:30〜17:30(金•土曜および4月28日〈日〉、29日〈月・祝〉、5月5日〈日・祝〉、6日〈月・休〉は20:00まで) ※入館は閉館30分前まで/月曜、5月7日(火)休館(ただし4月29日〈月・祝〉、4月30日(火)、5月6日〈月・休〉は開館)/一般¥2,000/https://www.nmwa.go.jp/jp/exhibitions/2023revisiting.html
text & edit:Mayumi Akagi
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