吉高由里子主演で、日本最古の女流長編小説『源氏物語』の作者・紫式部(ドラマでの名前はまひろ)の人生を描く大河ドラマ『光る君へ』(NHK)。1月7日放送の第1回『約束の月』では、平安貴族たちの倫理観もなにもない出世競争の一端が描かれると同時に、思わぬ強烈キャラクターの登場にもSNSが湧いた。(以下、ネタバレあり)。

■ 第1回「約束の月」

下級貴族・藤原為時(岸谷五朗)の娘・まひろ(落井実結子)が少女時代を過ごしたのは、円融帝(坂東巳之助)の御代。帝に娘を嫁がせ、生まれた王子の外戚として政務をおこなうのが出世の王道だった時代、藤原兼家(段田安則)も娘・詮子(吉田羊)を円融帝に入内させた。さらに兼家は、嫡男・道隆(井浦新)を汚れなき者とし、そのために次男・道兼(玉置玲央)を兄の代わりに泥をかぶる存在にしようと目論んでいた。

しかし自分が家族からないがしろにされているように感じる道兼は、そのはけ口として弟の三郎(のちの道長/木村皐誠)などの弱者に暴力を振るうようになる。そして先に入内した藤原遵子(中村静香)が子どもを産むことがないよう、兼家はひそかに陰陽師・安倍晴明(ユースケ・サンタマリア)に「お子ができぬようにいたせ」と依頼するのだった・・・。

■ 摂関政治のえげつなさ、勝ち抜く手段

自分の娘が産んだ王子を即位させ、彼が幼い間は「摂政」として、成長したら「関白」として政をおこなう・・・、いわゆる「摂関政治」の時代が舞台となる『光る君へ』。そのため自分の娘が身ごもる前に、ほかの后が男子を産んだら、途端に出世競争が圧倒的に不利になるという、よく考えると相当特殊な時代だった。その出世レースを勝ち抜く手段のえげつなさが、はなから提示される第1回となった。

まずは自分が男子を生むか生まないかが、家族の出世に直結するというプレッシャーにさいなまれるシーン。しかも宮中に入れば入ったで、周囲の人々の噂話の格好の種になってしまうという后たちの針のむしろぶりを、三郎の姉・詮子を通じて描写。とくに無責任な憶測や悪意がネチネチとささやかれる所の連続は、下手な戦闘シーンよりもよっぽどゾッとするし、心身ともにダメージがあってもおかしくないと思える構造だった。

SNSでも「ほんまえげつない。姉妹や娘は家が権力と栄光を手に入れ、維持するための道具」「一族の女性については皇子を産むか否かだけが話題の男性陣に囲まれていたら、にこやか&おだやか弟と仲良くなるのわかるよ姉上」「遵子と詮子を巡るえげつない女房たちのコソコソ噂話、このへんすごく宮中って感じで笑顔になる」「彼女たちも下衆な好奇心のみで喋っていたわけではなく、あれが仕事の一部なんだろうな」と、この時代の「戦い」の姿にワクワクする声が聞かれた。

しかもその出世の手段として、兼家が安倍晴明に「相手に子どもができないように」と、おそらくは呪詛を依頼する場面には「ギャー! 呪いをかけろってことか!」「この時代呪詛は暗殺とほぼ同義」と戦々恐々とする声と同時に、それをしれっと引き受ける晴明にも「晴明、やるんかい」「めっちゃ普通に公務員キャラでたぎる」「褒美は望みのままと言われたら引き受ける晴明、政治がバリバリできる曲者で大好き」と、妙に納得の声が上がっていた。

■ 「平安時代の倫理観怖え」最強キャラ

しかし今回もっとも「平安時代の倫理観怖えええええ」と視聴者を震撼させたのが、兼家の次男で三郎の兄・藤原道兼の存在だろう。「身分の低き者を殴って、私の心が治ればそれでよろしい」という鬼畜ぶりと、カッとなったら主人公の母さえ迷いなく殺す狂犬ぶり。演じる玉置玲央の鬼気迫る表情もあって、間違いなく第1回の最強インパクトキャラとなった。

SNSでも、「早々に修羅道な道兼おにぃが全部持っていった」「こいつなりにコンプレックス抱えてることに共感できる話が来んのかな〜と思ってたら、三段飛ばしでそういうの許されない方向に飛んでいって爆笑してしまった」「初っ端からなんかもう色んな意味で目が離せないのがよもや彼だとは」など、ドン引きと喝采が混じったような声が寄せられた。

この目に余るヒールぶり、三郎をいい人に見せるための過剰なキャラ付けか? と思われそうな道兼だが、このあとも結構いろいろ「おいちょっとお前」な行動が出てくるので、最後までその生き様には(鬼畜上等な方限定だけど)楽しませてもらえそうだ。また演じている玉置は、自身のX(ツイッター)でドラマのリアタイ実況をして「俺が代わりに謝る、ごめん三郎」などの心温まる書き込みをしているので、ドラマと併せてチェックしてみよう。

『光る君へ』はNHK総合では日曜・夜8時から、NHKBSでは夕方6時からスタート、BSP4Kは昼12時15分に先行放送。第2回『めぐりあい』では、成人を迎えたまひろが文才をはぐくんでいく姿と、藤原道長の父・兼家が急速に勢力を広げていく様が描かれる。

文/吉永美和子