リスクが大きいカロリー制限

ロカボなら満腹まで食べても大丈夫と聞くと、カロリーオーバーが心配という人もいるでしょう。糖尿病治療のための食事療法や肥満解消のための食事指導でカロリー制限食が推奨されがちなこともあり、心配になるのかもしれません。世界的に糖尿病治療にカロリー制限が推奨されたのは、肥満の改善のためでした。

しかし、日本人の糖尿病患者の半数以上は肥満ではありませんので、世界のガイドラインから考えれば、そもそもカロリー制限は必要ないのです。肥満は解消するに越したことはありませんが、カロリー制限と運動療法で心臓病の予防を図った臨床試験では、心臓病の発症率を抑制できませんでした。10しかも、カロリー制限をした結果、骨密度の低下を招き、骨折リスクが高まっていたのです。

さらに、カロリー制限は計算が複雑な上に、計算値が実際のカロリー摂取とは無関係の数値なのです。自分の感覚を頼りに腹八分を維持することになれば、つらいだけできちんとした制限はできず、結局は挫折します。一方、糖質を控え、脂質とタンパク質をしっかり摂れば複数の消化管ホルモンの分泌が高まり、満腹中枢を刺激します。胃から分泌され空腹感をもたらすグレリンの分泌を長く抑制することもわかっています。

【書誌情報】
『眠れなくなるほど面白い 図解 炭水化物の話』
著:山田悟