楽天モバイルは、2026年に衛星を使った通信サービスを提供すると発表しました。競合のKDDIとStarlinkのサービスが当初SMSだけであるのに対し、音声やデータなども提供する見込みとのことです。この発表会見でAST SpaceMobileのアヴェランCEOに直接質問する機会を得たのは、ケータイ/スマートフォンジャーナリストの石川温さん。今回のメルマガ『石川温の「スマホ業界新聞」』では、衛星から吹く電波をどのように制御するのかという質問への回答を紹介。目標とする面積カバー率100%が本当に可能なのかを探っています。

楽天モバイルが2026年に衛星とスマホの直接通信を開始──国、セルごとで周波数を切り替え、地上局との干渉を防ぐ

2024年2月16日、楽天モバイルはAST SpaceMobileとともに戦略説明会を開催。2026年から日本で衛星を使った通信サービスを提供すると発表した。これにより、日本国土において、面積カバー率100%を実現するという(目標)。

Starlinkはサービス開始当初、SMSのみの対応だが、AST SpaceMobileではサービス開始当初からSMSだけでなく、音声やデータ通信などすべてのサービスを提供する見込みだ。

戦略説明会で個人的に成果があったのが、アーベル・アヴェランCEOに直接、質問できたことだ。楽天モバイルがAST SpaceMobileの名前を挙げたときから「地上に向けた電波をどのように制御するのか」が疑問だった。低軌道衛星は90分間で地球を1周する。その間、単独の電波を吹き続けるのか、それともエリアによって周波数帯を変えていくのかが、興味深かったのだ。

そんな質問をぶつけたところ、アーベル・アヴェランCEOは「衛星は動きながら、通信事業者ごとに周波数を切り替えていく。国ごとだけでなくセルごとで切り替えていく。

通信事業者は、どの場所でASTの衛星による通信を有効にするか、操作することが可能。地上に鉄塔の基地局を設置するのが技術的に困難であったり、コスト面で見合わないといったところは衛星で対応するということが可能になる」と語る。

この「国ごとだけでなくセルごとで、衛星の電波を使うかオンオフできる」というのに、かなり驚いた。確かに、セルごとというか、細かい範囲で衛星からの電波を飛ばさないようにすれば、地上局との干渉は防ぐことは可能だ。ただ、説明会が終わった直後、知り合いのライター陣の間で「そんなこと、本当にできるのかな?」と誰もが疑問に思っていたのが印象的であった。

地上との干渉を防ぎながら、サービスを提供したいのであれば、地上局では使っていない周波数帯を使うというのが最も現実的だろう。ソフトバンクはHAPSを日本で実現する場合、まもなく停波する予定のケータイで使っている2GHz帯を流用したいようだ。

ちなみに楽天モバイルには東名阪以外で利用できる1.7GHz帯というのが存在する。この1.7GHz帯をAST SpaceMobileに用い、東名阪以外のエリアで有効になるような設定を施せば、さほど難しい運用をすることなく、衛星によるサービスが実現できるのではないだろうか。

ただ、東名阪は衛星を使わないとなると、面積カバー率100%というのは不可能になってくる。いずれにしても、AST SpaceMobileがどのように日本で干渉を防いでサービスを提供するのか、技術的なアプローチを今後、明らかにしてくれることを期待したい。

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