日本のみならず、海外にも進出し安定した人気を誇り続けている100円ショップのダイソー。その創業者である矢野博丈さんが先日80歳で亡くなりました。今回のメルマガ『致知出版社の「人間力メルマガ」』では、矢野さんの追悼記事として、彼のメッセージを紹介しています。

苦労は神様からのエール。追悼ダイソー創業者・矢野博丈さん

100円ショップの先駆けとして知られ、現在国内外に約5,200店舗、売上高は5,800億円を超える業界最大手「ダイソー」。同社をゼロから立ち上げ、今日の繁栄へと導いてきた矢野博丈さんが2024年2月12日にお亡くなりになりました。80歳でした。

弊誌『致知』では何度も対談をしていただくなど、多大なるご恩顧を賜りました。生前のご厚情に感謝を表し、最後の登場となった2024年1月号の連載「二十代をどう生きるか」より、後から来る世代への熱いメッセージをお届けします。

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<矢野>
私の20代は、恵まれたいという一心で必死にもがき続けた10年間でした。

運命の女神を恨み続ける日々でしたが、27歳の頃に参列したある結婚式で京都のお坊さんがこんな話をしていました。「好むと好まざるとに拘らず、これからお二人には艱難辛苦が押し寄せてきます。それを乗り越えたら、きっといい人生が送れるでしょう。人生に無駄なことは一つもありません」と。

その言葉を聞いた時、「何を馬鹿言うんだ。俺の人生無駄しかないじゃないか」と腹を立てましたが、帰りの電車でふと考えてみると、私は人一倍艱難辛苦を与えられたではないか。もしかすると運命の女神に見限られているのではなく、運がいいのかもしれない。そう思うようになってから、心の霧が晴れ始め、少しずついいことが起こるようになりました。

以上の話を踏まえ、20代を生きる方々にお伝えしたいのは、苦労ほど有り難い恵みはない、ということです。

幾多の苦労に見舞われるということは、もっと徳を積み、幸せになりなさいという神様からのエールなのです。困難に揉まれ、人間が鍛えられた先に、回り回って徳や運が味方につき、自ずと運命は拓けていくのだと実感します。

一方、恵まれることは不幸が訪れる序曲です。

戦後日本は高度経済成長で発展したものの、現在は経済成長率を2%に乗せることさえ容易ではありません。現状に甘んじた瞬間、国も会社も人も衰退の一途を辿ります。

ダイソーでは商品開発と仕入れに注力し、いまでは毎月1,200を超える新商品を手掛けるなど、お客さんを飽きさせないように絶えず工夫を凝らしてきました。常に危機感を持ち続けることが新たな知恵や挑戦に繋がり、思いがけない未来を形づくる糧になるのです。

恵まれない幸せ、恵まれる不幸せ──。これが、私の経験から伝えたい教訓です。

いま20代を生きる方々にはこの言葉を理解いただき、感謝・勤勉・誠実な姿勢であり続けてほしいと願っています。

(※本記事は月刊『致知』2024年1月号連載「二十代をどう生きるか」より一部抜粋・編集したものです)

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