欧州委員会は、米アップルが自社の音楽配信サービス「Apple Music」を不当に優遇しているとして、新たに制裁金を課す可能性があると噂されています。今回のメルマガ『石川温の「スマホ業界新聞」』で、ケータイ/スマートフォンジャーナリストの石川温さんは、この噂を検証。スウェーデンに拠点を置く音楽配信最大手の「Spotify」については、アップルの仕組みにほぼタダ乗り状態で、同社や欧州委員会の訴えは「イチャモン」に近いものがあると指摘しています。

アップルはSpotifyに不当な扱いをしているのか──欧州委員会がアップルに多額の制裁金を課す可能性

「サイドローディング」に続き、欧州委員会がアップルに対して「イチャモン」をつけてくるのではないか、と複数のメディアが報じている。

AppStoreにおいて、音楽配信に関連する自社サービスを優遇し、他社サービスとの公平な競争を阻害しているのではないかと、アップルに対して多額の制裁金を課すのではないかとしているのだ。

特にAppStoreに対しては、スウェーデンに拠点がある音楽配信最大手「Spotify」が2013年ごろから欧州委員会を通して複数回、係争を行っている。特にアップルの音楽配信サービス「Apple Music」を優位にしようと、アップルが開発者に対して手数料を徴収しているのは「差別的な税金だ」という主張だ。

ただ、実際のところ、Spotifyが多額の「差別的な税金」を支払っているかと言えば、そんなことはない。SpotifyはAppStore内では「リーダーアプリ」という位置づけとなっており、Amazonなどの書籍、新聞、音楽や動画コンテンツビューワーアプリと同様に、決済する際にはAppStoreの仕組みを使わず、一度、アプリからSpotifyのウェブサイトに移動して有料プランに加入し、再度、アプリでログインしてサービスを利用する流れとなる。

そもそも、Spotifyは導入時は無料アプリであるため、アップルに対して手数料の支払いは発生しないし、サービス加入時もSpotifyによる自前の決済手段を利用するため、アップルへの手数料の支払いはない。

アップルでは開発者に対して、毎年、Developer Programにおける年間登録料の支払いを求めている。個人の場合は99ドル、100名以上の従業員を抱える組織は299ドルだ。

Spotifyは299ドルを支払うだけで、AppStoreが提供するあらゆるAPIを利用でき、iPhoneだけでなくiPadやMac、AppleTV、Apple Watchといった製品にアプローチできるだけでなく、CarPlayにつなぐための機能も提供されている。

iOS17.4以降では年間100万ダウンロードを超える開発者は「コアテクノロジー料」として毎回0.5ユーロを支払う仕組みができた。しかし、Spotifyの場合はリーダーアプリであるため、コアテクノロジー料を支払う義務はない。

実際に、Spotifyのシェアは30%を超えているのに対して、Apple Musicは8%ほどしかない。アップルとすればSpotifyに対して「AppStoreにほぼタダ乗り状態で大儲けしやがって。そのくせ、欧州委員会に訴えるとは何事だ」と内心、思っているかも知れない。

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image by:Taner Muhlis Karaguzel/Shutterstock.com

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