前回の記事でもお届けしたように、韓国では医師たちのストライキが起きており、医療体制にも混乱が起きています。そんななか体調を崩した人たちはどこへいけばいいのか? 無料メルマガ『キムチパワー』の著者で韓国在住歴30年を超え教育関係の仕事に従事している日本人著者が、その不安を払拭するニュースを紹介しています。

軍が医療機関の受け皿に。韓国「医療大乱」

毎日お伝えしているように、今韓国は研修医らのストライキのため医療大乱状態となっている。しかしこの危機的状況の中で活躍しているのが軍だ。

「『お父さんがこのまま亡くなるのか』と心配しながら待っている状況でしたが、軍病院で受け入れてくれて本当にありがとうございます」。

全国の大学病院専攻医(インターン・レジデントなど日本では研修医)らの集団勤務離脱が始まった20日、京畿道城南市(キョンギド・ソンナムシ)の国軍首都病院応急医療センターで、イム某さん(50・女)は「news1」取材陣との取材に対し、「他の病院に電話してもすべて受け入れてくれなかった」とし、このように話した。

京畿道南楊州(キョンギド・ナムヤンジュ)に住むイムさんの父親(83)は7日前に転倒し、股関節骨折を負った。父親のイム氏が移送された九里(クリ)の2次病院側は、彼が年上である上、喉頭癌、心筋梗塞などの基礎疾患があり3次病院で手術を受けなければならないと診断した。(3次病院とは医療機関でもっともハイレベルの病院)

娘のイムさんは、父親の手術のためにソウル大学・漢陽(ハニャン)大学・慶熙(キョンヒ)大学などの大学病院に問い合わせてみたが、「救急室に専攻医(=研修医)がいないので、受け入れることができない」という答えだけが返ってきた。イムさんは療養病院まで調べたが、手術が終わった後の患者のみ受けることができるという返事だった。

政府の医学部入学定員拡大に反対し、全国主要100の修練病院専攻医の半分を超える6415人が辞職届を提出し、このうち1630人がこの日勤務地を離脱した。

イムさんは「ちょうど今朝、テレビのニュースを見たんですが、軍病院が患者を受け入れてくれるかもしれないというのを聞いて(首都病院に)電話した」とし「首都病院では『調べてみる』と言ったが、すぐに『来い』と電話をくれた」と説明した。首都病院とは軍病院の一つだ。

イムさんはまた、「その前に電話した大学病院では、父親が高齢で基礎疾患があり、手術が難しいと言っていたが、ここでは到着するやいなや『絶対に手術する』と言ってくれたので、安心感がわっとわき出て涙が出るほど感謝している」と述べた。

父親のイム氏の妻ソ・ジェヒ氏(78)は「ストライキが終わるまでなにもしないでただじっとしていなければならないのかと暗澹たる気持ちだった」とし「国で軍病院を開くように言ったことがどれほど良いか分からない」と心情を伝えた。

首都病院の救急医療センターは同日午後2時まで、2人の民間人患者を受けいれた。彼らは皆、大学病院の救急室に行けなかった患者だった。首都病院の救急医療センターには、今年に入って前日まで約30人の民間人患者を受けいれている。

平時には2日に1人の割合で民間人患者が来るかどうかだが、これからはここを訪れる民間人患者がさらに多くなると予想される。首都病院の救急医療センターは、民間人患者の診療のため、計20個の病床のうち6個を別途に分離しておいた。民間人患者が多い場合には隔離室など他の病床も最大限活用する予定だ。

ソク・ウン首都病院長は「私たちの本来の任務は軍人の治療だが、軍病院はいつでも国民を助ける準備ができている」とし「外来診療の民間人開放も必要ならば指針に従って開くことができるように準備された状態」と明らかにした。

軍当局は、医療空白事態に対応するため、同日から首都病院など全国12の軍病院の救急室を開放した。軍病院の救急室は平時にも一般人が利用できるが、首都病院と大田病院を除けば入口に衛兵所に相当する施設があり民間人の進入には多少の不便がある。

これを受け、軍当局は民間人の円滑な出入りのため車から降りずに身分証を確認するなど出入り手続きを簡素化し案内要員を追加で運営している。受付および義務記録発給のための電算システムも運営中だ。

ソン・サンヒョン首都病院胸部外科長は「12の軍病院では民間人を対象に応急診療ができるように準備しており、民間人が診療を受ける時に行政手続きが円滑に行われるように準備している」とし「困難な状況を克服するために軍が役割を果たせるよう最善を尽くす」と述べた。

軍当局は今後、医療空白の状況が悪化する場合、軍将兵の医療支援態勢の制限がない範囲内で民間外来患者の診療、軍医官の派遣案などを検討していくことにした。

韓国の場合は、医者として軍に服務するケースもあり、こうした医師らは軍医官といっている。軍がこうした緊急事態における受け皿になれるので、尊い命が研修医らのデモのために無数に犠牲になるようなケースは生じないのかもしれない。(news1参照)

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