韓国と米国の間にある貿易上の多くの問題。それを無料メルマガ『キムチパワー』の著者で韓国在住歴30年を超え教育関係の仕事に従事している日本人著者は、トランプ政府で貿易代表部の代表を務めたライトハイザー氏の著書から引用しながら詳しく説明しています。

米、アメリカファーストは変わらず

「米国経済は途方もなく大きい。また、大半は国内生産が可能だ。貿易が必要だが、他の国に比べてはるかに必要ではない。この国のリーダーシップは過去数十年間、米国人を挫折させた貿易政策を推進してむちゃくちゃな結果を生み、トランプ政府が入ってから誤った道を行っていた航空母艦の方向を変えたのだ。」

11月の米大統領選挙で民主党のバイデン大統領、共和党のドナルド・トランプ前大統領間の「リターンマッチ」が確定した中で、次の政府の通商政策を計る教科書として通じる本がある。トランプ政府で貿易代表部(USTR)代表を務めたロバート・ライトハイザー(Lighthizer・77)が昨年6月に出した『無料貿易はない(No Trade is Free)』だ。

トランプの「経済師匠」と呼ばれるライトハイザーは、トランプ第2期政府が実現する場合、10%普遍的関税、対中国60%関税のようにトランプが投げつけたごついアイデアを実際の政策で作り出す人物に挙げられる。トランプ氏はこの本を大量に購入して選挙キャンプに送り、民主党議員でさえ周辺に一度読んでみることを勧めているという。

ライトハイザーはこの本で文在寅政府初期の韓米FTA(自由貿易協定)再交渉過程、韓国に対する米国の貿易赤字などについて手加減なく叙述しており、われわれ韓国の立場ではトランプ2期が開かれる場合、韓国との貿易・通商政策を推し量ってみる良い参考書でもある。

ライトハイザーは「韓国は米国の重要な同盟」とし「1960年代の経済規模が40億ドルに過ぎなかった国の国内総生産(GDP)が今はカナダ水準になったが、これはかなり驚くべき成就」と話した。

韓国に対する肯定的な印象批評はここまでだ。彼は同盟国の韓国に対して冷ややかな表現をした。ライトハイザーは「我々は韓国の防衛費として数十億ドルを分担するが、韓国は米国に対する輸出障壁を維持し、莫大な黒字を出しているという事実のため、しばしばトランプ氏を怒らせた」と話した。

ライトハイザーは韓米FTAに対しても否定的な認識を示している。2012年3月に発効した同協定について、「バラク・オバマ大統領は選挙キャンペーンの時、弱点が多いとしてこれを批判したが、いざ政権を握ってからは何もしなかった」とし、「(FTA以後)韓国は米国車を非常に少なく追加輸入した反面、米国に対する輸出は画期的に増やした」と話した。

2017年7月から14か月もかかった再交渉過程についても「韓国側が貿易不均衡に対する米国の憂慮は重要ではないと断言し、私たちのチームがほとんど交渉場を出てしまうところだった」「トランプが関税賦課のような追加的レバレッジで圧迫してから、韓国側が真剣に交渉テーブルに出て議論に速度がついた」と話した。続けて「FTA再交渉で韓国との貿易において途方もない変化があった」として「時間を引いたとしても結局譲歩せざるを得なかっただろう。文在寅大統領と彼のチームが早くも交渉を終えたのは賢いことだ」と話した。

このような認識は、韓国だけでなく、日本や欧州など、米国の友好国にも同様に適用された。「私たちと近い同盟とパートナー国家が米国を不公正に待遇し、このようなことが繰り返されてはならない」というのが本全体を貫く問題意識だ。ライトハイザーは「米国に対する最恵国待遇(MFN)は拒否し、韓国市場には自由に接近するのは同盟国だとしてもこれ以上だめだ」と話した。

続いて「この30年間、外国に180兆ドルを渡した米国がこれからは貿易均衡を追求しなければならない」とし、貿易法301条(交易相手国の不公正行為で米国貿易に制約が生じる場合、報復できるよう許容)のような「政策兵器」を拘らずに使用することを注文する。ライトハイザーは「経済的効率性、低い価格、企業の利益全てが重要だが、一般人の生活を改善する問題に比べれば副次的」とし「米国がこれ以上生産者ではなく消費者の役割だけをすることはできない」と話した。ライトハイザーはバイデンが治績として掲げる半導体支援法(CHIPs Act)に対して「良いスタートであり、バイデンもやはりトランプと私が描いた政策に従った」として「中国、ひいては貿易に関する私たちの見解がもうこの国の主流になった」と話した。11月の大統領選挙でバイデン・トランプの2人のうち、誰が勝利してもいわゆる「アメリカファースト」を根幹とする米国貿易政策の方向性が当分変わることはないという話だ。

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