35歳、商社の係長……ひろしはエリートコースまっしぐら?

『クレヨンしんちゃん』でしんちゃんのパパであり、「足が臭い」「だらしない」だけの一般サラリーマンというイメージで描かれている、野原ひろし。家族からいわれるだけでなく、公式サイトにも「安月給」と書かれてしまうなど、やや悲しい三枚目のお父さんです。しかし作中のさまざまなエピソードから、「実はエリートなのではないか?」とネット上でウワサが絶えないキャラとしても有名です。いったいなぜなのでしょうか?

 ひろしの学歴に関しては描写がないので、「エリート」の定義は不明です。ただ「安月給」であるはずのひろしの給料が意外と高かったため、エリートである疑惑が持ち上がったようです。過去に放送されたアニメで判明した範囲だと、みさえが銀行から引き出した金額が参考になりそうです。

 あるエピソードでみさえが通帳を確認する様子が映し出され、そこには「30万716円」とあります。30万円を引き出した差引残高が716円です。みさえはお金を引き出す時には「月に一度の給料日のこの瞬間、たまらないわ〜」と言っているので、給料は端数を除きすべてを引き出したように見えます。手取りが30万円なら額面はざっくり40万円程度、ボーナスを計算に入れると年収は600万円くらいになるでしょうか。

『クレヨンしんちゃん』の連載が開始されたのは1990年です。厚生労働省が発表した当時の平均年収が約460万円だったことを考えると、ひろしは安月給どころか高給取りであったことが分かります。加えてひろしの職場での役職も、35歳という年齢を踏まえるとかなりのハイスペック。商社の本社勤務で第一営業部係長とくれば、もはや文句のつけどころがないエリートです。

 プライベートでもふたりの子供を育てながら、春日部の一戸建てを購入して、車も所有しています。また、同作品には家族旅行に行くシーンが何度も描かれています。ひろしは毎晩お酒を飲み、趣味のゴルフも楽しんでいます。みさえが専業主婦であることを考えると、やはりそれなりの成功者なのでは、と思えてしまいます。

●みさえがエリートと認めない理由はいったい何?

 ではなぜ、ひろしはみさえに「安月給」と言われてしまうのでしょうか? これは前述の通り、ひろしの「使いすぎ」が原因かもしれません。手取り30万円はたしかに当時の平均年収から比べれば高いですが、かといって遊び放題の贅沢ができる給料かといわれれば違います。子供と家と車を抱え、晩酌も欠かさず趣味のゴルフにいそしみ……という生活は、身の丈にあった使い方ではなかったのかもしれません。

 ただ、ひろしは過去に、「ひと握りのエリートの後ろには、何千何万というオレのような人間がいるんだ!」と発言していました。視聴者から見るとエリートのようですが、そもそもひろし自身は自分をそうだと意識していなかった様子がうかがえます。

 ちょっと情けない、妻の尻に敷かれがちな父ちゃん。しかしガス爆発で一度家がなくなってしまっても、家族に安月給と言われ続けても、頑張って家族を養い続ける姿はまぎれもなく「父の」エリートです。学歴や手取りなどでは測り切れない、理想のお父さんの姿といえるのではないでしょうか。