王道ファンタジーに見えて他にない設定が魅力

 2024年冬のアニメも、幅広いジャンルの作品が放送されています。そのなかでもRPGでよく出てくるような「ファンタジー世界」という設定は共通しているのに、全体のトーンや視聴後の余韻が全く違う作品が注目を集めています。

●『俺だけレベルアップな件』

 1月6日から放送されている『俺だけレベルアップな件』の原作は、マンガ・ノベルサービス「ピッコマ」にて6.5億PVを叩き出した王道ファンタジー作品です。同作は異次元と現世界を結ぶ通路「ゲート」が突然発生してから十数年後の世界が舞台で、その影響からか「ハンター」と呼ばれる超人的な力に覚醒した人間たちが出現しています。

 主人公の水篠旬(CV:坂泰斗)もハンターとして覚醒しますが、その力は「人類最弱兵器」と呼ばれるほどで、低ランクのハンターとして生活をしています。しかし、ある日参加したダンジョンで瀕死の重傷を負った水篠の前に、謎のクエストウインドウが出現し、彼が死の間際でクエストを受けると決断すると、自分だけが「レベルアップ」するようになりました。

 水篠がクエストをこなすとステータスがアップしたり、報酬でアイテムがもらえたりと、まるでゲームのようにだんだんと強くなっていく水篠の姿に爽快感を覚える作品です。アニメ好きはもちろん、ゲームファンの心にも響く作品ではないでしょうか。

 また、水篠は人類最弱兵器と言われながらも、病気で入院していて目を覚まさない母親の治療費を稼ぐためにハンターをしている好青年です。そんな水篠が健気にクエストをこなし、レベルアップしていく姿に胸を打たれる視聴者も多いようです。

『俺だけレベルアップな件』はTOKYO MX、BS11ほかで放送中、Amazon Prime Video、U-NEXT、ABEMAなどの各サイトでも順次配信されています。

●『ダンジョン飯』

 1月4日より放送されている『ダンジョン飯』には、ドラゴンやスライムなどファンタジーの世界観には欠かせない魔物が登場するものの、物語の核となるのは「飯」で、「飯テロ」描写が盛りだくさんです。

 同作は、主人公のライオス(CV:熊谷健太郎)一行が、地下深くに広がるダンジョンを探索中に食料を失ってしまい、空腹の状態のままレッドドラゴンに負けてしまったところから始まりました。この戦いでライオスの妹ファリン(CV:早見沙織)が食べられてしまい、彼女を助けるためにライオスらは再びダンジョンへと入ります。

 そして、冒険するためのお金や食料が足りないライオスたちが考えた手段は、「食料は迷宮内で自給自足する」ことでした。その結果、彼らは魔物を食料にすることを決意します。さらに、魔物食を長年研究しているドワーフのセンシ(CV:中博史)と出会い、彼らは冒険しながら意外なほど美味しい「ダンジョン飯」にはまっていくのです。

「RPGの主人公たちはご飯どうしてるんだろう」という疑問にフォーカスし、妙なリアリティが生まれているのが同作の魅力のひとつです。また、魔物の料理の美味しそうな描写が飯テロ」として話題になっている同作は、のんきにご飯を食べているシーンも多く、緩い雰囲気で観ることができます。

『ダンジョン飯』は、TOKYO MX、BS11ほかにて放送中で、「Netflix」「dアニメストア」「Amazonプライム・ビデオ」ほか配信サービスでも、順次配信されています。

●『葬送のフリーレン』

 2クール連続で放送されている『葬送のフリーレン』は、23年の秋から話題を集めている作品です。

 同作は、魔族や魔物と戦うといった王道なファンタジー作品ではあるものの、魔王を倒すために旅をするわけではなく、勇者とそのパーティによって魔王が倒された「その後」の世界を描いた物語です。

 勇者ヒンメル(CV:岡本信彦)らとともに魔王を討伐した主人公でエルフの魔法使いフリーレン(CV:種﨑敦美)は、自身が長寿であるために、寿命で亡くなっていく仲間を看取ることになります。ヒンメルを看取ったフリーレンは、彼の事を理解しようとしなかった自分を悔やみ「私はもっと人間を知ろうと思う」と語り、再び旅に出るのです。

 もちろん王道のファンタジー要素も十分にストーリーに含まれており、第7話〜11話の「断頭台のアウラ編」や、第2クールからスタートしている「一級魔法使い試験編」では、魔法使い同士の戦いが描かれ、迫力のバトルシーンも楽しむことができます。

『葬送のフリーレン』は、日本テレビ系全国30局ネットにて放送中です。「dアニメストア」「U-NEXT」「Amazonプライム・ビデオ」ほか配信サービスでも、順次配信されています。