アニメのバレンタイン回に「笑っちゃう」

 2月14日といえばバレンタインデー。アニメの世界でもどこか浮かれた気分がただよい、作品によっては「バレンタイン回」が放送されることも珍しくありません。思わず胸が熱くなるようなロマンチックな展開があったり、常軌を逸したカオスな展開が繰り広げられたりと、さまざまな方向性で話題を呼んだ「神回」を振り返ってみましょう。

●『アンパンマン』第366話A「ドキンちゃんのバレンタインデー」

 国民的アニメ『それいけ!アンパンマン』は、バレンタインにちょっとした暴走を見せたことがありました。第366話前半で放送された「ドキンちゃんのバレンタインデー」という回では、ドキンちゃんがしょくぱんまんに手作りチョコを渡そうと画策します。しかし、ばいきんまんはそれが気に入りません。そして、ホラーマンと共に、「男らしさを奪う薬」でしょくぱんまんを女の子にしてしまおうと企むのです。

 ばいきんまんの企みは成功し、なんとしょくぱんまんはおろか、アンパンマンまで女の子のようになってしまいます。内股にうるうるした瞳でばいきんまんを怖がって見つめ、「うぅ……こうなったら……アンパンチよぉぉ」と力なく叫ぶアンパンマンの姿は、おそらくこの回でしか見られないのではないでしょうか。アンパンマンの長い歴史に大きな爪痕を刻んだ回といえそうです。

●『超速変形ジャイロゼッター』第18話「ときめきバレンタイン」

 さらにカオスなバレンタイン回で有名なアニメといえば、2013年に放送された『超速変形ジャイロゼッター』です。同作は、ロボットに変形できるAIカー「ジャイロゼッター」をめぐる近未来SFで、主人公たちが通うアルカディア学園のスポンサー「アルカディア社」とライバル企業「ゼノン」の抗争を描いたストーリーでした。

 しかし第18話「ときめきバレンタイン」では、敵も味方もチョコレートのことしか頭になくなるというシュールな展開が繰り広げられました。メカニックの男子たちがオペレーターの女子を意識して必死になる一方で、アルカディア学園1のイケメン・速水俊介(シュンスケ)が世界中から大量のチョコレートを送られてうんざりするなど、怒涛のドタバタ劇となっています。

 特に「ゼノン」の戦闘ドライバーであるハルカが、シュンスケにチョコレートを渡そうとして、公道を「ジャイロゼッター」で爆走するシーンは必見です。

 また、虫歯で甘いものを禁止されていた主人公の轟駆流(カケル)に対してシュンスケが放った「歯というのはどうしても負けられない戦いのときに! 強く食い縛るためのものだ!」というアツいセリフも印象的で、彼が二枚目としてのポジションを確立した名シーンとなっていました。

画像は、『銀魂 THE FINAL(完全生産限定版)』DVD(アニプレックス)

ホットチョコレートのように心がほっこりする回も!

●『銀魂』第204話B「カカオよりココロ」

 コミカルな展開が目立つアニメのバレンタイン回ですが、普段から暴走してばかりのアニメ『銀魂』は、逆にまっとうな展開によって視聴者たちを驚かせました。それが第204話後編の「カカオよりココロ」です。

 同エピソードでは、「バレンタインなんて茶番はやめるべきだ!!」と非モテをこじらせたような主張を行う坂田銀時と志村新八のふたりに、神楽がチョコレートを渡そうとします。しかし、いざ行動に移そうとするとテレてしまい、なかなかうまくいきません。そして、そのもどかしい姿を見た志村妙や猿飛あやめ、月詠たちは、神楽をサポートしようと奮闘するのでした。

『銀魂』らしくその後もすったもんだがありますが、ラストは神楽の気持ちがふたりにきちんと伝わって終わる……という、ほっこりとした締め方の回となっています。女性キャラクターたちのかわいらしさがギュッと詰まった「神回」といえるでしょう。

●『ゲゲゲの鬼太郎』(6期)第93話「まぼろしの汽車」

 2018年から2020年にかけて放送された『ゲゲゲの鬼太郎』のアニメ第6期は、「ねこ娘がかわいい」と評判を呼んだことで知られています。第93話「まぼろしの汽車」は、そのなかでも特にねこ娘のキュートな魅力が凝縮された話となっていました。

 ねこ娘といえば鬼太郎にピュアな恋心を抱いていることでおなじみですが、決して恋人にはならない絶妙な関係でした。ですが同アニメではバレンタインの日、ねこ娘が鬼太郎を河原に呼び出し、チョコレートと共に「愛の言葉」を贈ります。そしてなんとふたりはそのまま結ばれることになるのでした。

 ところがその後世界中で、人間や妖怪が吸血鬼になる謎の奇病が蔓延し、ねずみ小僧や鬼太郎も感染してしまいます。そこで生き残ったねこ娘は、時を遡る「まぼろしの汽車」に乗って過去に戻り、歴史を修正した結果、バレンタインの告白は、なかったことになってしまいました。

 たった20分強の尺に、ねこ娘の甘酸っぱい告白、ゾンビ映画さながらのパンデミック・ホラー描写、タイムリープものの切なさがギュッと詰め込まれた回は、鬼太郎ファンでなくとも必見です。

 バレンタインが楽しみという人も、とくに予定がないという人も、せっかくなのでアニメの「神回」を堪能してみてはいかがでしょうか。