悩みなんてひとつもない、と決めつけていたが?

 クラスメイトのアイドル的存在・藤島を遠くから眺めているのは、地味な容姿の松崎。写真部である松崎は、ミスコンに出場する藤島の宣材写真を撮ってほしいと頼まれます。撮影当日、容姿にコンプレックスを抱く松崎は、容姿に恵まれた藤島がうらやましい存在だと伝えます。しかし藤島は予想外の反応をみせ「幸せ」についての本音を漏らします。それを聞いた松崎にも、同じように感じた経験があって……?

 乃田ユウキさん(@nd___yk)による創作マンガ『恵まれたアナタのこと、幸せに違いないと思ってた』がX(旧:Twitter)上で公開されました。今作は、「くらげバンチ」(新潮社)に掲載された読み切り作品『かわいそうな私たち』の前半部分です。いいね数は8000を超えており、読者からは「心理描写が丁寧……!」「相手のことを考えて悩んで行動に移せるなんて素敵だ」「すごい、人それぞれの立場で悩みあることを、しっかり表現している」などの声があがっています。

 乃田ユウキさんは漫画家として活動しており、今作以外にも読み切り作品『人魚は帰らない』が「くらげバンチ」にて掲載されています。

 作者の乃田ユウキさんにお話を聞きました。

ーー今作『恵まれたアナタのこと、幸せに違いないと思ってた』が生まれたきっかけや、理由を教えて下さい。

 自分のことを「かわいそう」と認めてあげるのが難しい時代だなと感じ、その息苦しさをマンガにしました。SNSが普及したことで周りがどんな生活をしているか分かるようになって、それと同時に自分が周りに比べてどれだけ幸福なのかも分かりやすくなったと思うんです。

 そんななかで、例えばとっても悲しいことがあったときに「いまとっても悲しい気持ちだ。いまの自分はかわいそうだ」と自分を自分で慰めてあげるのは、真面目な人ほど難しいことなんじゃないかなと思い、このマンガを描きました。

ーー主人公ふたりの関係性が素敵でした。今作を描くうえでこだわったポイントや、工夫したシーンなどはありますか?

 ふたりの間にある空気感は、慎重に考えました。クラスで話したことがないしグループも違うけど、一緒にいるとなぜか落ち着く友達って誰にでもいたことあると思うんですけど、そんな空気感を描けるように頑張りました。

「幸せ」や「かわいそう」のレッテルに悩む女子高生たちを描いた『かわいそうな私たち』(乃田ユウキさん提供)

ーーたくさんの感想が寄せられています。特にうれしかった感想の声、印象に残った読者の声について、教えて下さい。

 全編を読んでくれた方からの「ラストシーンが良かった」、という感想がうれしかったです。自分もあのラストシーンは本当に気に入っているので、読者の方と同じ目線で物語を作れた証拠じゃないかなと思っています。

ーー『かわいそうな私たち』の全編は「くらげバンチ」にて掲載されています。あらためて、『かわいそうな私たち』のあらすじや見どころなどを教えて下さい。

 クラスメイトの藤島さんがミスコンに出場するんだって――そんな話を聞くともなく聞いていたアイドル好きの高校生、松崎優実。写真部でしょ? とお願いされ藤島さんの宣材写真を撮ってあげることになるが、そこで藤島さんの本音を知ることに。思わず自分のことを省みてしまうような、何か考えてしまうようなセリフや展開が見どころです。

ーー乃田ユウキさんがマンガを描き始めたきっかけを教えて下さい。

 日々生活していて、つらいことや悲しいこと、耐えられないことが多くあり、この腹にある気持ちを何かにぶつけられればと思い、大学生のときにマンガを描き始めました。

ーー今後、X(旧:Twitter)で発表される作品については、どのように活動していきたいとお考えでしょうか?

 地道に、丁寧な作品をちょっとずつ発表できればと思っています。みなさん応援よろしくお願いいたします。