無邪気なかわいさとグロさのギャップがクセになる

 ポップな世界観や、日本とは違った雰囲気、ノリが楽しめる海外アニメのなかには、親しみやすいイラストでも過激表現やグロシーンが含まれる作品もあります。今回は、視聴に覚悟が必要な海外アニメを振り返ります。

●『ハッピーツリーフレンズ』

『ハッピーツリーフレンズ(Happy Tree Friends)』は1999年にアメリカに拠点を置くMondo Mediaが制作したフラッシュアニメです。ウサギやシマリス、ヘラジカなどの動物をモチーフとした、カラフルでかわいいキャラが登場し、コミカルな日常が描かれています。一見すると食事や工作、散髪の様子など、平和な日常を覗いているような感覚になりますが、些細な不注意などからキャラたちが残酷な目にあってしまいます。

 たとえば、看板が落ちてきて顔半分が削れたり、口に水を含み過ぎて頭が爆発したりしました。その他にも、内臓が飛び出す、胴体が切断される、目玉が飛び出るなどのスプラッターシーンが、日常茶飯事のように起こります。内臓や切断した断面の描写もリアルで、子供向けアニメのつもりで視聴するとびっくりすることでしょう。

 一方で、キャラの無邪気な姿や、些細なことで大惨事を招いてしまうドジな姿もかわいらしく、ネット上では「最初はグロすぎて引いたが中毒性がある」「一度見たら止められない」「何をしたら危険なのか、注意喚起にもなる」などと根強い人気を誇っています。

●『Mari-Kari』

『Mari-Kari(マリカリ)』は、2010年にアメリカのホラー専門のサイト「FEARnet」で配信されたWebアニメです。事故に遭った双子姉妹の生き残ったMariと、死んで霊となったKariが主人公で、彼女たちの学校での日常が描かれるホラーアニメです。

 Mariは明るくかわいらしい少女ですが、Kariが死亡したことにも気が付かないほどの天然で、亡霊として近くにいるKariとは、いつも友達のように話しています。天然のあまり自分がいじめられていることも気が付きませんが、KariはそんなMariをいじめる生徒の首を引きちぎる、目玉を引っ張り出すなどして、残忍な方法で殺していきます。

 1話2〜3分ほどで8話からなる短いエピソードでありながら、毎回のように誰かが惨殺されていきました。なかでも、殺した生徒の臓物で縄跳びをする、ちぎった首でバスケのゴールにシュートするなど、グロさを超えて猟奇性のある描写も多く出てきます。

 どんな状況でも変わらず能天気なMariと、Mariのため暴虐の限りをつくすKariが繰り広げる残虐な展開とのギャップが絶妙な不気味さを演出しており、SNS上では「Mariを守るKariの設定が素敵なのに不意打ちのグロ描写にびっくりする」「もはや笑ってしまう」といった声も見られます。現在は日本語字幕での配信はありませんが、映像だけでも十分に狂気が伝わる作品です。

大論争を起こしたけど栄誉ある賞を受賞した作品も?

●『サウスパーク』

作者が選んだ『サウスパーク』ベストエピソード集 「THE SOUTH PARK:THE HITS〜「マット&トレイ」が選ぶBEST 10〜 [DVD]」(ポニーキャニオン)

『サウスパーク(South Park)』は、1997年から続くアメリカのストップモーションアニメで、架空の街サウスパークを舞台に、主人公の少年4人がドタバタな騒動をおこす1話完結型のブラックコメディです。さまざまなグッズ化もされており、丸くて愛らしいキャラから一見して子供向けの作品かと思いきや、内容は過激な下ネタや人種差別、痛烈な社会風刺が含まれています。

 実在する人物もネタに起用され、某国の大統領が性暴力を受けて最終的に死亡するエピソードや、某国の王妃を性差別的な表現で非難するなど、当事者が激怒しそうなパロディもありました。また、とある宗教を風刺したエピソードでは、制作者のマット・ストーン氏とトレイ・パーカー氏に向けた脅迫まがいの抗議文が一部のWebサイトに掲載されたこともあり、大きな論争を巻き起こしました。

 しかし、同作は現代社会が直面する問題を鋭くユーモラスに表現する作品として、多くの視聴者から支持され、アメリカで優れたテレビ番組に与えられる「エミー賞」だけでなく、同国最古のメディア、映像に関する権威をもつ「ピーボディ賞」までも受賞しています。

 過激な表現だからこそ、社会のゆがみを如実に伝えられるのでしょう。「社会の本質をブラックジョークという形で表現してくれる稀有なアニメ」「大事なことはすべてこのアニメで学んだ」と、高評価の意見が多数見られます。

 どの作品も他のアニメにない魅力で評価されていますが、刺激が強いためかわいらしいアニメと思って観ないように注意が必要です。