お金に価値が出るのは、生産者と消費者の両者がいるから

 コミケこと、コミックマーケットを楽しんだあと、ふたりの女性が「同人誌活動が労働と貨幣に関係している」と語り合います。メガネの女性「よしこ」は、コミケにおいてお金に価値が出るのは、そのお金で本を交換できるからだと言います。もし買うものがなければ、お金は価値のないただの紙切れになってしまいます。これは日本円で日本のモノやサービスを買うことができる、リアルの経済と同じだという考え方です。その後も議論は白熱していき……?

 Mihanaさん(@mihana07)による創作マンガ『コミケでわかるお金の話』がX(旧:Twitter)上で公開されました。いいね数は1.3万を超えており、読者からは「教科書に採用したいお話ですッ!」「コミケから始まっているけど普通にどこでも通じる経済の大事なお話だった」「お金に興味がある自分としてはとても考えさせられました」などの声があがっています。

 作者のMihanaさんにお話を聞きました。

ーー今作『コミケでわかるお金の話』が生まれたきっかけや、理由を教えて下さい。

 私自身、長年アニメやマンガが大好きなオタクのひとりです。特に同人イベントが大好きで、自分が苦労して作成した本を読者の方に手にとってもらえて、すごく喜んでいただいた顔を見たときの充実感や幸福感に勝るものはないと思っています。

 経済の勉強を始めてから、同人イベントこそ「豊かな社会」を実現できているのではないかとますます思うようになり、マンガを描き始めました。ちなみに、マンガに出てくる跡○様が好きな夢女・よしこは私の親友がモデルで、マイナーCP(カップリング)厨は私自身がモデルになっています(笑)。

ーーマンガで楽しく勉強ができる内容でした。今作を描くうえでこだわったことや、お気に入りのシーンなどはありますか?

 できるだけ平易な言葉で書くことにこだわりました。よしこのお金の説明は、専門用語でいえば「債務ヒエラルキー」という言葉で表現できますが、そうした言葉を避けて、居酒屋のツケ払いの例示など分かりやすい説明を心がけました。

 お気に入りのシーンは間違いなく、「神々へのIOU(I owe you)という感情」「や、やだ! よしこちゃん! 『愛を言う』だなんて!」のシーンですね。お金の本来の性質は借用証書(IOU)ととらえることができますが、IOU=I owe you(あなたに借りがあります)が日本語でいうと「愛を言う」に聞こえるってとてもロマンチックだなと思っています。

お金に価値を与えてくれる神々に感謝!!(Mihanaさん提供)

ーーたくさんの感想が寄せられています。特にうれしかった感想の声、印象に残った読者のコメントはありましたか?

 まず、本当にたくさんの感想をいただけて驚きました。分かりやすさを心がけたので「ものすごく分かりやすい経済の話」といった感想はすごくうれしかったです!

「経済学とオタ活と同人文化とちょい百合が見事な融合の元に描かれている」と、構成面での工夫に着目いただいたコメントも印象に残っています。振り返ると、たしかに自分の好きなものをうまく組み合わせることができた話なのかなと思います。

ーーMihanaさんは経済やお金をテーマにした作品を描いています。マンガを描き始めたきっかけを教えて下さい。

 きっかけは日本経済について疑問を思ったことからです。「国の借金って何?」という疑問がやがて「そもそもお金ってなんだろう?」「そもそも社会ってなんだろう?」と経済学や社会学への領域への関心となり、勉強を続けてきました。

 例えば、日本政府は「お金が足りないから○○はできない」とよくいいます。しかし、本当に日本政府は日本円が足りないのでしょうか? そのせいで実際に生活に苦しんでいる人がいますが、この状態を私たちは受け入れたままでいいのでしょうか? 人間よりお金が大切なのでしょうか? こうしたお金や経済への疑問を、「マンガという身近な媒体を使って表現できないか?」と思ったのがマンガを描き始めたきっかけです。

 ちなみに、最初に描き始めたのは『日本経済を解説するヤンキー』で、ヤンキーマンガが好きな私が「ヤンキーが日本経済にめちゃくちゃ詳しかったらおもしろくない!?」という安直な発想から始めたものです。いつも驚くほど直感的にマンガを描き始めるので、キャラの設定など聞かれると答えに窮する(きゅうする)こともしばしば……(笑)。

ーー今後、X(旧:Twitter)で発表される作品については、どのように活動していきたいとお考えでしょうか?

 今までは『日本経済を解説するヤンキー』や『資本主義と戦うギャル』など、経済やお金の解説マンガをメインに活動していました。今後は、ひとりの漫画家として表現力をもっと磨くためにも、経済だけではなく社会の本質的な問題、人間の欲望などに焦点をあててマンガを描いていきたいと思っています。

 もちろん、『日本経済を解説するヤンキー』や『資本主義と戦うギャルの漫画』もまだまだ描きたいネタがあるので不定期に更新したいです。最近話題のマイナス金利など金融政策について、ヤンキーの「たけお」に解説してもらう予定です。

 またビル・ミッチェル経済学教授が原作を考えているマンガシリーズ「スミス一家とお金の冒険(The Smith Family and its Adventure with Money)」も5月24日からシーズン2が開始します。ミッチェル教授いわく、シーズン2でスミス一家に苦難が待ち受けるらしいので、私自身も制作を始めるのがとても楽しみです。いろいろな表現を追求しつつ、今後も気ままにマンガを描いていければと思うので、よければ、X(旧:Twitter)やPixivのフォローをお願いします。

 また、4月15日からは国内外のいろいろなニュースを配信するメディア「News Picks」にてトピックスを開設させていただきました。こちらでもぜひ面白い発信をできたらと思っているのでフォローしてみてください! よろしくお願いします。