進学・進級により落ち着かない日常もようやく落ち着いたころではないでしょうか。新学期の保護者会でPTAの役員決めが行われ、独特の張り詰めた空気に困惑された方もいらっしゃるかもしれません。

さて、学校生活において保護者間のコミュニケーションは、子どもの学校生活やイベント参加など、さまざまな場面で必要不可欠です。近年では、学校からの情報もデジタル化され、オンライン上での連絡が一般的になってきています。その中で、保護者同士がどのように連絡を取り合うか、その手段として「メールにするか」「LINEにするか」の意見が分かれているようです。

都内に住むSさんは、今年から2年の任期でPTA役員となりました。役員の負担を減らすべく、役員間のやりとりはLINEで行っています。ただ、役員の中にはLINEを使っていない人もいます。「同じ連絡を、グループLINEで済ませられることも、LINEを利用していない人への連絡はメールにしなければならないので2度手間で面倒。役員は全員LINEを使ってほしい!」と思っています。ただ、LINEの利用を強制しているようでなかなか言い出せません。

保護者に注意喚起のお便りも

LINEを使ったトラブルは増えていて、子どもたちや学校関係者にも影響を及ぼしています。このような事態に備えて、学校から保護者に対してLINEの利用についてのガイドラインや注意喚起が行われるケースが増えています。

よくある通知としては
「子ども同士のLINE利用は自由だが、保護者の管理のもとに行ってほしい。学校は一切責任をとらない」というものから、
「保護者間でのLINEグループ参加は任意です」と強制ではないことを伝えるもの、また学校によっては、「保護者間のLINEでのやりとりは禁止です」と、制限する学校もあると聞きます。

それぞれのメリット・デメリット

LINEには、「沢山連絡が来て面倒、即レスしないとダメな気がしてストレスがたまる、なかなか会話が終わらない」などの拒否反応もある一方、リアルなコミュニケーション、手軽な操作性、スタンプや絵文字等 感情や表現を豊かに表現できて、より親しみやすいコミュニケーションが可能であるというメリットもあります。

一方で、メールは即レスを求められず、ある程度形式的な文章を書くことで、情報がまとまって送信でき、添付ファイルを送る際に便利です。またアーカイブ機能により受信箱や送信済みフォルダにメッセージが保存され、必要な情報を後で参照できます。ただ、形式的な文章作成が面倒であるというデメリットもあります。

専門家の意見は?

PTA業務のアウトソーシングサポートやツール提供などで運営支援を行う、PTA専用支援サービス「PTA'S(ピータス)」を運営している増島佐和子さんに伺いました。

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連絡ツールとしてLINEを使用しているPTAも多く、よく相談が寄せられます。「誰もリアクションしてくれない」「キツイ言い方をされた」といったコミュニケーション上のものから、「決めたいことが決まらない」「何の話をしているか分からなくなってしまう」といった使い方に至るまで、お悩みはさまざまです。

PTAでは、“初めまして”の人同士がグループを作ることもあるので、遠慮や誤解など、コミュニケーションミスが起こりがちです。また、“いつまでに何を”といった合意形成や、資料の確認・共有などにも不向きだと感じます。

業務連絡には役割や期日を伴うことが多いので、ご相談いただいた際は、LINEに使い勝手が似たLINE WORKSやその他ツールなど、ビジネス用ツールの活用をお勧めしています。

PTAは年度によってメンバーが替わりますし、保護者の年齢層の違いもあります。ツールを選ぶ際は、その特性を踏まえ、用途や目的に応じて、その時のメンバーの意見も聞きながら、決めていくのがいいのではないでしょうか。

◆増島佐和子(ますじま・さわこ)PTA'S(ピータス)代表 広告代理店・認可保育園運営事業者勤務を経て独立。自身のPTA役員時代に感じた課題を解決するべく2020年にPTA'S(ピータス)をリリース。

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増島さんの言う通り、重要な情報やフォーマルな連絡にはメールが適していますが、リアルタイムのやりとりや手軽なコミュニケーションにはLINEが有効です。ただ手軽な分、連絡頻度が多く大変になることも多いので、スタンプを多用しないことや、即レスは求めないなど、グループやメンバーの状況や目的に応じて、最初からルールを作り、連絡を円滑に行うことを最優先にできるといいと思います。

トラブル回避のため、LINEは家族以外の人と連絡をするのを避けている人もいるようです。ただ頑なにLINEを利用しないことで、他の人の業務を増やしてしまうことも事実。皆の歩み寄りが必要ではないでしょうか。

◆くま ゆうこ ネットいじめ、ハラスメント専門家。株式会社マモル代表取締役社長。自身の強みであるWebマーケティングのノウハウを活かし、 いじめや組織のハラスメントを未然に防ぐシステム「マモレポ」を開発する傍ら、学校コンサルティング、いじめ・ハラスメントのセミナー登壇、執筆を行う。