飼い主の飼育放棄によって、行き場を失うワンコが後を絶ちません。ワンコにしてみれば、「家族だ」と信頼していた飼い主とある日離ればなれになるわけですから、心に相当な傷を負います。棄てる飼い主は、そういったワンコの気持ちを考えているのでしょうか。

真っ白の被毛のチワワのメス・プラムちゃんも飼育放棄によって行き場を失ったワンコです。飼い主が「海外移住する」とのことで、プラムちゃんを手放すことになったのだとか。事情の詳細はわかりませんが、海外にプラムちゃんを連れていく努力はしたのでしょうか。

なんともやるせない気持ちになりますが、唯一の救いはこの飼い主が保健所などに連れていかず、心ある保護団体に相談を持ちかけたこと。一時は行き場を失ったプラムちゃんにも、このことで第二の犬生への小さな光が見えました。

人の姿が見えなくなると「クーンクーン」

「プラムちゃんを保護してもらえないか」と相談されたのは愛知県を拠点に、行き場を失ったワンコたちを救う活動を続ける一般社団法人SORA小さな命を救う会(以下、SORA)。スタッフは話を聞き、複雑な思いを抱きながらも、プラムちゃんの明るい将来へと繋げるべく保護することにしました。

プラムちゃんは、よく舌を出しながら笑顔を見せてくれるワンコで、SORAと提携する預かりボランティアさんの家でもすぐに環境になじんでくれました。預かりボランティアさんの行く先々をくっついて歩く甘えん坊ぶり。目が合うとなでてアピールし、預かりボランティアさんの姿が見えなくなれば、「クーンクーン」と鳴いてしまうような寂しがり屋さんでした。

その様子は「私はここの家にいて良いんだよね?」「もう私のことを捨てないよね?」と言っているようにも見え、ちょっと切ない気持ちにもなる預かりボランティアさんでした。

プラムちゃんはパテラを患っていた

SORAで保護することになり、程なくしてプラムちゃんの健康チェックをしてもらいに動物病院へと向かいました。あらゆる検査をした結果、プラムちゃんは通称「パテラ」と呼ばれている膝蓋骨脱臼(しつがいこつだっきゅう)を患っていることがありました。膝蓋骨脱臼とは、膝にある楕円形の骨が通常の位置から外れてしまう病気です。膝の関節が伸ばせなくなることがあり、重度の場合は手術をする必要があります。

プラムちゃんの進行度は「グレード2」というもの度で、後ろ足を曲げた際、頻繁に脱臼してしまう状態でした。脱臼すると後ろ足が地面につけなくなりますが、曲げ伸ばしや手で押すことで元の位置に戻ります。獣医の診断は「今のところ日常生活に問題がないだろう」ですが、楽観できるものではありません。預かりボランティアさんはプラムちゃんが少しでも楽に過ごせるように、カーペットなどを敷き、歩行負担を軽減できるよう最善の策を講じました。

ついに里親希望者さんが見つかった

また、プラムちゃんには少々の心雑音もありました。重度の場合、心臓病を患っている可能性もありますが、幸い最も低い音でエックス線検査でも問題がなかったためしばらくの間、様子を見ていくことになりました。

軽いと言えど、小さい体でこれだけの問題を抱え、さらに大好きだったであろう飼い主と離ればなれとなったプラムちゃん。現在は、今度こそ「ずっと家族」との出会いを待ち、SORA主催の譲渡会にも積極的に参加していました。

来場者にもすぐに懐き、みんなを笑顔にしてくれていた明るいプラムちゃん。後に「迎え入れたい」という里親希望者さんが現れ、ついに第二の犬生をつかむことができました。現在はこの優しい里親さんのもとで幸せな日々をおくっているとのこと。プラムちゃんにとって、いっさいの不安のない毎日が1日でも長く続いてくれると良いなと思いました。

一般社団法人SORA小さな命を救う会
https://sora-chiisana.org/

(まいどなニュース特約・松田 義人)