保健所や動物愛護センターには連日ワンコが収容されています。多くは強い警戒心から吠えまくったり、希望をなくし悲しい表情を浮かべたりしています。2023年12月に茨城県動物指導センターに収容されたダックス系ミックスのワンコは少し様子が違いました。

置かれた状況を理解しているのか、まん丸の目で人間を見つめ「遊んで遊んで」と明るくジャンプ。その様子だけを見れば、多頭飼育崩壊現場という過酷な環境にいたとは想像できぬ人懐っこさで、職員や保護団体関係者の心を奪っていました。後につけられた名前は「シャルル」。推定3歳ほどのワンコでした。

気づけばソファの背もたれの上でジッと見つめる

シャルルを引き出すことにした犬保護団体・restertdog LIEN(以下、リアン)のスタッフも、その明るさとジャンプ力にメロメロ。保護後、しばらくして懇意のトリマーさんの元に連れていき自慢のヘアを整えてもらい、預かりボランティアさんの家で過ごさせることにしました。

この家には複数の先住犬がいますが、シャルルは特に物怖じする様子はなく、持ち前の明るさを発揮。先住犬たちを横目に、預かりボランティアさんを独り占めしようとまた「遊んで遊んで」とジャンプ。「そんなに飛び跳ねて、机とか椅子とかに頭をぶつけたりしないでね」と心配する預かりボランティアさんでしたが、ふと目を離すと、ソファの背もたれの上に立ち、じっとこちらを見ているシャルル。

「そんなところにいて落ちたら大変! 早く降りて」と預かりボランティアさんが声をかけると、「あらそう? ダメなのね、ここは」とスンナリ降りてくれたりと、ジャンプ力や明るさだけでなく、人間の声に耳を傾ける賢さも兼ね備えたお利口さんでした。

後になったわかったのですが、シャルルはシャルルなりに「この人好き」「この人ちょっと苦手」という基準があり、特に「ちょっと怖そう」という初対面の人の前では内弁慶になることもありました。言動から推測すると、「誰にでも甘えてくる」というわけではなく「信頼した家族にだけ甘えてくる」感じです。スタッフは、そんなシャルルが「この人好き」と思うような里親さんとの出会いを待ち望んでいました。

幸せをつかんだシャルルとの別れ際…

ほどなくしてピッタリの里親希望者さんが現れました。

この家でトライアルとなったシャルルですが、当初こそ緊張していものの、程なくして「ここ、私の家なんだ」と理解したようでジャンプで大喜び。見事この家のワンコになることが決まりました。

正式譲渡となったシャルルは、トライアルからそのままこの家で過ごすことになりましたが、そこで預かりボランティアさんとお別れです。うれしい一方、寂しく思う預かりボランティアさんを前に、「え? ママさん帰っちゃうの?」とシャルルも少し寂しそうな表情を浮かべました。

そこは明るく前向きなシャルル。ワンコ用のガムをガリガリかじりながら「まぁでも、また遊びに来たらいいよね。ママさん、また会おうね!」といった表情を浮かべ、ここから幸せいっぱいの第二の犬生の一歩を歩み始めました。

(まいどなニュース特約・松田 義人)