数字を使って社会を見ると、意外なことがわかるかも!? 統計をしっかり見ると、じつは自分が思っていたことや当たり前だと感じていたことが、実体とは違っていることもあります。数字はふだん見逃している、さまざまな側面を発見するヒントになるのです。そんな数字とイラストを使って、さまざまな事象を解説する『大人も子どもも知らない不都合な数字』(フォレスト出版)にて、数字の背景を考えながら社会問題に向き合っていきましょう。
※本記事はチャリツモ著の書籍『大人も子どもも知らない不都合な数字』(フォレスト出版)から一部抜粋・編集しました。

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※写真はイメージです(画像提供:ピクスタ)

60代の投票率は71%、20代は36%
みなさんは日本の国政選挙の投票率がどれくらいかご存じですか?
2021 年に実施された第49回衆議院議員総選挙の投票率は55.93%、2022年に実施された第26 回参議院議員通常選挙では52.05% でした。
日本では、09年の政権交代が起きた衆院選で69.3%をマークして以来、60%を超えたことはありません。
では、年齢別に投票率を見てみるとどうでしょう?



2021年の衆議院選挙の投票率を年代別にみると、60代が約71.43%であるのに対し、20代は約36.50%と60代の半分ほど。どの選挙でも年長者ほど投票率が高く、若者ほど投票率が低い傾向にあります。
年長者に比べて若者が投票しない理由はなんでしょう?
2022年に東京都が行った選挙に関する世論調査では、20代で投票に行かなかった若者にその理由をたずねたところ、「投票所に行くのが面倒だったから」(30.9%)、「仕事が忙しく時間がなかったから」(25.5%)、「候補者の人柄や政策がわからなかったから」(25.5%)などの回答と並んで、「適当な候補者がいなかったから」(12.7%)という理由が挙げられています。投票したいと思えるような候補者がいないため、投票を棄権する若者が少なくないのです。
そもそも、若者世代を代表するような若い候補者が少なすぎます。2021年の衆院選では全候補者1051人のうち20代・30代はわずか9.4%、10人に1人もいないのです。
若い候補者が少ない背景には、各政党や政治団体が若者の立候補を積極的に応援していなかったり、若者自身が選挙を戦うためのお金や人手を用意できないといった理由のほかに、そもそも立候補する権利(被選挙権)が若者に与えられていないという問題があります。
現在日本では投票は18歳からできるにもかかわらず、立候補ができるのは25歳から、参議院議員や都道府県知事に至っては30歳以上でないと立候補できません。新成人は少なくとも7年間は選挙に出ることが許されないのです。
投票に行ったところで自分たちの世代を代表する候補者はいないし、自分が出馬することも制限されている...若者が政治に興味を持たないのも当然といえば当然のことなのかもしれません。
若者の低投票率を、彼らの政治参加意識の問題として片付けてはいけません。彼らの政治参加を妨げる社会の仕組みに気づき、変えていきましょう。
※掲載されている情報は2024年2月現在のものです。
(参考)
・国政選挙における投票率の推移(総務省、2023年)
・国政選挙における年代別投票率について(総務省、2023年)
・U30世代の投票率向上のための施策案について(株式会社日本総合研究所、2022年)



チャリツモ
これまで遠く感じていた社会問題を、自分ごととしてとらえるきっかけを提供し続けるクリエイター集団。「そうぞうしよう。そうしよう」がキャッチコピー。本書のベースとなっているWEBサイト「チャリツモ」をはじめ、10代の若者が抱える性のモヤモヤにこたえる「セイシル」(運営会社はTENGAヘルスケア)や「日本財団 Instagram」など、WEBメディアを中心にさまざまな媒体の運営に携わっている。