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エンジニアリング最大手の日揮ホールディングス<1963>は、脱炭素などの分野で先進的な技術を持つスタートアップなどに投資する英国のベンチャーキャピタルAP Ventures(ロンドン)が運用する「AP Ventures Fund Ⅲ」に出資した。

エネルギートランジション(既存のエネルギーシステムから異なるエネルギーシステムへの移行)を将来の成長エンジンとして位置付けている長期経営ビジョン「2040年ビジョン」の方針に沿ったもので、水素やアンモニア、CCUS(二酸化炭素の分離回収、利用、貯留)分野で、優れた技術を持つ海外のベンチャーとの協業などを目指す。

同社は自社のCVC(コーポレート・ベンチャー・キャピタル)である「JGC MIRAI Innovation Fund」を通じて、医療や再生可能エネルギー、ロボットなどのスタートアップへの出資を行っており、今回の出資によって今後は水素やアンモニア、二酸化炭素関連への投資先が増えることになりそうだ。

提案力や競争力を向上

AP Venturesは2013 年から水素関連業界に投資を始め、これまでに脱炭素などの地球規模の課題解決に取り組む20社以上のベンチャーに投資している。

日揮が出資したのは第3号ファンドで、同ファンドでは水素やCCUS技術などによる低・脱炭素化に焦点を絞っているという。

日揮は燃焼時に二酸化炭素を排出しない水素や、安全で経済性の高い水素輸送方法として有望視されているアンモニアの事業を拡大するには、優れた技術を持つベンチャー企業との連携を通じた提案力や競争力の強化が必要と判断。

今回の出資を通じて、今後水素やアンモニア、CCUSの分野で海外のベンチャー企業との連携を強める。

2041年3月期に営業利益を1500億−2000億円に

「2040年ビジョン」では2022年3月期から2026年3月期までの5年間を「挑戦の5年」とし、エネルギートランジションを軸に成長事業への投資や将来事業の基盤確立に取り組む。

一方「JGC MIRAI Innovation Fund」では2022年に医療、核融合、再生可能エネルギーなど8社に、2023年は医療やロボットなど4社に投資した。

2024年は3月に希少鉱物資源の精製プロセスを開発するスタートアップのMiRESSO(青森県三沢市)に、4月には完全自動運転車両の開発に取り組むスタートアップのTuring(東京都品川区)の2社にそれぞれ出資した。

「挑戦の5年」の最終年となる2026年3月期に向け、エネルギートランジション強化の方針に沿って、新しいエネルギーとして利用の拡大が見込まれる水素関連のスタートアップへの投資が見込めそうだ。

「挑戦の5年」のあとの2040年ビジョンは、2027年3月期から2031年3月期までの5年間を「収穫の5年」とし、高機能材とヘルスケア・ライフサイエンスの強化に注力し、さらに次の2032年3月期から2041年3月期までの10年間を「飛躍の10年」とし、資源循環と産業・都市インフラを収益の柱に育てるとしている。

また、営業利益については2026年3月期に600億円、2031年3月期に1500億円以上、2041年3月期に1500億−2000億円の目標を掲げている(2024年3月期は海外プロジェクトで損失引当を行うため190億円の赤字見込み)。

2040年ビジョンの進捗に伴って投資先の分野が変わっていくことになりそうだ。

【日揮ホールディングスの2040年ビジョン】

挑戦の5年収穫の5年飛躍の10年
2022年3月期−2026年3月期 2027年3月期−2031年3月期 2032年3月期−2041年3月期
エネルギートランジション領域(コア事業)への発展 成長事業(高機能材、ヘルスケア・ライフサイエンス)の収穫期 将来事業(資源循環、産業・都市インフラ)を事業の柱に
2026年3月に営業利益を600億円に
2031年3月期に営業利益を1000億円以上に

2041年3月期に営業利益を1500億−2000億円に

文:M&A Online

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