子育て世代の買い替え

 子育て家庭にとって、自動車の存在はかなり大きい。休日のお出掛けに、買い物に、病気の子どもを病院に連れて行くのに、自動車は大活躍だ。そして、子育て世代の特徴のひとつとして、ライフスタイルの変化による買い替えを検討するケースが多いことが挙げられる。

 内閣府「令和5年3月 消費動向調査」によると、乗用車(新車)の買い替えにかかる平均年数は

「9.1年」

となっている。この8〜9年の間に子どもが増えたり、公共交通機関が充実しておらず日常生活に車が欠かせない地域に転勤などで引っ越したりすると、車の買い替えだけでなく、場合によってはセカンドカーの購入も必要になる。

 買い替えは他の世代よりも現実的な問題であり、大きな買い物であるがゆえに慎重に検討される。筆者(中山まち子、子育てジャーナリスト)も子育て中だが、子どもが増えたのを機に買い替えた。周りでも、子どもの成長に合わせて買い替える家庭は少なくない。

 今回は、子育て家庭が自動車を買い替える際に、どのようなポイントが重要なのかを考えてみたい。

子育て世代の自動車イメージ(画像:写真AC)

車選びの第1歩は「使用頻度」

 自動車を持っていても毎日使う家庭もあれば、週に数回しか乗らない家庭もある。通勤手段が異なれば、自動車との付き合い方も異なる。そのため、まずは日常の使用頻度を振り返ることが重要である。

 以下は購入の際に考慮すべきポイントを列挙したものだが、優先順位は使用方法によって異なる。

・燃費
・価格
・乗り心地
・収容量
・乗車人数
・種類(ガソリン車、ハイブリッド車、電気自動車)
・状態(新車、中古車)

 例えば、通勤に自動車を使うのであれば、当然燃費を重視する。会社の通勤手当が変わらないのにガソリン代が高騰しているのであれば、ハイブリッド車や電気自動車に買い替えるのが現実的な選択肢だろう。

 逆に、公共交通機関や会社の通勤バスを利用して通勤するのであれば、基本的には休日の利用がメインとなる。

 もちろん、転職などによって使用状況は変わってくるが、

「自分やパートナーがどれくらい乗るか」

を基準に優先順位を考え、それを基準にメーカーや車種を絞り込んでいくのがオーソドックスな考え方だ。

子育て世代の自動車イメージ(画像:写真AC)

重要な乗車定員の見極め

 子どもがいる家庭では、休日の過ごし方も自動車選びに影響する。アウトドアが好きでよく出掛けるのであれば、荷物を積めるスペースがあり、河原などで運転に困らない自動車をピックアップし、そこから検討する。

 祖父母が近くに住んでいて休日に一緒に出掛けることが多い場合は、「家族の人数+α」を意識して自動車を選ぶ家庭も珍しくない。

 一方、祖父母が近くに住んでおらず、休日を家族だけで過ごす場合は、乗車人数を考慮する必要はない。特別な用事がない限り遠出はせず、休日は近所への買い物がメインという家族の場合、こだわりがなければ「普段使いに適した手頃な自動車」を探すことになる。

 ただし、家族以外を乗せることがないと決めつけるのも問題だ。シートベルトの数は車種によって異なるし、乗車定員も自動車ごとに決まっている。これを守らずに運転すると道路交通法第57条違反となり、罰則が科せられることを忘れてはならない。

 そのため、「何人乗ることがあるか」を軽視せず、「家族プラスひとりが乗ったらどうなるか」を確認して定員人数を決め、自動車を選ぶことが大切だ。

子育て世代の自動車イメージ(画像:写真AC)

便利なミニバンの「わな」

 子どもがふたり、3人と増えてくると、買い替えの必要性が待ったなしになる。そして、成長とともに自動車の役割も変わる。買い替えを検討する際は、子どもの年齢を考慮するのが無難だ。

 小学校高学年や中学入学前であれば、習い事やスポーツクラブ、中学校の部活の送迎車として活躍することもある。

 子育て世代としては、ミニバンを持っていると部活の送迎役、いわゆる「車出し当番」になりやすいことを頭に入れておきたい。筆者の周りで、スポーツ少年団や部活で「車出し当番」になっている家庭の多くは、圧倒的にミニバン所有者が多い。

 部活の送迎は中学3年生の夏休み前まで、つまり引退するまで続く。スポーツ少年団に所属している場合は、小学生から運転することもある。

 理想は欲しい自動車を購入することだが、子どもの年齢や学年によっては、使用が家庭内だけにとどまらないことも起こり得る。そのような役割を担いたくないのであれば、車種を吟味するのも一手だ。

子育て世代の自動車イメージ(画像:写真AC)

長期的な視点が重要

 通勤や旅行、買い物など生活に欠かせない自動車を、ライフスタイルに合わせて買い替える人は多い。子育て世帯の場合、買い替えのタイミングは子どもの成長や出産であることが多い。買い物に、通院に、子どもの送り迎えに、自動車は欠かせない。

 買い替えは金額が大きいだけに、家計をベースに予算を組み、家族のニーズや優先順位を整理し、その範囲内で「わが家の車」を探すというプロセスは、1日や2日で終わるものではない。

 まさに「車への道は一日して成らず」である。意見の相違もあるし、子どもが大きくなれば口出しもする。右往左往しながらわが家に合う車を探すのだ。

 買い物がメインなら、小回りが利き、大容量の車が魅力的だ。家族でキャンプやバーベキューをするなら、休日の過ごし方を考えて自動車を選ぶ。

 買い替えをした場合、約9年間は同じ車に乗り続けることになる。これは小学校から中学校までの義務教育期間と同じである。家族の相棒として、時間をかけて最高の自動車を購入したいものだ。