明治時代に建てられた町家を活用したフリースペース「ご城下町家カフェ 茶noma」(松本市丸の内)が松本城近くにオープンして1カ月が過ぎた。(松本経済新聞)

 大正時代に建てられたという蔵

 店主の東正紀さんが実家を改装。母屋の和室2室と縁側や廊下、蔵の中に合わせて26席を設ける。母屋は桐だんすや家具調ステレオなど、レトロな家具や家電をディスプレー。1921(大正10)年に建てられたという蔵は、天井を直して床を張り替え、壁にアート作品を飾る。

 利用は1時間500円(ドリンク1杯付き)。缶ビールやお菓子なども販売する。「博物館ではなく、実際に人が生活していた家で、『リアルな暮らし』を感じる場所にしたかった」と東さん。松本城から近いこともあり、入ってきて歓声を上げる外国人観光客もいるという。

 東さんは18歳で上京し、テレビ番組制作会社を経営。実家で今年92歳になる母と暮らしていた弟が亡くなり、東さんが戻ってきた。「母も元気だし、この家を何か活用できないかと考えた。お客さんを迎えるとなると毎日掃除をするし、喜んでもらうことで家の価値も再認識できる」と話す。庭の手入れや雪見障子の修理などは職人を探して依頼。「古い家を残すことで、技術の継承になるし、新たなつながりも生まれた」と笑顔を見せる。

 番組制作の仕事では、視聴者の顔はほとんど見えなかったというが、「今はお客さんと直接やりとりできる。70歳にして人生初の体験」と東さん。現在は、東京と行き来しながらの2拠点生活ということもあり、定休日もまだ決めていないという。「ワンオペなので無理のない範囲で続けていきたい。観光客はもちろん、近所の皆さんにも『一息つける場所』として利用してもらえれば」とも。

 営業時間は10時〜18時。現在は週1、2日不定休。