2012〜20年まで週刊少年ジャンプで連載され、テレビアニメも4シリーズを数える人気漫画作品「ハイキュー‼」。小柄ながら常人離れした身体能力を持つ日向翔陽(声:村瀬歩)と精密かつ正確なトスを繰りだす天才セッターの影山飛雄(声:石川界人)による“変人速攻”コンビの成長と活躍を軸に、2人が通う烏野高校バレー部のメンバーらバレーボールに青春をかける高校生の姿を描いた、2010年代を代表するスポーツ漫画の金字塔だ。

なかでも春高バレーの3回戦で激突する「烏野高校対音駒高校」の試合は、両校の名前にある“カラス”と“ネコ”から「ゴミ捨て場の決戦」として作中でも重要なポジションを占める人気エピソード。シリーズ最新作『劇場版ハイキュー‼ ゴミ捨て場の決戦』(2月16日公開)はタイトル通り、この試合を描く構成となっている。音駒高校はこれまでテレビアニメにも何度も登場したライバル校であり、人気キャラクターも多い。本稿では改めて、そんな音駒高校と烏野高校の歩んできた軌跡をたどる。

■“つなぐ”バレーがモットーの音駒高校で“頭脳”的役割を務める孤爪研磨

音駒高校は東京代表として春高バレーに出場する強豪で、いかなる攻撃も的確にレシーブし、選手それぞれがヒトの体をめぐる血液のように動きながら、“頭脳”として機能するセッターの孤爪研磨(声:梶裕貴)へと“つなぐ”バレーをモットーとしている。それを象徴するように、音駒高校の横断幕には「繋げ」の文字が掲げられている。

その研磨といえば、バレーボールが好きでたまらない日向とは対照的に、疲れることが嫌いで、暇さえあればゲームに没頭している人物。バレーを始めたのは、音駒のキャプテンでもあり、幼なじみでもある黒尾鉄朗(声:中村悠一)に半ば強引に誘われたのがきっかけだ。日向のライバル的な立ち位置のキャラクターであり、“動”の日向に対して“静”のような印象を受ける。

音駒高校の男子バレー部は烏野高校と同じく、“かつて強かった”学校であり、一時低迷していたものの、現監督の猫又育史(声:福田信昭)の指導によって復活したという経緯を持つ。研磨に加えて、キャプテンでミドルブロッカーの黒尾や、初心者でプレーに粗さはあるものの高いポテンシャルを秘めた灰羽リエーフ(声:石井マーク)など、魅力あふれる強敵が数多く在籍している。

■ライバルであり友、師弟関係でも結ばれる烏野と音駒

音駒高校が烏野高校にとって大きなライバルとして描かれるのは、こうした相対するキャラクターの実力の高さや魅力によるところも大きい。合同合宿などで幾度となく烏野メンバーと過ごし、また切磋琢磨してきた存在として、キャラクター同士の関係性も深められている。

黒尾はミドルブロッカーとして、烏野で同ポジションを務める月島蛍(声:内山昂輝)を気にかける場面も多く、合宿では集中的にリードブロックのテクニックを伝授し、月島にとっては不本意かもしれないが、“師匠”的な存在となっている。このように細やかに描かれてきた関係性が烏野と音駒の直接対決によって実を結び、観る者の心を熱くするドラマへとつながっていくところにも期待が集まる。

さらに、日向にとって研磨は、バレーを通じて出会えた大切な友人であると同時に、“負けたくない相手”だ。研磨もまた、エピソードを重ねるごとに負けず嫌いな性格が見え隠れすることも多くなっていた。“静と動”でありながら、根幹の部分は似通っているこの2人の関係からも、やはり目が離せない。

■監督同士の関係性も熱い!

また、なんと言ってもこの「ゴミ捨て場の決戦」をよりドラマチックな試合として印象づけてきたのが、両校の監督たちだ。烏野の前監督である烏養一繋(声:中博史)と音駒の猫又育史監督は中学時代からの知り合いであり、互いにライバル関係だった。それぞれ烏野、音駒に進学し、いつか公式戦で相見えることを誓いながらも叶わず、現役を引退した彼らは、指導者としてその夢を追い続けてきた。物語開始時点で烏養監督は入院しており、監督の任は孫の烏養繋心(声:田中一成→江川央生)に引き継がれることになったが、長きにわたって積み上げられてきた両雄の連関は春高バレーという大舞台で、ついにぶつかり合うことになる。

粘り強く“つなぐ”バレーの音駒と、ほとんどの選手が一斉に攻撃へと参加する烏野。プレースタイルも対照的な両校が、「いつか全国大会で」と約束を交わし合った指導者たちが見守るなかで、どのような戦いを繰り広げるのか?そして、日向や研磨ら選手たちが磨き上げてきた力が、どのように花開くのか――。熱いドラマにあふれた“決戦”をぜひ劇場で見届けよう!

文/藤堂真衣