先日発表された第96回アカデミー賞で、作品賞や監督賞など最多7部門に輝いた、クリストファー・ノーラン監督の最新作『オッペンハイマー』が、いよいよ3月29日(金)より日本公開を迎える。それに先駆け、このたびノーラン監督がキリアン・マーフィーとロバート・ダウニー・Jr.について語る特別インタビュー映像を独占入手した。

第二次世界大戦下にアメリカで立ち上げられた極秘プロジェクト“マンハッタン計画”に参加し、世界で初めて原子爆弾を開発した理論物理学者、J・ロバート・オッペンハイマーの苦悩と、彼が冷戦や赤狩りといった時代の波のなかで没落していく姿を描いた本作。2023年7月に北米で公開され、累計興収3億ドルを突破。また、全世界では伝記映画として歴代1位となる興収10億ドルに迫る大ヒットを記録している。

オッペンハイマー役を演じアカデミー賞主演男優賞を受賞したマーフィーは『バットマン ビギンズ』(05)を皮切りにした「ダークナイト」3部作と『インセプション』(10)、『ダンケルク』(17)でタッグを組んできたノーラン監督作品の常連俳優。今作で6度目のタッグにして初めて主演を務めたマーフィーについてノーラン監督は「この物語には彼が絶対に不可欠でした」と断言する。

「非常に複雑な人物のすべての側面を臆することなく演じられる俳優が必要でした。キリアン・マーフィーにはカリスマ性があり、観客を引き込む能力を持っています。また、何層にも重なる真実や、キャラクターの正直な評価、キャラクターの多面性を投影することができるのです」と、20年にわたって互いに信頼関係を築き上げてきた盟友を主役に抜擢した理由を語った。

一方、ルイス・ストローズ役を演じアカデミー賞助演男優賞に輝いたダウニー・Jr.については「ずっと一緒に仕事をしたいと思っていました」と明かし、「マーベル映画でアイアンマンを演じていましたが、本当にすばらしいキャラクターであり、彼のカリスマ性と才能が生かされています」と俳優としての資質を絶賛。

そのうえで「私は彼が人間を演じて、その人間のなかで我を忘れ、カリスマ性を捨ててこの実在の人物の内面を演じるというアイデアにとても惹かれました。私はストローズにはオッペンハイマーの引き立て役になってほしかった。彼ならそれができると強く感じたのです」と語り、「彼は自分自身を改革することにとても興味を持っていました。彼の演技は本当に純粋にすばらしかったと思います」と、真摯に役柄に向き合ったダウニー・Jr.に敬意を表した。

IMAX65ミリと65ミリ・ラージフォーマット・フィルムカメラとを組み合わせた最高解像度の撮影を行い、アカデミー賞撮影賞にも輝いた本作では、本作のためだけに開発された65ミリカメラ用モノクロフィルムも併用し、オッペンハイマーの主観をカラーで、ストローズを軸とした物語をモノクロの映像で描いている。その描き分けにも注目しながら、オスカーに輝いた2人の名優の演技を、大スクリーンでその目に焼き付けてほしい。

文/久保田 和馬