『スパイの妻 劇場版』(20)で第77回ヴェネチア国際映画祭銀獅子賞(監督賞)に輝くなど世界で評価される黒沢清監督が、1998年に手掛けた同名作品を全編フランスロケ&フランス語の日仏共同製作としてセルフリメイクした『蛇の道』(6月14日公開)。このたび本作のキャスト第2弾として、西島秀俊と青木崇高の出演情報が解禁された。

何者かによって8歳の愛娘を殺された父アルベール・バシュレは、偶然出会った精神科医の新島小夜子の協力を得て、犯人を突き止めて復讐することを誓う。そしてとある財団の関係者たちを2人で拉致していくなかで、次第に娘の死の真相が明らかになっていき…。新島小夜子役を柴咲コウが撮影の半年前からフランス語のレッスンを受けて見事に演じきり、アルベール役を『レ・ミゼラブル』(19)のダミアン・ボナールが演じる。

そしてこのたび出演が発表されたのは、日本を代表する実力派俳優2人。黒沢監督の『ニンゲン合格』(99)で映画初主演を飾り、濱口竜介監督の『ドライブ・マイ・カー』(21)で国内外から大きな注目を集めた西島は、小夜子のもとに通う患者の吉村役。そして、第96回アカデミー賞視覚効果賞に輝いた『ゴジラ-1.0』(公開中)で重要な役柄を演じた青木は、小夜子の夫である宗一郎を演じる。

あわせて解禁された場面写真には、診察に訪れた吉村が虚ろな目でなにかを訴える姿や、小夜子の隣で生気のない表情を浮かべる姿、宗一郎が薄暗い殺風景な部屋でパソコンに向かっている姿などが切り取られている。また、2人が黒沢監督から演出を受けているメイキングカットも。黒沢監督が「フランス人スタッフたちもただただ圧倒されていた」と振り返る2人の演技に期待しながら、本作の公開を待とう。

■<キャスト&スタッフコメント>

●黒沢清(監督)

「西島さん、青木さん、ともにたった一日のパリロケでしたが、この映画にすばらしい多様性と華やかさと、そしてただならぬ緊張感とをもたらしてくれました。現場では、柴咲さんも久しぶりの日本語の芝居でずい分リラックスしていらっしゃいましたが、いざカメラが回り始めると、互いの腹を探り合うような、お二人との不穏なやりとりに、フランス人スタッフたちもただただ圧倒されていたようです」

●西島秀俊(吉村役)

「黒沢監督と再びご一緒できたこと大変うれしく思います。『蛇の道』はとても好きな作品です。あの復讐の物語が再び描かれる。しかも舞台はフランスということを聞き、驚き興奮しました。私が演じた吉村は、監督が実際に会ったことのある人物にインスパイアされて出来上がったと伺い、現場で一緒に人物像を作り上げていきました。作品をご覧になる皆さまに吉村という人間がどのように映るのかとても興味があります。

そして柴咲さんと再び共演し、その鋭い感性と高い集中力に引き込まれる事で、小夜子と吉村の独特の緊張感を生みだすことができたのではないかと感じています。『蛇の道』は復讐のはてにはいったいなにがあるのかが描かれています。これまでに見たことのない物語が待っていると思います」

●青木崇高(宗一郎役)

「緊張と狂気をはらんだ物語とはまったく違って、現場の雰囲気は監督のお人柄が映しだされているような、とても温かく心地のよいものでした。フランスの現地スタッフに敬意を払いながら、1カットずつ丁寧に撮られる姿はとても印象的でした。主演の柴咲さんは、撮影前からしばらくフランスで生活されていたからなのでしょう、佇まいがしっかりと馴染んでいて、大変驚きました。また立ち姿がとても美しく感じました。国内外に多くのファンを持つ黒沢清監督の作品に関われたこと、同じ日本人としてとても誇らしく思いました。この映画を世界のより多くの方に観ていただきたいです」

文/久保田 和馬