この勝利がなければ、その後の馬生は大きく変わっていたかもしれない。父がキングカメハメハ、母がエアグルーヴという超良血馬ルーラーシップ。生まれながらにしてGI制覇を宿命づけられていたエリートが、悲願のビッグタイトル獲得を果たした12年のクイーンエリザベスII世カップ(4歳上・G1・芝2000m)を振り返りたい。

 ルーラーシップは父が日本ダービー馬のキングカメハメハ、母がオークス馬のエアグルーヴという血統。半姉のアドマイヤグルーヴは03年と04年のエリザベス女王杯の覇者。一族にも活躍馬が多く、08年にサンデーサラブレッドクラブで総額1億8000万円、1口450万円の超高額で募集された。

 5月の遅生まれらしく、決して完成が早いタイプではなかった。それでもプリンシパルSを勝ち、日本ダービー(5着)に出走。3歳12月の鳴尾記念で重賞初制覇を果たした。その後も4歳時に日経新春杯と金鯱賞、5歳になってAJCCを制したものの、なぜかGIには縁がなかった。5戦して4歳時の有馬記念の4着が最高着順。この血統、この馬体だけに、何としても種牡馬にしなければ…。関係者が悩みながら、悲願のビッグタイトルを求めて選んだレースがクイーンエリザベスII世Cだった。大トビゆえの不器用さがネックだったが、それだけにシャティンの広い馬場は願ったり叶ったり。もちろん、それまで4戦3勝、2着1回と好相性の2000mも好材料と考えられた。

 前年の日経新春杯をともに制したリスポリ騎手を背にして挑んだ一戦。課題のスタートを決めると、好位のインでぴったりと折り合った。かなりのスローペースの中、絶好のポジショニングだ。迎えた直線、綺麗に開いた最内に突っ込むと、一気に抜け出して後続との差をグングンと開いた。ゴールの瞬間、リスポリ騎手は左手で大きなガッツポーズ。これまでの悔しさを晴らす、2着に3馬身3/4差の大楽勝だった。

 帰国後は国内でGIを4戦して、2着→3着→3着→3着と惜敗続き。惜しくも2つ目のGIには手が届かなかったが、社台スタリオンステーションで堂々のスタッドインとなった。これまでにキセキ、メールドグラース、ドルチェモアと3頭のGI馬を輩出。今後も活躍馬を送り続けることだろう。第二の馬生での成功を受けて、改めて香港での圧倒的なパフォーマンスの持つ意味が大きかったと感じられる。