ジャーナリストの須田慎一郎が2月27日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。台湾最大野党・国民党の夏立言副主席の訪中について解説した。

夕刊フジ写真 小金門から望む中国・アモイ市の高層ビル群と台湾軍が駐留している「獅嶼」と呼ばれる小島=2024年1月16日、台湾(松本健吾撮影)撮影時間は現地時間 写真提供:産経新聞社

夕刊フジ写真 小金門から望む中国・アモイ市の高層ビル群と台湾軍が駐留している「獅嶼」と呼ばれる小島=2024年1月16日、台湾(松本健吾撮影)撮影時間は現地時間 写真提供:産経新聞社

台湾の最大野党幹部が中国を訪問 中国船の転覆をめぐり中国当局者と接触か

中国に対して融和路線の台湾最大野党・国民党の夏立言(か・りつげん)副主席が、2月26日から7日間の日程で中国を訪問した。2月14日、台湾の離島・金門島付近で発生した中国漁船の転覆をきっかけに台中間が緊張するなか、当局者と接触するかどうかが注目されている。

飯田)融和路線と言われる国民党ですが、「人によって違う」とも言われます。7日間の滞在は長いですね。

軍事的な圧力を加える上で、中国は最初に金門島を獲るのではないか

須田)今後、金門島をめぐる攻防はかなり激化すると思います。金門島に立つと、中国本土に林立する高層ビル群が見えるくらい至近距離にあり、そこが攻防の最前線です。台湾と中国が協調関係にあった国民党政権の時代は、中国の観光客が大挙して金門島を訪れ、経済が潤っていました。

中国がここを獲った場合、「アメリカが動くのかどうか」の見極めも

須田)そういった経済的な揺さぶりだけでなく、軍事的な圧力を加えていく上でも、最初にここを獲るのではないでしょうか。

飯田)この周辺では、中国海警局の船が巡視活動を行っているようです。

須田)これが台湾に対する1つのモデルケースになりかねないと思います。仮に中国がここを獲った場合、「アメリカが動くのかどうか」という問題もあるので、中国としては、その辺りの見極めも考えているのかも知れません。

飯田)金門島を獲った場合、「力による現状変更」とアメリカが見るかどうか。

須田)台湾としては警戒しているのですが、ある意味での「サラミ戦術」が行われています。少しずつサラミを切るように実績を積み上げていく手法なので、この攻防は今後、大きな影響を与えるのではないかと思います。

国民党幹部が台湾市民にどのようなお土産を持って帰るのか

飯田)野党・国民党の幹部が訪問していますが、今後、蔡英文政権や次期・頼清徳政権に対するメッセージなどは出るのでしょうか?

須田)どんな形で、台湾市民にアピールできる「お土産」を持たせて帰すのかを見極めたいですね。

飯田)夏立言副主席は他にも、福建省アモイ、広東省広州、浙江省杭州、上海などを訪れるようです。

須田)中国との関係を強化することで、台湾にどんな未来が開けるのか。あるいは独立しないまでも、現状維持によって台湾はどんな未来を展望できるのか。それを比べ抜いたときに、「台湾市民がどちらを選ぶのか」という状況になるのだと思います。ただ、中国経済は非常に厳しく、国民に対する統制も強めています。香港の事例を考えると、経済的なメリットがあるからといって、台湾市民がそちらを向くことはあり得ないと思います。

「独立派」というレッテルを払拭する必要性がある頼清徳新総統

飯田)他方、台湾の中国時報によると、現政権である民進党の中国担当と福建省のアモイ大学の研究員がオンラインで交流会を開いたそうです。

須田)「緊張を高めていく」ということも民進党の本意ではないのです。そういう意味でも頼清徳新総統は、「独立派」というレッテルを払拭する必要があるのではないでしょうか。