ジャーナリストの佐々木俊尚が3月6日、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」に出演。総務省に行政指導を受けたLINEヤフーについて解説した。

携帯端末の画面上に表示されたヤフー(左)とLINEのアイコン=2019年11月18日 写真提供:時事通信

携帯端末の画面上に表示されたヤフー(左)とLINEのアイコン=2019年11月18日 写真提供:時事通信

LINEヤフー行政指導

飯田)利用者の個人情報が不正アクセスで流出した問題で、総務省がLINEヤフーに行政指導を行いました。

佐々木)LINEは「日本発のアプリ」という印象を持つ人も多いと思いますが、もともとは韓国資本なのです。韓国の「ネイバー」という会社が出資して、日本でつくった会社です。ただ、そのあとヤフーと合併し、いまは「LINEヤフー」になっています。LINEヤフーは、投資機関も投資しているけれど、最大株主はAホールディングスという持株会社です。Aホールディングスは、ヤフーの親会社であるソフトバンクとネイバーが半分ずつ出資しています。

基盤の半分が韓国IT大手「ネイバー」である危機感

佐々木)ですので、最大株主はソフトバンクと韓国企業であり、日本企業ではない。日本のコミュニケーションツールにおいて、最も巨大なプラットフォームの基盤の半分が韓国企業となるため、総務省に「ネイバーは大丈夫なのか」という危惧があるのは確かだと思います。一方で、他のITツールであるInstagramやFacebookなどを使っている人も多いですが、これも完全にアメリカ企業ですから。

飯田)確かにそうですね。

国内のIT企業がつくると「セキュリティ第一」になり、利便性に欠ける

佐々木)経済安全保障的な観点で言うと、日本のIT系の基盤のメインは、ほぼ海外勢で占められているという情けない問題があります。しかし、国産にしようとして国内大手IT企業がつくると、異様に使いづらいものが生まれてしまう。結果的に淘汰され、アメリカ企業やLINEのようなものに塗り替えられていった経緯があるので、必ずしも日本産にすればOKではなく、なかなか難しい問題です。

飯田)イノベーションの土壌部分の問題になる。

佐々木)ここ20年ぐらい日本のITをウォッチしていますが、セキュリティに関して異様に気にするのです。セキュリティが弱いと、すぐマスコミに叩かれるではないですか。個人情報保護法が2005年に全面施行され、「個人情報を守らなくてはならない」という意識が第一になってしまった。例えばサービスを使っていると、定期的にログアウトされるではないですか。でも、GmailやGoogleマップなどはログアウトされないですよね。

飯田)されないですね。

佐々木)日本のサービスで月1回など、定期的にログアウトされるのは、セキュリティを気にしているからです。でも使う側から見ると、またパスワードを入れてログインしなければならない。「面倒くさいな」と思うことが多いので、利便性で言うと海外産の方が使いやすく感じてしまう。

飯田)もちろんセキュリティは大事ですが、当座の利便性が……。

佐々木)利便性とセキュリティのバランスの問題です。あくまでマネジメントですから、本来「ガチガチにセキュリティを固めておけばいい」という発想はよくないのです。

飯田)今回のLINEヤフーの問題は、サーバーを日本ではないところに置いている。また、移転するはずだったのに、本当に移転していたのか不明だった問題などがありました。そういうところはしっかりして欲しいです。

佐々木)総務省としては産業振興も仕事なので、国産にもっと頑張って欲しいのでしょう。できればLINEも今後、日本企業のものとして発展して欲しいという、裏の願望もあるような気がします。

飯田)ただ、こればかりは企業活動なだけに。

佐々木)市場原理で動いていくので、総務省の目論見通りにはいかないと思います。難しいところです。

飯田)壁がいくつもありますね。

佐々木)セキュリティをガチガチにするという発想は一旦置いて、より使いやすいものにして欲しいです。最近はUI(ユーザーインターフェイス)やUX(ユーザーエクスペリエンス)の発想が重要だと言われているので、日本企業はそこを磨く必要があると思います。