総合塗料3社の2025年3月期(日本ペイントホールディングス〈HD〉は24年12月期)連結業績予想は、外需が伸び値上げも進んだため全社が増収となる見込みだ。上位2社は海外での積極的なM&A(合併・買収)の果実を中心に、大幅な増収・営業増益基調が続く。低金利の国内借り入れなどで投資資金も有利に調達し、塗料事業の収益力を強めている。

日本ペイントHDは24年12月期業績予想を据え置いたが、18年12月期の国際会計基準移行後では、売上高と各利益段階で過去最高を更新する。経済成長が鈍化した中国でも中小都市を含め地域に密着した営業で、既設住宅の塗り替え需要を開拓。24年1―3月期は中国や東南アジア、トルコなど主力のアジア事業で売上高と営業利益を大きく伸ばした。

若月雄一郎共同社長は「販売量の増加、価格転嫁、製品構成、M&Aによる新たな業績連結が貢献した」と説明する。原料高騰や中国での貸し倒れリスクも収まった。財務や地域密着に優れる海外の中堅塗料メーカーを低利の借入金で買収し、高い投資効率で連結業績を伸ばしている。

関西ペイントは25年3月期に売上高6100億円と、前々期から1000億円強増える見通し。日系自動車メーカーへ塗料の技術提案から深く食い込み、車の生産回復により国内外で需要が伸びる。インドの自動車塗料やアフリカなど新興国にも強く、伸びしろは大きい。毛利訓士社長は「売上高6000億円超えにはインドと、M&Aによる新規連結がある欧州が特に貢献する」と強調する。

大日本塗料は23年10月に公表した日本産業規格(JIS)での不適切行為などで需要を減らしたが、JISマーク表示の一時停止が3月に解除。販売は回復する見通しで、非塗料事業で施設用の照明機器も都市再開発で伸び、25年3月期は増収を予想。里隆幸社長は「国内塗料は大きな伸長を期待できず、海外で外部パートナーと協業し互いの強みを生かす。照明も手がける総合塗料メーカーとして優位性を発揮する」と巻き返しを図る。

塗料業界は原料になるナフサなど石油製品の高騰で収益を圧迫されたが、原料価格が安定し値上げも進展したため経営環境が好転。塗料は不況やインフレでも塗り替え需要が途絶えない安定した事業でもあるため、特に大手は海外で買収した塗料メーカーで手堅く稼いでいる。「今の株価には満足していない」(関西ペイントの毛利社長)と、成長投資や企業価値向上に意欲的な経営が際立つ。